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別れ際の空茉の顔。あれは嫉妬や怒りからなる表情だ。なぜ怒っていたのか。奏茉に対してなのか、私に対して怒っていたのか。よくわからない。私はそういうことに関しての感度というものは人並みを下回る。直接聞くか、それらしい推測となる情報を集めない限り知ることはできない。
でも、直接聞くことも、情報を集めることもしない。私はそれに干渉する権利も義務もないからだ。頼まれてもいない。だから、空茉は放っておく。きっと奏茉がどうにかしてくれる。
「…夏休みの宿題、終わらせるか」
私は椅子に座り、1時間もあればできる作業をこなしていく。こんなお遊び程度の計算、100問は1分あれば十分だ。
最後のページを終わらせたあと、私はエアコンをつけようか迷う。とりあえず髪を縛っておくことにした。それだけで首元がだいぶ涼しくなる。
顔を洗いたくなって、洗面所にいくと鏡の向こうに映った自分と目があう。紫がかった長い髪。親譲りのくっきりとした目とは違い、感情が薄い三白眼。少し薄い唇に、ベース型の輪郭。こうしてみると、私と空茉達は別世界の人間だ。2人は顔が整っているけれど、私は整っているとはお世辞にも言えない顔をしている。なぜあの2人が仲良くしてくれるのか、私にはわからない。わかろうとすることもない。
もし2人に見捨てられたら、私は本格的なボッチだ。
そんな、ありもしない妄想をしてしまう。考えすぎるのは長所にもなるが短所にもなる。誤解を生み、最悪の事態につながりかねない。でも、それが私の個性である。人よりも色々なことを経験してきたが故に考えてしまう。そして、その思考は悪い方向へと進んでいく。
頭を振って思考を止める。ネガティブな発想は思考までもをネガティブにさせる。こんなことはもう考えないようにしよう。
私は残りの教科の夏休みの宿題を終わらせようと、鉛筆を持ち机に向かった。
奏茉side
「仲良くすることはできないって…一体どうして?」
空茉の言っている意味がわからなくて混乱する。空茉は、なんで俺が相羅のことを好きでい続けると仲良くできないんだろう。空茉はあいらの事が好きで、俺も相羅のことが好きで、それで、相羅もきっと俺らのことが好きなはず。3人で仲良くしていけるはず。なのに、なんでそんなこと言うんだろう。
空茉の言っている意味が理解でき図、そのまま疑問を口に出す。
「なんで、3人一緒に仲良くすればいいじゃん!」
「やっぱり、奏茉の好きは僕の好きとは違うんだね」
好きが違うってなんだろう。他にどう言う意味の好きがあるのだろう。
わからない。空茉が俺より少し先を歩いている気がする。
今思えば、空茉は当たり前のように俺の先にいた。保育園に入園した時も、自己紹介をする時は空茉が最初にして俺が後だった。相羅に話しかけたのも空茉、身長が大きいのも空茉、勉強を早く覚えたのも空茉。同じ日に、同じ時間で生まれたのに、なんで僕と空茉はこんなに違うんだろう。
「空茉は、本当に俺の兄弟なの?」