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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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狼影の足音が止んだ。

この樹に着いたようだ。

僕は樹の上からその姿を見下ろす。

狼影は脚をおり、抱えていた花束を樹の根元に置いた。

割れ物を扱うかの如く、その花束を置いた狼影の顔はどこか悲しげで、それでいて優しく微笑んでいた。

「いつまでもメソメソしてちゃダメなのは分かってる…分かってるんだ。」

突然話し始めた狼影の声は微かに震えており、目には薄く涙を浮かべていた。

「でも、今だけはお前に縋ることを許してくれ。」

優しい…優しい声だった。

いきなりだった。

「すまない…すまないなぁ。俺が力足らずだったばかりに…」

突然吹いた風によって狼影の声がかき消され、この先は聴き取ることができなかった。

「ここにいるとお前が見守ってくれてる様な気がするんだ。」

泣き腫らした目と、涙の跡のある顔が真っ直ぐこっちを見つめてきた。

いや、見つめてきた様な気がした。

「だから俺はまた歩き出せる。」

そう言って子供の様な無邪気な顔で笑った。

「いつまでだって愛してる。この身が朽ち果てるまで俺はお前を思い続ける。」

「いつか必ずお前を迎えに来る。それまで待っててくれ。」

そう言うとこの樹に背を向け、着た道を引き返して行く。

そこで俺は静かに頬を伝うものに気づいた。

あぁ涙で目が霞んでいく。

霞む視界でその姿を目で追っていると、俺の意識が少しずつ意識が遠のいていった。

俺はほぼ無意識に言った。

「俺もお前を愛してる。」

届く筈もない言葉を微風が運んでいく。

そこで俺の意識は途切れた。


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