『本宮さんは、将来の文映堂の社長よ。いったいどれだけの資産を持ってると思うの?社長のパートナーともなれば、それに見合った美貌も必要だわ。あなたじゃ到底無理なのよ』
『確かに菜々子先輩はお綺麗です。私なんて足元にも及びません。でも、本当に私は…お金で本宮さんと繋がってるわけじゃないんです。私は、ただ本宮さんのこと…』
『本当にあなた、彼のパートナーにふさわしいと思ってるわけ?だとしたら救いようがないわね。本当にうっとおしい人』
すごい勢いでそう言い放って、菜々子先輩は行ってしまった。
ハイヒールの足音が遠ざかって消えた。
ミーティングルームが離れてることを思えば、わざわざ私に言いにきたんだろう…
でも、もし菜々子先輩が朋也さんのパートナーだったら…
嘘みたいにしっくりくる。
本当に怖いくらいに美男美女だから。
私がフラフラして全然決めれなくて、そしたら、朋也さんは…いつか菜々子先輩みたいな綺麗な人のところに行ってしまうの?
でも、やっぱり…
そんなに早く答えなんて出せない…
とにかく、頭の中から今のやり取りを消さなきゃ…
私は、無理やり仕事に打ち込もうとした。
なのに朋也さんのことが、頭から離れない。
朋也さんの隣に菜々子先輩がいるところを想像したら…
何だか怖くて。
美人で細くて背も高い菜々子先輩なら、文映堂の社長夫人としても、みんな納得だろう。
確かに、私じゃ…務まらないよ。
全然見栄えしないもん…
あの人は、将来、お父さんの会社を継いで、お父さんを安心させるって言う夢がある。
もし、私が朋也さんと付き合って、結婚なんてことになったら…
マスコミにも対応したりとか、たくさんのパーティーとかにも参加しなきゃいけないのかな?
そんなこと私には出来ないし、例え出来たとしても朋也さんと並んだら…かなり見劣りしちゃう。
朋也さんに…申し訳ないよ。
私は、ただ、朋也さんが好きなだけなのに…
自分の気持ちに素直になることは大事だけど、その先の重圧も、やっぱり…
不安な気持ちを押さえながら、私はなんとか笑顔を作った。
頼むから消えて、今は消えて…って、何度も言い聞かせながら。
夜になって、私はまた1人で部屋に帰った。
朋也さんのいない部屋…
今日は、会社でも朋也さんと一弥先輩の顔を見ていない。
お互いプロジェクトの成功に向けて、仕事を頑張ってるから…仕方ない。
私も、今回は他のコピーも抱えてて、いろいろ頭がいっぱいで…
2人と会えない時間…
なんだろう、埋めようのない寂しさが、私の心に充満してる。
部屋にいても何も手につかない。
本当は、明日、朋也さんが荷物を取りにくるらしいから、少しまとめておきたいけど…
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