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いつも通りの朝。
身支度を整える
鞄を背負って自転車を跨ぐ。
靴を上靴に履き替えクラスへと向かう
次々と生徒が教室へと入ってくる。
おはよう!おはようこざいまーす!おはよー。
挨拶が教室中に広がる
[葵子(きこ)おはよう!]
彼女は私の友人の佐藤だ。
「おはよう」
[葵子!今日さ放課後暇?]
「なんで?」
[なんか!近くの公園でドラマの撮影あるらしくて一緒に見に行かない?]
「あー、ごめん。私そういうのあんま興味ないんだ」
[え〜]
「ごめん!別の人と行って」
[わかったー、今度は一緒に行こうね!?]
「はいはい」
佐藤には悪いけど私は会わなきゃ行けない人がいるんだ。
水曜日の午後6時30分。あの木の下で私の大好きな彼と会う。
『葵子ちゃん!』
「煌(こう)さん!」
『今日も来てくれたんだね』
「もちろん!会いたかったですから」
『葵子ちゃんは素直だね』
ー彼との出会いはちょうど2ヶ月前のことー
ドサドサドサ
油断した隙にプリントが巻き散らばってしまった。
「またやってしまった…」
スッ
『はい』
「あ、ありがとうございます!」
『どういたしまして』
「何かお礼を、、」
『そんなのいいよ、気にしないで』
「いやでも…」
『お礼の言葉だけで十分だよ。また落とさないように気をつけてね』
「ありがとうございます!あの!連絡先だけでも教えていただけないでしょうか」
『別にいいけど、、、』
「また改めてお礼します!」
その日以来私たちは頻繁に連絡を取るようになりすぐに仲良くなった。
二つ年上のお兄さん。小さい頃に両親を亡くし現在は一人暮らしの大学生。
『そういえばあそこの公園でドラマの撮影してるらしいね』
「あー友達が言ってました」
『葵子ちゃんは行かないの?もしかして僕が邪魔してた!?』
「そんなことないですよ!むしろ煌さんといたかったので」
『そっか』
初めはただの友達感覚だった。煌さんを知っていくうちに私は煌さんのことがいつの間にか好きになっていた。
まだ出会って間もないけれど煌さんの全てに私は惚れた。大学生なんだしもしかしたら彼女や好きな人がいるかもしれない。
もしかしたら許婚とかいるかも。こんなに魅力的な人だもの。いてもおかしくない、でももしいたとしたら私のことを後輩としか見ていないかもしれない。
毎週水曜日。6時30分から2人で話す時間は私にとってとてつもなく楽しくてしょうがなくって宝物のような時間だった。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに、そう思っていた。
よーし!長期休みに入ったし煌さんといっぱい会えるかなー!
母:ちょっと葵子ー!病院行くから早く車乗りなさーい
「はーい」
実は私は病気を患っている。下手すればすぐに死んでしまう病気でもある。
少しずつ良くなってはきていたけれど最近少し再発し始めてしまった。そのせいで学校を休むことは少なからずある。
水曜日だけは何故か体に異変は起こらない。きっと煌さんの不思議なパワーなのかもしれない。まだこのことは煌さんには伝えていない。伝えてしまったら、知られてしまったら嫌われてしまうかもしれない、遠慮して会うのを控えようと言われてしまうかもしれない。それが嫌で嫌で黙っている。
___いつか話せる日が来るのかな
私は病室で寝ていた。母の姿はなかった。
ただ隣の部屋から微かに聞こえる母の鳴き声が私の耳に入った、喜びの涙なのか、悲しみの涙なのか、私にはまだわからなかった。でもいい予感はしなかった。母が病室に入ってきて赤くなった目を擦り笑顔で「さあ帰ろうと」
この時はいい知らせだったんだなと思ったけれど車に乗って出発するのを待っていたらミラー越しに深刻そうな顔をする母の姿が見えた、そして歯を食いしばって思い切ったように母は口を開いた
母:ねえ、葵子
震えた声で私の名前を呼ぶ
「なに?」
母:落ち着いて聞いてね、あなたの寿命は残り1ヶ月と告げられたの…
「え…」
想定はしていた。でもいざ口に出されると頭が真っ白になってどうしたらいいのかわからなくなった。
また涙を流す母、私は唖然としてしまい大きく開いた瞳から一粒の涙が流れて私の頬を流れる。
まだ私は高校生。まだやりたいことはたくさんあるし、まだ生きていたい。煌さんといっぱい話していっぱい一緒の時間を過ごしたい。できることなら将来一緒に人生を歩んでいきたかった。
まだ好きって言ってない。後1ヶ月しかないだなんて、どうやって別れを告げたらいいの、まだ、まだたくさん___
気づいたら朝になっていた。今日から長期休みで好きなことし放題というのに乗り気になれなかった。
今日は煌さんと会う日でもある、しかしいつものように笑顔で家を出ることができずずっと引き攣った顔をしていた。
『葵子ちゃんおはよう!』
「あっおはようございます🙂」
『どうした?元気ない?』
やっぱり読まれちゃうか
「ううん!なんでもないよ!元気元気!」
『それなら良かったんだけど今日さ〜〇〇〇〇……』
『おーい聞いてる?』
「あごめんなさい、ぼーっとしてて」
『ほんとにどうしちゃったの、なんか悩み事でもあるの?』
「いえ!」
『なんでも聞くからいつでも言ってね!』
『今日はありがとう!しばらく会えないかもしれないけどまた会おうね!』
「ありがとうございました!はい!ぜひ!」
煌さんはしばらく大学研修があって会えなくなってしまった。
結局病気のことは何も言えないまま家に帰った。
母:おかえり、お友達と遊んできたの?
「まあ」
母:辛いかもしれないけどお友達にも病気のこと話しておいた方がいいわよ…
「うん…」
数十日後私の寿命の日まで残り3日
母は私の好きなご飯を作ってくれたり最後だからっていろんな場所に連れてってくれたりわがまま聞いてくれたり私が喜ぶだろうと思って色々とやってくれた。私も現実を受け入れられないけど母も辛いだろう。大事な1人の娘が病気ひとつで命を奪われて死んでしまうんだ。父は私が5歳の時に他界している。だから私が死んでしまったら母は1人残ることになる、親不孝な娘でごめんね。友達と卒業したかった。大学入って就職して結婚してウエディング姿をお母さんに見せたかった。なんて親不孝な娘だろう。
こんな結末で母と別れるなんて、、。
明日は水曜日。煌さんと会う最後の日だ。明日こそ病気のことを伝えるんだ。
翌日
『ひさしぶり!元気だった?』
「まあまあ元気です!楽しかったですか?」
『まーね!』
『そういえば話があるって言ってたけどなんだった?』
「あ、、えっと…その、、」
『うん』
スーッハーッ心を落ち着かせた。
「私、今日合わせて後2日で死ぬんです」
…しばらく沈黙が続いた
『え…?』
「ずっと黙っててごめんなさい。1ヶ月前からわかってたんですけど中々言い出せなくて、、嫌われたらどうしようとか会うの控えられたりしたらどうしようとか不安が不安にかさなっていって…」
『ばか』
だよね、馬鹿だよね、そう、だよね…
煌さんの目に涙が溜まっていた。瞬きをした瞬間涙が流れ出した
『なんでもっと早くに言わないんだよ、あほ!ばか!』
「え…?」
『もっと早く言ってくれたらその1ヶ月間ずっと俺がずっとそばにいたのに、俺が君の最期を、生きている時間を少しでも伸ばせるように動いたりしたのに!!海外の医者だって雇って何百万しても、何千万しても君を守ったのに』
何を言ってるのか全く頭に入らなかった、え、どういうこと?
「どういうことですか、、?」
『君が好きだから。なんで死ぬんだよ、なんで、なんで』
彼の瞳から大量に雨粒が溢れる。まるで大雨。
それに釣られて私も涙が出でくる。ん?まって、今好きって言った?
「いま…すきって…」
『言ったよ。初めて会った時からずっと。』
こんな時言うのもおかしいかもしれない。でも私だって最後くらい気持ち伝えたい
「私も好きでした」
『嬉しい、けど今わかっても遅いんだよなぁ』
嬉しそうな笑顔と悲しい笑顔が同時に彼の表情に浮かび上がった。
そして数日後私は息を止めた。
お母さん、友達、長い間私のそばにいて支えてくれてありがとう
そして煌さん。私はあなたのことが大好きでした。
両思いだったってことを今でもびっくりです。来世彼とまた出会えるなら今度はちゃんとずっと一緒にいようね。
ありがとう。大好きだよ。_______
数十年後
彼女が亡くなってもうこんなにも月日が流れた
僕はまだ君のことを好きでいるよ、君はどうだろう。
空から僕のことを見守ってくれていると嬉しいな。ほんとに君との出会いは偶然だった。
君がプリントを散らばしてなかったらきっと君との欠点はなかっただろう。
君と出会えてよかった。来世は絶対一緒にいような!約束だぜ!と煌は空を見上げた。
その様子を後ろの高校生くらいの子が見ていたようで少し恥ずかしくなった。
その子はどこか葵子の面影が言ったような気がした。あの子がもし生まれ変わりなら…と考えていたりもした。
ガッツポーズを空に上げる男性がいた。
見覚えのない知らない人なのになぜか懐かしくて仕方がなかった。
太陽の光かな、、。目から涙が出てきて袖で拭いた。
[葵ちゃーん!はやくー!]
「はーい!」
僕はその姿を後ろから眺めた
やはりどこか葵子に似ているな、、なんて。