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今日もミーニャさんとジョンの3人で、市場で買い物をしつつ俺の家へ向かう。
ただし俺は、ただ歩いているだけではない。
歩きつつも、魔法収納内で料理中だ。
これこそ正しい並列思考と、魔法収納の使い方だろう。
現場に急行しながら魔法収納内の仕様書を読んで、足りない部品を魔法収納内で作る、なんてのではなく。
実はある程度の調理は、既に釣りをしながらやっている。
下処理も済んでいて、魔魚カンディルーの大きいものも、頭を落として内臓を抜き、身についた血をさっと洗った状態だ。
ここからナマズ丼、つまり蒲焼用は背開きにして、腹骨を魔法ですく。
焼いてタレをつけて、また焼いてを繰り返してやれば蒲焼だ。
さて、ヤプドフーの方は一回蒸す。
蒸した後、バラバラにして骨を取り、フレーク状のナマズ肉にする。
このフレーク状の肉を、本当は一日干して生乾き状態にするのだが、そこは乾燥魔法でささっと仕上げて。
これを油で揚げて、ふんわりカリカリにすればナマズ側の調理は完成。
ヤプドフーのソースは、青唐辛子とニンニク、ナンプラーと砂糖、ライム汁を合わせたもの。
一応店で食べたことがあるから、味はなんとなくわかる。
甘酸っぱ辛いいい感じに出来たので、多分これで正解だろう。
キャベツの千切り、青マンゴーの細切り、タマネギも細切り。
キャベツを敷いて、揚げたナマズフレークをのせ、上に青マンゴーとタマネギをのせてソースをかければ完成だ。
このカリカリ感をなくしたくないので、ソースをかけるのは食べる直前にするけれど。
もちろん、ごく普通のフライも作る。
ついでにテンプラ風のフライも作っておこう。
これは塩か天つゆでいただくつもりだ。
甘露煮風は蒲焼があるから、今日は出さなくていいだろう。
でも明日以降用の常備菜として作っておくのは悪くない。
フライも大量に作って、常備菜としておこう。
魔法収納内に入れておけば、揚げたてサクサクのままだし。
並列思考スキルをフルに使って、魔法収納内での調理を続ける。
これらのメイン料理の他、御飯を炊いたり、コラーゲンたっぷりなナマズスープ、いや魔魚カンディルースープを作ったりなんてのも。
タルタルソース、天つゆ、蒲焼きタレも勿論必要だ。
しかしこの辺は、実は以前料理を作った時の在庫がまだある。
だから今日は、それを使うとして。
家に帰った頃には、料理は完成していた。
「それじゃ食べながら、明後日のことについて話し合いましょうか」
「って、これから夕食を作るんじゃニャいのかニャ?」
「歩きながら魔法収納内で作りました」
えっ!? という顔で見るジョンとミーニャさん。
いや、このくらいは問題ないだろうと思うのだけれど。
クリスタさんあたりなら、絶対出来るだろうし。
取り敢えず、並べた料理を説明しておこう。
「メインはこれ、御飯の上に魔魚カンディルーを甘辛く焼いたものをのせ、甘辛のつゆをかけたものです。あとこちらは天ぷら。こちらは大きいものの身を使ったもので、こっちは小さいのを寄せて揚げたもの、こっちは野菜各種です。これはこっちのつゆか、もしくはこの岩塩で。
このカリカリふわふわは、魔魚カンディルーの身をほぐして揚げたものです。このタレをかけて、野菜と一緒に食べて下さい。こちらはお馴染み、魔魚カンディルーのフライ。これは魔魚カンディルーと野菜のスープです」
分量は充分な筈だ。
揚げ物が多くなってしまったのは、まあ、ちょっと反省はしているけれど。
「何か悪いな」
「材料のほとんどは、今回釣った魔魚カンディルーだからさ。野菜や米や調味料はミーニャさん提供だし」
野菜や米がミーニャさん提供なのは、正しいと思う。
1人で俺の3倍以上食べるから。
そして、そのミーニャさんは……
「いただくのニャ!」
思い切りよく蒲焼きにかぶりつく。
うん、あのがっつき具合なら、味付けに問題はないだろう。
それでは俺は、ヤプドフーをいただこう。
天かすとか揚げ玉みたいなものを小皿に取り、上にナッツ、青パパイヤ、タマネギ、キャベツをのせて、ソースをかける。
うん、カリカリだけれど、身がある部分はふわふわ。
そして野菜とソースを合わせて、いい感じの味になっている。
これはこれで、白飯に合う気がする。
蒲焼き丼以外に白飯を用意しなかったのは、失敗だったかもしれない。
そう思いつつ、今度は蒲焼きへ。
鰻に比べると脂が弱く、その分魚っぽい味。
これに甘辛ねっとり目のタレと御飯、合わない筈がない。
そんな感じで、ある程度食べて一段落してから、ミーニャさんに聞いてみる。
「ところで今回の依頼で、ギルドで説明はなかったけれど、説明しておいた方がいいことって、何かありますか?」
「今回の依頼場所は廃坑ニャ。そして坑道は基本的に、高さ最低2m、幅も最低2mとなっているのニャ。資料でもそうなっているし、坑道の大きさは鉱山組合の共通規格だから、まず間違いないのニャ」
なるほど、そんな規格がある訳か。
「そして、水に含まれている毒の分析結果があるニャ。それによると、いわゆる鉱毒の他、アンデッド系の魔素が確認されたのニャ。つまり、アンデッド系の魔物がいることが確実なのニャ」
魔物について、俺は教本を一読した程度の知識しかない。
だからミーニャさんに、疑問点を聞いてみる。
「アンデッドだと、光系統か聖系統の魔法が有効で、接近戦で効果的な攻撃は打撃になりますね」
「大量に出た場合は、エイダンの雷魔法にお任せなのニャ。ただ今のところ、入口から50メートルくらいの部分しかわかっていないのニャ。そしてその部分は、廃坑当時の情報だと、コウモリとカエルしかいないらしいのニャ」
「どうしてそれくらいしか、調べられていないんですか?」
ジョンの質問に、ミーニャさんは頷く。
「冒険者不足のせいなのニャ。西部に常駐するB級パーティのうち、アクラ拠点のB級パーティ『赤い海岸』は、魔法担当が閉所恐怖症なのニャ。ドーソン拠点のB級パーティ『レニベスタ・アナイテ』は、魔法使いがいないので、こういった依頼には不適なのニャ。そして、不安材料が多くて、C級パーティには任せられないのニャ」
「って、俺はやっとD級ですし、ミーニャさんもエイダンもC級ですよね」
確かに、ジョンの言う通りだ。
しかし俺は、半ば答えがわかっている。
ミーニャさんは、ため息をひとつついた。
「あれが一緒に行く限りは、まず生命の心配はないのニャ。あれは即死だろうと、時間が経っていなければ復活させられる位の魔法使いにゃ。ついでに言うと、脱出魔法も持っているニャから。何が出てこようと、逃げられないということはないのニャ」
「あれって、クリスタさんのことですか?」
「その名前は禁句ニャ」
ミーニャさん、ジョンともに、お約束のやりとりをする。
ところで、魔法のおかげで安全なら、こういう場合はどうだろう。
「魔法禁止措置が厳重に張ってあるとか、そんな迷宮なら、危険なんじゃないですか」
「魔法陣や術式で禁止措置を解除しながら進むだけなのニャ。実際、そういう例は過去にあったのニャ。それでカテリナが閉所恐怖症になったのニャ」
知らない名前が出たので、一応聞いておこう。
「カテリナさんって、誰ですか?」
「さっき言った『赤い海岸』の魔法担当ニャ。攻撃から治療まで幅広い魔法を使える、優秀な魔法使いなのニャ。ただ、C級昇任試験の依頼として受けたカリギア遺跡の洞窟で、魔法禁止を解除した結果、閉じ込められていた魔ムカデ1,000匹以上が壁を破って、目の前に出てきてしまったのニャ」
魔ムカデとは、長さ1m、胴の太さ直径10cmという大型ムカデ魔獣だ。
魔法を使って土中に穴を掘り、獲物を倒すという性質がある。
確かに、そんなのに襲われると……
「うわっ」
ジョンは想像してしまったらしい。
俺は何とか考えないようにして回避したけれど。
ただ、参考までに聞いておこう。
「どうやって逃げたんですか」
「あれが強制冷却魔法をかけて動きを鈍らせて、あとは私がひたすら潰したり、切り刻んだりしたのニャ。油っぽい体液で、ぐちゃぐちゃになったのニャ」
ちょっと待て!
「ミーニャさんも、いたんですか」
「アレと私と、カテリナの3人で行ったのニャ。取り敢えず、遺跡そのものの調査は完了したのニャが、それ以来、カテリナは穴とか建物の地下とか、そういった場所は一切NGになったのニャ」
「ミーニャさんは、大丈夫だったんですか?」
「魔ムカデは大きいけれど、動きは大したことがないのニャ。頭を潰せば、噛まれることもないのニャ。強制冷却魔法がかかっていれば、楽勝ニャ。ヌメヌメの体液に足を取られなければ、問題はないのニャ」
とんでもないのは、クリスタさんだけではない。
何となく、そんな気がしてきた。
ミーニャさんも、かなり……
「それで、そろそろ魚がなくなりそうなのニャ。フライでも焼き物でもいいから、おかわりが欲しいのニャ」