「いいかい」
と老婆は気味の悪いその顔を私に近づけて言った
「ひとこと忠告しておくよ、聞く聞かないはお前さんの勝手だけれどね、美鈴を出し抜こうとするのはおやめ。勝ち目はないから。それだけは言える。ああ・・・それだけは言える・・・」
私が顔をしかめると老婆は低い声で言った
「そりゃあ・・・あたしだって知ってることはあるさ・・・」
老婆は甘ったるい黒い目をじっとわたしの顔に据えて愉快そうに笑った
「でもねえ~あたしみたいなキチガイ婆ぁの言うことなんか、誰も聞いてくれやしない。さっさとくたばっちまえ、この糞婆ぁってね~」
そう言って老婆はまた笑った、しかしその目はキチガイの目では無かった
いかにも抜け目なく、鋭い眼光をしていた、私はおじけづいて
「それじゃ・・・お邪魔しました」
と声をふりしぼって言うと、逃げ出すようにそこから去った
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