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目が覚めると、既に夜は更けていて、瑠衣は全裸のまま侑の腕の中にいた。
隣で寝ている侑も同様に、一糸纏わぬ姿で眠っている。
(あの後、気を失って寝ちゃったんだ……)
目の前で穏やかな表情で眠っている侑に、そういえば彼の寝顔を見たのは、これが初めてだという事に、瑠衣は気付いた。
侑が起きないように微かに身じろぎすると、彼はゆっくりと瞼を開いた。
「…………起きたのか」
突然目覚めた侑に濃茶の瞳が丸くなり、肩がビクリと震わせて頷く。
侑が瑠衣に眼差しを送ったまま、彼女の唇の横にあるホクロを、指先でそっとなぞると、瑠衣は睫毛を伏せた。
「…………先生」
顔を俯かせたまま、瑠衣は彼を呼んだ。
彼のかつての恋人、島野レナの事でモヤモヤした気持ちを、何とか晴らしたい。
例え、彼が自分に対して想いなどなくても、この想いが彼に届く事がなくても。
侑に対する密かな想いは言えないけれど、彼が好きだから、抱かれるのなら『九條瑠衣』として抱かれたい想いは燻り続けている。
侑は黙ったまま想いを巡らせている瑠衣を急かす事なく、彼女が言葉を零すのを待っている。
瑠衣は息を震わせながらも、消え入りそうな声音で辿々しく切願した。
「もう……私を…………レナさんの……当て付けで…………抱かないで……。先生に……抱かれるのなら…………九條瑠衣として……抱かれ……た……い……」
「……っ」
「せん……せ…………私を抱くの……なら…………九條瑠衣として…………抱いてっ……!」
叶う事のない、瑠衣の悲痛な想い。
彼の表情が、苦悶に満ちたものに変わると、侑は瑠衣の小さな身体を抱き竦める。
「…………すまなかった」
あの冷徹な侑からポツリと零れた謝罪の言葉に、瑠衣の心の奥底が締め付けられ、鈍い痛みが広がっていく。
侑が彼女の頭を胸元に引き寄せると、彼の温もりに安堵したのか、彼女の瞳から雫が頬を伝い、彼の胸を濡らしていった。