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適当に相槌を打つ私だったが、やがて小春ちゃんはお手洗いに行くと言って教室を出て行ってしまった。
私は1人になると、小さくため息を漏らすとそのまま机に突っ伏した。


眠いわけではないけれどぼーっとしてたい気分だったのだ。


しかしそのとき、トンっ肩を誰かにつつかれたので、小春ちゃんが戻ってきたのかと思って顔を上げると、そこにいたのは齋藤先生だった。


「ネネ、今いいかな」


そう言って笑う先生の顔を間近で直視してしまい思わずドキッとした私だったが、それを悟られないように平常心を装って聞き返した。


「せ、先生…なんですか?」


「実は少し話したいことがあってな、今日の放課後時間あったりするか?」



「…え?はい、大丈夫ですけど…」


「それはよかった。じゃあ放課後、HRが終わったら隣の空き教室で待っていてくれ」


そう言って先生はまた教室から出ていった。


一体何の用だろうか?もしかして昨日の体育祭のことかな……?私は不安になりながらも先生の後ろ姿を見つめていたのだった。


そして全ての授業が終わりHRを迎えると、日直の挨拶に続いてさようならと発し放課後を迎えた。


先生は教室から出ていく生徒一人一人に挨拶をしながら黒板の文字を短い黒板消しで消していた。


それを見て私も教室を出て空き教室へと向かった。


しばらく待っていると、ガラガラガラと扉を開ける音が聞こえてきたのでそちらに目を向けるとそこには齋藤先生の姿があった。


「ごめんなネネ待たせて」


私は無言で首を左右に振る。


「実は昨日の体育祭のことなんだけどさ……」


そう言って先生は苦笑いをしながら頬をかいた。


やっぱりその話だよね……。


私は思わず身構えてしまうが、先生は続けてこう言ったのだ。


「ネネはすごく頑張ってたよな、みんなを応援してたり、徒競走も最後まで走り切ったり」


「……え?」予想外の言葉に俯いていた目線を上げて聞き返すと、先生は照れたように頭を掻きながらさらに続けた。


「実は大野が、ネネを傷つけてしまったかもしれないって心配してたんだ」


…心配?なんで?嫌なことを言ったのは私の方なのに……。


「小春ちゃんは、応援してくれたし決して私を貶すようなことも言わなかったのに、私ムキになっちゃって…冷たく当たっちゃったんです」


そんな私の心を見透かしたように先生は言う。


「そういうときもあるよな。先生も学生時代陸上部入ってたけど、そんときに1位2位を争ってた奴いたし、馬鹿にされてるって感じまう時もあったんだよな。ははっ、だからネネも俺も変わらないし、それが普通のことなんだと思う。まあ、ネネと大野なら切磋琢磨できそうだけどな」


「先生……あ、だから今も陸上部の顧問を…?」


そう訊くと、親指を上にあげてグッドポーズをしながらニカッと笑って頷いた。


そのすぐ後にまた口を開いた。


「それにこれは一番伝えたかったことなんだが…ネネってさ、普段はあんまり前に積極的に出るようなタイプじゃないだろ?それでも一生懸命前に出て走ってたの先生はちゃんと見てるし、もちろんクラスのみんなも、大野もな。」


その言葉にハッとして先生の顔を見ると先生は優しそうな笑顔でこちらを見ていた。


……あぁ、ダメだ……これはダメ……涙腺が崩壊しそう。


そんな私を知ってか知らずか先生は続ける。


「ってなんだか暑苦しいこと言ってしまって悪いな、まあ、あれだ、これからも応援してるし困ったことがあったらなんでも相談してくれ」


そう言って先生は私の頭に手を置いてポンポンと軽く叩くと空き教室から出ていこうとする先生のスーツの袖を掴んでしまった。


先生は少し驚いたようだったが、私は先生の目を見ながら、思い切って言った。


「じゃ、じゃあ……!連絡先、交換してくれませんか…それが無理なら電話番号だけでもいいので…っ」


すると先生は少し驚いた後、また笑ってスマホを取り出した。


「本当はこういうのだめなんだがな…特別だ」


そう言って先生は自分のLINEのQRコードを表示したスマホの画面を私に見せてくれた。


私はその画面を見て思わず飛び上がってしまいそうになる気持ちを抑えてコードをスキャンし終わると先生にお礼を言った。


無事に連絡先を交換してもらい、私は先生と一緒に空き教室を出ると玄関ロビー前でさよならを言い合って学校を後にした。


……やった!やった!!これで先生といつでも連絡が取り合える!!


しかも先生に特別なんて言って貰えた、とそこで我に返る。


……あれ?私ってこんなにチョロかったっけ……?


いやでもこれは先生だから……だよね?


うん、きっとそう!


だって他の男子に連絡先教えてとか言われても絶対に教えないし! 


なんて自分に言い聞かせながら帰路につく。


その足取りはいつもより軽く感じた。


その翌日、私は学校に着いて小春ちゃんを見つけると、真正面から体育祭のときのことを謝った。


小春ちゃんは最初、目をぱちくりさせながら驚いていたようだったけど、笑いながら許してくれた。


私はこんなにいい子を悪魔に仕立てようとしていたんだと後悔し、また頭を下げて謝った。

恋というには軽すぎる

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