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「本宮さんは、将来の『文映堂』の社長よ。いったいどれだけの資産を持ってると思うの? 社長のパートナーともなれば、それに見合った美貌も必要だわ。あなたじゃ到底無理なのよ」


「確かに菜々子先輩はお綺麗です。私なんて足元にも及びません。でも、本当に私はお金で本宮さんと繋がってるわけじゃないんです。私は、ただ本宮さんのことを……」


「は? 本当にあなた、彼のパートナーにふさわしいと思ってるわけ? だとしたら救いようがないわね。本当にうっとおしい人」


「菜々子先輩……」


次から次へと私への攻撃の矢が飛んでくる。

すごい勢いで言い放たれた言葉が、体中に突き刺さる。


「話にもならないわ。自分を恥じたなら、もう本宮さんには近づかないことね」


菜々子先輩は、ドアを明け、閉めもせずに行ってしまった。

ハイヒールの足音が遠ざかっていく……

ここは、菜々子先輩達のミーティングルームからは、かなり離れている。

きっと……わざわざ私に文句を言いにきたのだろう。


でも、もし本当に菜々子先輩が朋也さんのパートナーだったら、それはそれは絵になる。

2人が並んでいても、ごく自然だろう。

怖いくらいに美男美女同士、周りがため息を漏らすほどに……


私とは……大違いだ。

菜々子先輩の言う通り、何もかもが違う、レベルが違い過ぎる。


私がフラフラして、全然何も決めれなくて、そしたら、朋也さんはいつか菜々子先輩のような綺麗な人のところに行ってしまうのか?

朋也さんや一弥先輩からたくさんもらった甘い言葉達も、菜々子先輩の攻撃でかき消されてしまいそうになる。


「どうしよう……そんなに簡単に答えなんて出せないよ……」


私は、なかなか平常心を取り戻せなかった。

頭の中から今のやり取りを全て消したい。

なのに、どうしてなの?

朋也さんの隣に菜々子先輩がいるところを想像してしまう。笑顔で寄り添う2人を。


朋也さんには、将来、会社を継いでお父さんを安心させる夢があるのに、もし、私が朋也さんと付き合って、結婚なんてことになったどうなるのか?

マスコミへの対応や、数々のパーティーへの参加。

私にはやりこなせないし、自信がない。もし、それなりにできたとしても、隣に並ぶのが私だとすれば、かなり見劣りしてしまう。


2人のおかげでほんの少しだけ持てた「自信」が、今、急激にガタガタと崩れてしまった。

美人でスタイル抜群の菜々子先輩なら、『文映堂』の社長夫人として、みんな納得するだろう。

確かに私では務まらない。


私は、ただ、朋也さんが好きなだけなのに――


自分の気持ちに素直になることは大事だけれど、その先のことも考えなければいけないことを痛感した。

朋也さんを選ぶことは、いろいろな責任も発生する。

改めて考えると、身震いした。


菜々子先輩に言われるだけ言われ、大きな動揺を引きづったまま、今日の仕事を終え、私は1人帰宅した。

部屋のドアを開ける。


「ただいま……」


朋也さんのいない部屋は孤独を感じさせた。


「……だよね。誰もいないよね」


リビングのソファに腰掛け、ようやくため息をついた。


今日は1日、朋也さんと一弥先輩の顔を見ていない。

お互いプロジェクトの成功に向けて、仕事を頑張ってるのだから仕方ないけれど……

2人と会えない時間の、埋めようのない寂しさが、私の心に充満している。


用事を済ませたいのに、部屋にいても何も手につかない。

本当は、明日、朋也さんが取りにくる荷物を少しまとめておきたいのに……

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