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ある日の夕方・・・




隆二と和樹と妹の鈴子・・・そして百合で食卓を囲む機会があった



「たまには、家族で食事してやらないとさ・・・妹もまだ小さいからな、特に気を遣う必要もないよ、一緒にメシを食うだけ」


そう和樹は笑って言った




食堂にはシャンデリアが輝き、ダマスク織のテーブルクロスの上に無数の光の輪を投げかけていたが、家具と食事だけが豪華なのに対して、なんとも冷たい空気が漂う夕食だった、使用人が忙しく、4人の周りを行ったり来たりして給仕をしている足音だけが辺りに響



隆二がまたウィスキーを継ぎ足したらしく、ガラスの触れあう音がした、和樹は眉をひそめて気づかわしげに彼を見やった



「飲み過ぎだよ、父さん」



和樹がきつく言ってたしなめた、隆二は一気に飲み干し、グラスを空けて見つめた



「ああ・・・そうだな」



けれども彼の目はまだデカンターに注がれたままだ、あきらかに彼が料理よりもウイスキーを必要としているのがここにいる全員わかっていた



百合の視線を感じて隆二も顔を上げたが、そうすると彼女は和樹の方へ目を転じ、大学生活や友人の話を始めた、中学受験の小さな女の子、鈴子はただひたすら黙々とラザ二ヤを食べている




フフッ「百合、髪の毛にソースつくぞ」



と和樹が横にいる百合を引き寄せ、自分の手で彼女の髪を横に一束にして、肩にはらってあげた、そして軽く彼女の額にキスをした



ガシャーンッ「その手を離せっっ!」




突然隆二がテーブルを叩き、彼の怒声に頭上のシャンデリアが揺れた、ビクンッと鈴子が目を丸くして父を見つめた



・・・異様な沈黙が流れ、和樹は顔をまっ赤にして父を睨みつけた、やがて、ハッとした隆二はぎこちなく立ちあがり、ツカツカと大股で食堂を出ていった



「まったく今夜はどうかしてるよっっ!」



歯をくいしばり、和樹が吐き捨てるように言った



「ごめんね・・・鈴ちゃん・・・」



百合が優しく鈴子に言った、鈴子は黙って首を振った



「まったく!こんなひどいのは初めてだ!あの酔っ払い!」



「お父様はきっと私が気に入らないのね・・・私のせいね」



百合は二人が否定するのはわかっていたが、そう言わずにはいられなかった



「違うよ!そんなふうに思っちゃいけないよ!」



和樹が慌てて口をはさんだ、そして鈴子も首を横に振った、この子が喋った所を見たことがない、もしかしたら口がきけないのかもしれない



「君のせいなんかじゃないさ、父はこの一年、ずっとああなんだ、仕事がまともに出来るのが不思議なくらいで、仕事をしてるか酒に浸ってるかの、どっちかなんだ」



和樹は怒りをにじませて百合に目を向けた




「いつか父に謝らせるよ、父は君に失礼な態度ばかりをとってる」




和樹が首を振って悲しく言う







「どうして父があんなに君を目の敵にしてるか分からないよ」


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