テラーノベル
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楽屋のソファで、深澤辰哉は台本を顔に乗せて死んだように眠っていた。……フリをしていた。
本当は悩み事があって眠れないのだが、メンバーに心配をかけまいと寝たふりを決め込んでいたのだ。
しかし、そんな浅はかな演技を見抜けない男ではない。
「……ふっか。起きてるでしょ」
耳元で冷静な声がした。
深澤がビクッと肩を揺らすと、顔に乗せていた台本がスッと取り払われた。
目の前には、阿部亮平が覗き込むように顔を寄せていた。
「……うわ、阿部ちゃん。……なんで分かんの」
「呼吸のリズムが違う。あと、眉間にシワ寄りすぎ」
阿部はニコリともせずに指摘すると、深澤の隣に座り、逃げ道を塞ぐように肩を抱いた。
「……で? 何を抱え込んでるの?」
「いや、別に……」
「嘘つき。……俺らが何年一緒にいると思ってるの?」
阿部の目が、スッと細められる。
怒っているわけではない。けれど、その瞳の奥には「俺に隠し事は通用しない」という強い光が宿っている。
同期という名の、逃れられない鎖。
「……俺は、ふっかのデータの蓄積量が違うんだよ。……誤魔化せると思わないで」
「……っ、」
深澤は観念したように息を吐き、阿部の肩に頭を預けた。
「……参ったな。同期には勝てねぇわ」
「ふふ、分かればよろしい」
阿部の表情がふわりと緩む。
彼は深澤の手を取り、自分の両手で包み込むと、優しく指先をマッサージし始めた。
「……MCの回し方? それとも、舞台の構成?」
「……どっちも。……なんか、正解が分かんなくなってさ」
「ふっかは考えすぎなんだよ。……十分、満点取れてるのに」
阿部は深澤の手の甲に、労るようにキスを落とした。
「……俺が保証する。ふっかの選択は間違ってないよ」
「……根拠は?」
「俺の計算。……俺の予測が外れたこと、ある?」
「……ねぇな。阿部ちゃんの予報は絶対だもんな」
深澤が少し笑うと、阿部は満足そうに頷き、深澤の体を抱きしめ直した。
細身に見えて、意外と男らしい腕。
「……不安なら、俺を頼ってよ。……ふっかが出した答えの、答え合わせくらい俺がしてあげる」
「……生意気だなぁ、阿部ちゃんは」
「同期の特権だよ」
阿部は深澤の頭を撫で、耳元で甘く囁いた。
「……今日はもう頭使わないで。……俺に甘えることだけ考えてればいいから」
「……ん。……頼むわ、阿部ちゃん」
深澤は阿部の胸に顔を埋め、久しぶりに深い呼吸をした。
一番古くて、一番新しい、最高の理解者。
この男が「大丈夫」と言えば、それは世界中のどんなデータよりも確実な「正解」なのだ。
next…さくふか 1/25
コメント
4件
あべちゃんのデータ分析からなら安心だー ふっか頑張りすぎないだね 続き待ってます!
初コメ失礼します、 最高ですね! ファンになってしまいました!