窓から流れる風が朝だと教えてくれた。
鳥の鳴き声で目が覚めると横に居るテヒョナはまだ綺麗に寝息をたてて寝ていた。僕はテヒョナ、と名前を呼ぶが一向に起きそうにない。僕は仕方ないと思いベッドから降り、テヒョナの体を揺さぶった。んんっと、テヒョナは寝癖でボサボサの髪を触りながら「おはよう、」と眠そうに言った。
何で僕より先に寝たのに眠そうなんだよと、言いそうになったが言ったら「えっ!?ジミナ、夜遅くまで起きてたの!?俺には早く寝ろって言ったくせに!!」と言われてしまうに違いないので僕は敢えて言わないことにした。
僕達は看護師さんが持ってきてくれた朝食を食べ終えるとまたくだらないことを話始めた。今日何しよっかとか、どんな夢を見たかとか、昨日何回もされた兄の話とか。昨日会ったんだよとは伝えようとしたが僕の口が開く、前に扉が開いて部屋の中に話の元が入ってきた。
🐹「おはよう、テヒョンア…ジミン君。昨日ぶりだね。」
ソクジンさんは二輪の薔薇を持って朝の挨拶を交わした。テヒョナは目をパチクリさせながら兄であるソクジンさんを見つめた。
🐯「えっ!?昨日ぶりって何!?ジミナとジニヒョン、昨日会ってたの!?」
予想通りの反応をしたテヒョナは僕とソクジンさんを交互に見つめながら困惑していた。僕は昨日あったことを全て説明するとテヒョナは「ずるいー!!僕もジニヒョンと会いたかったぁ!!」なんて喚くもんだから鼓膜が破れるところだった。本当に病人なのかと疑問を抱いてしまうことも無理はないだろう。
🐹「ズルいって…テヒョナは嫌と言うほど僕と会ってるだろ、」
🐯「それでも足りないんです!!それに俺の知らない所で会っていたって言うのもズルいです!!」
甘々我が儘テヒョナとそれをあやすソクジンさん。本当に兄弟なんだと実感してしまうほど絵になった二人だった。ソクジンさんは煩いテヒョナを横に話始めた。
🐹「そういえば、二人とも。外出オッケーになったんだってね!」
ソクジンさんは当たり前のように声をあげた。僕達は聞かされていない「外出オッケー」という言葉に耳を疑った。全く言われた覚えはないしそれは横に居るテヒョナも同じだったみたいだ。僕は「外出オッケー?」と聞き返すとソクジンさんは「知らないの?」と言わんばかりに目を丸くした。
🐹「あれ?二人は聞かされたなかったの?看護師さんが言ってたけど…」
「聞いてない、聞いてない、」と僕らは首を横に振るとソクジンさんは「そうだったんだぁ」と頷いた。するとテヒョナが外出オッケーという事実に反応して沢山の意見を述べた。
🐯「じゃあどっか行こうよ!!遊園地とか水族館とか!!」
テヒョナは外出と言えばの代表的な場所を口にした。僕はあまり乗り気では無いがソクジンさんが何を言うのか気になって発言を控えた。
🐹「いや、そういうガヤガヤしたところはやめよう。一応病人なんだし。」
🐯「えぇー!俺行く気満々だったのにぃ!」
僕は内心良かったと安心し、「散歩はどうですか?」と提案した。ソクジンさんも賛成してくれて、テヒョナも嫌々了承してくれた。
なんやかんやで僕達は病院を出て町を歩いた。久しぶりに感じた外の空気は少し乾いていたが心地よかった。懐かしい駄菓子屋やバーが昔の記憶を思い出させた。戻りたいという気持ちを噛み締めて僕は前を向いた。
木は生い茂っていて緑が輝いている感じがした。あれ、葉って緑だっけ。あれ、空って青だっけ。ていうか、青ってどんな色だったっけ。
あれ、あれ、あれ、色って何だっけ?
突然怖くなった。白ばかりだった病院の外は色がないと苦しいほど物足りなくて。色がないことが急に怖くなった。今まで、普通に見えていた緑も青も赤も全部全部消えていって。真っ黒で真っ白になった世界で生きていかなきゃいけないという現実が怖くなった。とうとう何も見えなくなってしまったことを悟った。
あの時も。あの夜、看護師さんが屋上まで来て僕を部屋へ戻すために階段を降りていた時に伝えられたこと。
『貴方はもう、完全に色が見えない状態になってしまいました。』
『もしかしたら、もう目も見えなくっ_________』
聞きたく無くて、思い出したくなくて僕は耳を塞いだ。
怖いよ、助けて。
誰か______
🐹「…ねぇジミン君。この空、何色だと思う?」
問いかけられた言葉は今、一番欲しくない言葉だった。答えると余計に苦しくなることが分かっていながらも僕も優しそうに問いかける貴方のことを無視できなかった。
🐥「……分かりません…」
震えた声で伝えるとソクジンさんは首を振った。ソクジンさんにとって僕が出した答えは違かったみたいだ。仕方ないだろう。本当に分からないのだから。
🐹「ジミン君、僕は「何色か分かる?」じゃなくて「何色だと思う?」って聞いたんだよ。だからね、ほら。」
🐹「ジミン君が思う色を言って良いんだよ。」
ソクジンさんは優しい顔でそう言った。本当なんて要らなくて。僕が思う色を言って良い。間違えなんかない。そんな言葉に僕は泣きそうな感情を押さえた。
🐥「…黄色っ、黄色って言う色に見えます……」
僕がそう答えるとソクジンさんは嬉しそうに笑った。「そっか」と返事をくれたソクジンさんに僕は「…空は、本当は何色なんですか…?」なんて知りたくもない現実を無意識に聞いてしまった。自分が苦しくなるだけなのに。また、自分で自分の首を絞めた。自殺をして居る気分だった。そんな僕に返ってきた言葉は予想したものとは大きく違った。
🐹「…知らないよ、きっと誰も。」
🐹「僕には青に見えるけどジミン君は黄色だと思うんでしょ?ならそれでいいんじゃん。」
🐹「空ってさきっと何色でもあって何色でも無いと思うんだ。見え方は人それぞれだからさ、本当とか正解とか誰も知らないし、知らなくて良いんだと思うよ。」
🐹「ジミン君がそう思うんだったら空は赤でも黄でも紫でもそれは間違いではないんだよ。」
そう言って「僕、今格好いいこと言った!?」なんてはしゃぐ貴方は大人のようで子供のようで可笑しくって僕は笑った。はずなのに。頬には涙が伝っていたみたい。
🐹「わっ、もぉ~泣くことじゃないでしょ!ほら、笑って!!」
優しい人の温もりは暖かくて心地よくて僕は笑った。涙は止まらなかったけれど僕は吹っ切れたように貴方の手と自分の手を絡めた。貴方は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたけれど、すぐに受け入れて僕の手をぎゅっと握り返してくれた。
🐯「あっ!ズルイ~!!僕も手ぇ、繋ぐぅ~!!!」
伍話 黄空の思い
コメント
11件
なんか泣ける…涙 本当に素敵な人達✨
ほんと、、かわいいな 。(?) ジナもジミナもテヒョンも ..。 かわいいの塊じゃないか。
やっぱりジナはかっこいいですねぇ〜もう続きが楽しみすぎます!これからも頑張ってください!応援していますね〜♪