テラーノベル
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俺が選択したのは、キララへの屈服でも、葵への見切りでもない——暴挙だった。「やめろぉぉぉぉっ!!!」
俺は腕を振り上げ、手の中にあった自分のスマホを、廊下のコンクリートの床に向かって全腕力で叩きつけた。
ガンッ!!!
激しい破壊音が放課後の静寂を裂き、液晶画面が蜘蛛の巣状に砕け散る。
飛び散るガラス片がオレンジ色の夕日を浴びてキラキラと光り、床の上で跳ねた。
「……え?」
キララの完璧だった微笑みが、初めてピキリと凍りついた。
可憐な瞳が信じられないものを見たかのように見開かれ、絶句している。
「貴大、くん……? なに、してるの……?」
「俺のスマホで盗聴して、俺のスマホで監視して、俺の連絡先で脅してんだろ……!?」
俺は砕けて画面が暗転したスマホを踏みつけながら、肩で激しく息を吐いた。
手の中の「人質」を自ら叩き壊す。それがどれだけ愚かで、どれだけリスクのあることか分かっている。だけど、こいつの思い描く台本通りに踊らされることだけは、胸の奥の何かが許さなかった。
「連絡先をブロックしろ? スマホを踏み潰せ? ふざけるな……! 誰がお前の思い通りになんかなるか!!」
「あ……あぁ……っ」
俺の背後で、葵の小さな悲鳴が上がる。
床に転がったままの葵のスマホ。そこには変わらず『デスマホ』の赤いカウントダウンが刻まれていた。
『あと 00:25』
『あと 00:24』
自分のスマホを壊したところで、アプリそのものが消えたわけじゃない。
葵のカウントダウンは止まっていないどころか、さらに速度を増して死へと進んでいる。
「ふふ……あははっ! あはははははっ!!」
静まり返った廊下に、キララのけたたましい高笑いが響き渡った。
可憐な顔を歪め、お腹を抱えて笑う彼女の姿は、息を呑むほど綺麗で、そして恐ろしかった。
「すごい……すごいよ貴大くん! まさか自分のスマホを壊すなんて! やっぱり貴大くんは、私の想像を遥かに超えてくる……ッ!」
キララは笑い声をピタリと止めると、すっと冷ややかな無表情に戻り、俺の目の前まで歩み寄ってきた。
距離、わずか数十センチ。
彼女の持つスマホの液晶画面が、青白く彼女の顔を照らしている。
「でもね、貴大くん。それ、意味ないよ?」
キララは細い指先で、自分のスマホ画面をトントンと軽く叩いた。
「『デスマホ』はね、貴大くんのスマホに依存してるわけじゃないの。私の親機(サーバー)と、ターゲットのスマホが直接繋がってるんだよ?」
「……っ!?」
「貴大くんがスマホを壊しても、葵ちゃんのカウントダウンは止まらない。……ううん、むしろ『貴大くんからの解除シグナル』が送れなくなったから、もう葵ちゃんを救う術は無くなっちゃった」
キララは酷虐な笑みを浮かべ、俺の耳元にそっと唇を寄せた。
「ねえ……どうするの? 貴大くんが意地を張ったせいで、あと15秒で葵ちゃんの心臓、止まっちゃうよ?」
「くそっ……!!」
俺は地面に転がる葵のスマホへ手を伸ばそうとした。
だが、心臓が破裂しそうなほどの恐怖と焦燥で、足が竦んで動かない。
『あと 00:10』
『あと 00:09』
赤く点滅する数字。
葵の荒い呼吸が、ヒュー、ヒューと喉の奥で掠れていく。
(終わりだ……俺が余計なことをしたせいで、葵が——)
絶望が全身を支配し、視界が真っ暗になりかけた、その時だった。
——ジジッ。
突然、静まり返った校舎の非常用スピーカーから、激しいノイズ音が響き渡った。
『……あー、マイクテスト、マイクテスト。聞こえるか、画面の前のヤンデレちゃん』
スピーカーから流れてきたのは、ノイズ混じりの、聞き覚えのない機械加工された少女の声だった。
「……なになに? 誰……?」
キララが初めて不快そうに眉をひそめ、天井のスピーカーを見上げる。
『斎川キララ。お前の作った『DEATH-PHONE』、プログラミングとしては上出来だけど……セキュリティが甘々ね』
『【緊急割り込み】シークエンス実行。ターゲット:一ノ瀬葵のカウントダウンを強制凍結(フリーズ)します』
瞬間。
葵のスマホ画面で激しく点滅していた赤い数字が、バツンという音と共にピタリと停止した。
『あと 00:03』
「……は?」
キララが自身のスマホ画面を素早くタップする。だが、画面には『外部アクセスにより操作がブロックされました』というエラー表示が踊っていた。
「私のシステムに……ハッキング……!? 誰……誰なのッ!?」
感情を露わにして叫ぶキララに対し、スピーカーからの声は楽しそうに、嘲笑うように響いた。
『貴大くん、聞こえる? 助けてあげたんだから、感謝しなさいよね』
『私は【NULL(ヌル)】。その頭の狂った天才気取りから、あなたを救いに来た者よ』
桜咲かな
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#学園
人間🫧🪄/👤💚
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コメント
1件
「うわっ……スマホ叩き割るシーン、めっちゃ衝撃だった……😳 自分で人質を壊すっていう選択、すごく愚かで無謀だけど、それでも踊らされないって決めた貴大くんの意志、私は嫌いじゃないな。キララの狂気に笑い声の綺麗さ……ほんとに怖いよね。最後のNULLの登場で救われたけど、あと3秒だったかと思うと心臓止まるかと思った……! 次が気になりすぎる……!」