テラーノベル
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同時刻______
珍しく霙が降り注ぐ夜
世間は肌寒い空間に包まれている。
その『世間』にはもれなく彼等も入っていた
🇫🇷 …なんでjuが行かなきゃいけないんだ…
真っ暗な社内に
コツコツとブーツの足音が響く
普段なら退社した後はもう
此処には戻らないフランスが今此処にいる。
数十分前______
肌寒い夜とは異なる暖房の効いた
暖かい部屋がひとつ。
そこはまるで自分だけの部屋
フランスの。
自身の趣味を楽しむだけの部屋。
あたたかみのある木の床
自身の身長をも超える大きなキャンバス
絵の具が付着したままのエプロン
ここ数年洗っていない味のあるパレット
アイデンティティのベレー帽
全てがフランス独自のアトリエ
そこでフランスは思うままに筆を動かす
🇫🇷 ……ん?
フランスの視界の端で端末が光るのが見えた
一度手を止め、発光の原因を探る。
ロック画面にはひとつのメッセージ。
送り主はどうやらイギリスの様だ
🇫🇷 もう夜なのに…どうしたんだろ……?
🇬🇧
夜分遅くにすみません。
私、会社に忘れ物をしてしまって…
取りに行ってはくれませんか?
🇫🇷 …え
ただでさえ連絡をよこすことが少ない
イギリスが……忘れ物?
ましてやイギリス自身の忘れ物を?
驚きと疑問のあまり開いた口が塞がらなかった
🇫🇷
なんで?!イギリスが
行けば良くない?
🇬🇧
私の家が会社からかなり遠いんです。
貴方は近かった気がしたのでお願いしました。
そういう事か。
少し横暴に感じたが
納得したフランスは溜息をついて文字を打つ
🇫🇷
まあ近いけど……さ
わかった。行くよー…
🇬🇧
助かります。では。
🇫🇷 …行くかぁ
足枷をつけたかのように重たい足を上げ
肌寒い外へと駆け出した
🇫🇷 せめてアメにお願いするとか
なかったんかあの人……
愚痴を吐きながら務所へと歩く。
会社の入り口からやけに遠い務所は
フランスにとって怠惰と微かな恐怖を感じさせる
…コツ
数分ほど歩いて行く中で、
ふとフランスの足が静かな廊下で止まる
🇫🇷 (音がする……なんだろう…)
その音とやらは、カタカタと何かを
打っているような音。
パソコンか何かだろうか
🇫🇷 (誰か…まだ仕事をしてるの…?)
真っ暗な社内を歩くことでさえ
恐怖を感じるくらいなのに、
なのにどうだ、人の気配がする。
それだけで、フランスの脳内は
恐怖と音の正体でいっぱいいっぱいだった
数分後_____
🇫🇷 (やっと着いた……)
既に時刻は午後十時を過ぎており
社内の暗さも寒さも、段々と増してきていた
務所の扉を開けようとドアノブを手に取る
そこでフランスはある声に気がつく
< そろそろ………か?
フランスはすぐさまその声の正体が
ドイツだということに気が付いた。
いつもの元気な声ではない
どこか疲れているのか
または体調が優れないのか
とにかく、本調子ではなさそうだ
🇫🇷 (ドイツ…こんな時間まで……)
ドイツを労う気持ちと心配が混ざって
複雑な気持ちになってくる…
🇫🇷 ………!
フランスは何かを思い出したようだ
イギリスが今朝言っていたこと。
🇬🇧 最近、ドイツさんの体調があまり
良くなさそうなのですが…
コーヒーを片手にイギリスはそう述べる
🇫🇷 …やっぱり?
🇬🇧 やはり貴方も感じていましたか?
🇫🇷 うん。なんだか顔色が悪いような気が…
🇬🇧 私も気になって聞いてみましたが…
大丈夫、とはぐらかされました…
🇫🇷 そっか…
🇬🇧 流石に心配ですよね
🇫🇷 ………
フランスはあえて独り言を聴くことにした
コメント
3件
一気読みさせていただきました!ドイツ家の設定とか神がかりすぎてなんと言ったらいいか、、、とりあえずフォロー失礼します!
イギリスとフランスもドイツの心配してるのか🥺フランスの家会社に近かっんだ