テラーノベル
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バイトの帰り道、団地の前の小さな公園のベンチにその人はいた。
時間は21:20。
こんな時間に何も持たず、部屋から出てきたような格好で一人ベンチに座っている。少し疲れているように見える。
それでもきれいな人だな、と思った。
なんとなく目が離せず、横目で見ながら自転車で前を通り過ぎた。
誰かを待ってるのかな。
ぼーっと前を見て、時々きょろきょろと周りを見る仕草にそんなことを思った。
一度気付くとバイトの度にそのお姉さんはいた。
何をしているんだろう?
ある日、気になって向かいのコンビニで立ち読みをしたり、出たり入ったりを繰り返し、お姉さんを見ていた。
きっと怪しい客だと思われたと思う。
お姉さんは22:00を少し過ぎた頃に立ち上がり、団地の方に去っていった。
さすがに着いていくのはまずい気がしたので、そこまではしなかったけど。
待ち合わせじゃないんだ。
なんとなくほっとした。
そして、それならいつも何をしてるんだろう?という疑問が湧く。
誰かを待つわけでもなく、なかなかの時間に、あんな部屋から出てきたみたいな格好で…
バイトは週2、3回。その度にいるんだ、きっと毎日だと思う。
もし次またいたら何してるのか聞いてみようかな、そう思いながら何度もスルーしていた。
そんなある日、いつものようにいるお姉さん。
今日はやめとこう、いつものようにそう思いながら目の前を通り過ぎようとすると、ふと顔を上げたお姉さんと目が合ってしまった。
しまった、見てたのがバレた。いや、ちょうどいい、思い切って聞いてみよう。
「あの、ここで何をしてるんですか?」
自転車を止め、聞いてみた。
お姉さんは
「何を…?う〜ん、なんだろ…」
よかった。いきなり逃げられたりはしなかった。
「実は結構前からここに座ってるのを見ていて…最近いつもいますよね?」
あ、これは気持ち悪かったかな…
「そっか。見られてたか(笑)」
よかった、これも気持ち悪がられなかった。
それどころかお姉さんは自分の隣をポンポンと
叩いている。
座れってこと?
自転車を停めてそぉっと隣に座る。
「え〜とね、なんて言ったらいいかな…?」
ゆっくりと話し始めたお姉さんの続きを待つ。
「あ、そうだ時間、大丈夫?」
「大丈夫です。今もバイトの帰りなんで」
「高校生?」
「いえ、大学1年です」
「若いんだ(笑)」
やっぱり年上だったか。
「私はもう働いてるよ。社会人」
少し胸を反らして答える。お、立派な…
「その社会人のお姉さんは、いつもここで何をしてるんですか?」
「ふふっ、えーとね、まだ内緒」
あれ…
「仲良くなったら…ね」
仲良く?なれるのか?
「どうしたら仲良くなれますか?」
「ふふっ、そうだね…それはいっぱいお話したら、かな?」
話か…
「俺、今、大学1年で、そこを真っ直ぐ行ったレンタルビデオ屋でバイトしてます。それで…気付いたらいつもバイト帰りに、ここにお姉さんが座ってるのを見て、あ、今日もいるなって思ってました」
「あっ、いいね!きみ、自分からお話してくれるんだ」
「はい、仲良くなりたいんで」
コメント
1件
おお、第1話、読ませていただきました! なんて素敵な出会いのシーンなんでしょう。主人公が何度もお姉さんを見かけて気になって、でもなかなか声をかけられない「もじもじ感」が、すごく丁寧に描かれていて胸がきゅんとしました。特に「見てたのがバレた。いや、ちょうどいい」っていう心の切り替え、好きです。怖がりつつも踏み出す勇気、いいですね。 それに「仲良くなったらね」ってお預けをくらうところ、続きが気になって仕方ないです!どんな秘密があるんだろう…次話も楽しみにしています🌷
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