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第13話【アレス編】骨身を惜しまない飲み会『地獄の魔界体操第一』
「おお、アレス様じゃねえか!今夜は朝まで語り明かそうぜ!」
魔王軍を支える不死者軍団、スケルトン兵たち。
彼らは夜な夜な、外向きの〝恐ろしきアンデッド〟という顔を脱ぎ捨て、親睦会(飲み会)を開催していた。
「あ、いや、僕はこれから魔王様への報告書を……うわっ、引っ張らないで!骨しかないのに力が強いな!」
アレスは魔王城の地下広場を通りかかった際、ガタガタと異様な音を立てるこの一団に捕まってしまった。
「カカカ!固いこと言うなよ。……おっと、顎が外れた。アレス様、ちょっと左に捻ってはめてくれ」
「今夜は月に一度の〝骨身を惜しまない飲み会〟だ!闇の勇者殿も座れよ!」
『骨のある連中に気に入られたわね(外見的な意味で)』
腰のサタンブレイドが茶化す中、宴が始まると、スケルトンたちはアレスの腕や脚を、うっとりとした(眼球のない)眼差しで見つめ始めた。
「……いいなぁ。アレス様は。〝肉〟があれば、俺たちだってこの酒を味わえるのに」
「俺たちなんて、飲んだ瞬間に肋骨の間を雨漏りみたいに素通りして、足首の骨がベチャベチャになるだけなんですよ!」
「そうそう。肉さえあれば、俺だってデッドリフトで新記録出せるのによぉ。骨だけだと、重いもの持つとすぐ指がパキッていっちまうんだ」
「本当だぜ。肉さえあれば、もっとこう、ムチムチした感じで宴会に参加できるのによぉ。アレス様、その肉、ちょっと貸してくんねえかな?」
「えっ!?貸すって何を!?怖いこと言わないでくださいよ!」
スケルトンたちはアレスの腕をぷにぷにと触りながら、「これが上腕二頭筋かぁ……」「こっちは三枚肉かな?」と不穏な品評会を始めてしまった。
夜が深まると、余興の〝バラバラ・ダンス〟が始まった。
これは、自分の四肢を外して放り投げ、どれだけ早く元の形に組み立て直せるかを競う、スケルトン界の伝統芸能である。
「よーし、いくぜ!全員パージ!」
その掛け声と共に、数十体のスケルトンが一斉に自壊。広場には、誰の物かもわからない腕の骨、脚の骨、そして無数の頭蓋骨が山積みとなった。
「ひっ、ひぃぃぃ!みんな死んだ!?いや、もう死んでるけど!何してるんですか!みんなバラバラじゃないですか!」
「アレス様……。俺、右腕がどっか行っちゃったみたいでよ……。探してつけてくれねえか。細くて、ちょっとヒビが入ってるやつだ」
「どれだよ!全部そうだよ!骨、骨、骨……あああ、もう!」
『がんばってー』
アレスはパニックになりながら、散乱する無数の骨を拾い集め、彼らを組み立て始めた。しかし、酔っ払ったスケルトンの要求はエスカレートしていく。
「アレス様、俺の首、もっと長くして!憧れのキリンさんスタイルで!」
「肉がないならせめて、骨の数を増やしてマッチョにしてくれ!」
「もう、めちゃくちゃだ!はい、これ腕!こっちは指!……あれ、この長い骨、余っちゃったけど……まあいいか、尻尾にしちゃえ!」
『……勇者の美的センスが疑われるわね』
アレスは泣きながら、暗い広場で〝骨のジグソーパズル〟を開始した。
しかし、似たような骨ばかりで判別がつかない。
※※※
翌朝。魔王ユピテルが日課の視察のために訓練場を訪れた。
そこで彼が目にしたのは、朝の光を浴びて〝魔界体操第一〟に励む、地獄のようなビジュアルの一団だった。
「…………。おい、アレス。あれは何だ」
「(睡眠不足でフラフラになりながら)……おはようございます魔王様。朝の……朝の体操です……」
『……地獄のサーカス団ね』
魔王の目の前では、適当に組み立て直されたスケルトンたちが、軽快な音楽に合わせて動いていた。
しかし、その動きはあまりに異常だった。
腕が4本ある兵士は「イチ、ニ!サーン、シッ!」と掛け声を上げているが、4本の腕がそれぞれ違う方向に動き、隣の兵士の頭を叩いている。
首が3メートルある兵士が「肩を大きく回しましょ〜!」と動くたびに、頭蓋骨が遠心力で飛んでいきそうになっている。
膝が逆についている兵士に至っては、「開いて、閉じて!」と跳躍するたびにバッタのように後方へ跳ね飛んでいく始末だ。
「……アレス。なぜあの兵士は、腕の代わりに大腿骨が肩から生えているんだ。そして、なぜあの一体は、尻尾のように背骨が一本突き出している」
「それは……その……。彼らが〝肉がないなら、せめてパーツを増やして強くなりたい〟って泣くから、僕なりにサービスした結果、余った骨の行き場がなくなって……」
「……アレス。お前は今日から、こいつら全員を元の〝標準的な人型〟に戻すまで、ここを離れることを禁ずる。ただし……」
「ただし……?」
「……一本でも骨が余ったら、その分だけお前の骨を削って補填させるからな」
「えええええ!?嘘でしょ!?予備の骨、あと30本くらい余ってるんですけど!?誰の!?これ誰の骨なのーっ!?」
骨の群れに囲まれ、アレスの絶叫が地下墓地に虚しく響き渡った。