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チュンチュン。
朝になった。
「ん……」
窓から差し込む朝日によって目を覚ましたシンヤは、ベッドの上で伸びをする。
「今日も良い天気になりそうだな」
シンヤは窓の外を見た。
空は雲一つない快晴となっている。
太陽の位置から考えて、まだ早朝と言える時間だが、気温はかなり高いようだ。
「さてと……」
シンヤは立ち上がると、顔を洗おうとして部屋を出ようとした。
だが、ふとベッドから人が起き上がる気配を感じ、振り返る。
そこには寝ぼけ眼をこするミレアの姿があった。
「おはよう。ミレア」
「おはよウ。シンヤ」
ミレアはまだ眠そうな声で挨拶をした。
「悪い。起こしちまったか?」
「ううん。大丈夫ダ。ちょっと前に目が覚めたところだったカラ」
「そっか。じゃあ、俺は顔を洗いに行くけど、一緒に来るか?」
「ウン。行く」
シンヤの言葉に、ミレアは嬉しそうにうなずいた。
二人は連れ立って部屋を出る。
廊下に出ると、隣の部屋の扉が開いた。
そこから出てきたのは、レオナードだ。
彼女はシンヤとミレアを見ると、「よう」と言って微笑んだ。
「レオナード。お前も起きていたんだな」
「ああ。なんだか、いつになくすっきりと起きることができてよ。気分がいいぜ」
レオナードは爽やかな表情で言う。
どうやら、昨夜はよく眠れたらしい。
シンヤによって、寝ている間に性欲を存分に発散させられたことが原因かもしれない。
「それは良かったな。……ところで、今からミレアと一緒に顔でも洗いに行こうと思っているんだけど、一緒に行かないか?」
「そうだな。オレもちょうど行きたいと思ってたところだ」
「よし。それなら決まりだな」
シンヤ達は三人で階段を下ると、宿屋の外にある井戸へと向かう。
「おお。ちょうど空いているぞ」
井戸のそばには誰もいなかったので、シンヤは早速桶を手に取り、水を汲み上げた。
冷たい水のおかげで、意識が完全に覚醒していく。
「やっぱり、冷たくて気持ち良いな。……ほら、お前たちも」
シンヤは両手に持った桶の水をそれぞれの顔にかけていく。
「ひゃっ!」
「つめタ!」
レオナードとミレアが悲鳴を上げた。
「ははは。可愛い声だな」
「シンヤ! いきなりひどいじゃないカ!」
ミレアが怒ったように言う。
「すまん。つい、からかいたくなってな」
シンヤは笑いながら謝った。
「お返しダ! それっ!!」
「わぷ!?」
今度はシンヤの方へと水が飛んでくる。
「やったな!?」
「へへん。やられっぱなしは性に合わないんでネ。あたしだって、反撃する時はするんだよ」
「やるじゃないか。だったら俺もだ」
シンヤとミレアは水のかけ合いを始めた。
しばらくすると、レオナードが止めに入る。
「おい。何を子どもみたいなことやってるんだよ」
「あはは……。なんか楽しくて、ついな」
シンヤは照れくさそうに頭を掻く。
「まったく……。まぁ、楽しそうにしているのは悪くないけどな」
レオナードが呆れたような口調で言う。
その時だった。
「スキありダ!!」
バシャッ!
「うぉっ!?」
ミレアの放った水が、シンヤの顔に直撃した。
「ハハッ!! 油断大敵ダヨ!」
「この野郎……」
シンヤはにやりと笑う。
「ミレア。よくもやってくれやがったな」
彼が得物を見る目でミレアへ視線を向ける。
もちろん本気で怒っているわけではない。
「ふふ。悔しかったら当ててみるんだナ」
ミレアはそう言って、魔力を開放し臨戦態勢を取る。
この状態の彼女ならば、簡単に攻撃を当てることはできないだろう。
「じゃあ、遠慮なく……」
シンヤは魔法を発動させた。
「【水柱】!」
「エ?」
シンヤの頭上に巨大な水の柱が出現する。
それは瞬く間に大きくなり、ミレアを飲み込んだ。
「アッ!? ちょ、シンヤ!?」
ミレアは慌てて逃げようとする。
そして逃げ切れないと判断した彼女は、レオナードの背後に隠れた。
「なっ!? ミレア姉貴!?」
「悪いな、レオナード。あたしの盾になってクレ」
「いやいやいや! さすがにこれは無理だろ!?」
「大丈夫ダ。キミは強いカラ。きっと耐えられるサ」
「そういう問題じゃねぇよ!!」
レオナードは叫びながらも、ミレアを庇うようにして立ち塞がる。
そんな彼女にシンヤの水柱が襲いかかろうとしているのだった。