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「っていうかさ~ここ職場だから、その名前で呼ぶのやめない?」
会社でもいつもと変わらず自然に名前で呼ばれるのが気になって、早瀬くんに提案してみる。
「え~なんで~? 二人だけの時はよくない?」
「二人だけでもよくないでしょ。会社だし」
「え~二人以外誰かいたらもちろん呼ばないよ?不本意だけどちゃんと望月さんって呼ぶからそこは安心して」
「いや、そういうことじゃなくて・・・いや、それも心配なんだけど・・」
「え? 他に何があるの?」
「いや・・・私がさ、ちょっと名前が恥ずかしくて仕事モードにならないっていうか・・・気になる・・から」
そうじゃなくても、ホントは勝手にずっと最初から名前呼ばれてるのもむず痒いのに。
「そっか。名前で呼ばれるとオレのこと意識しちゃうんだ?」
あっ、その顔絶対面白がってる。
「いや!そう、じゃなくて!」
「え~そういうことでしょ~。それにオレに呼ばれて恥ずかしいとか可愛すぎるんですけど~」
「はっ!?」
すると今度は調子に乗ってまた嬉しそうに面白がってからかってくる。
「ちょっ、調子に乗らないでよ!」
ダメだ。恥ずかしさの上乗せだ。
「仕事モードにならないなら、やめる必要ないよね」
「はっ?意味わかんない」
「だってオレと二人の時は別に仕事モードにならなくても、全然意識してもらって構わないし」
な、何言ってんだ、この人は。
「そんなのこっちが困るし」
「オレは困んない♪」
何、その悪魔のような余裕な微笑み。
「最初っから言ってんじゃ~ん。オレは仕事全然影響なくて大丈夫だって」
へ~。随分余裕。
女慣れしてるだけに、私一人のことでそんな動揺もしないってことか。
「それよりも。オレは透子をその気にさせる方が大事」
そう言ってじっと見つめながら、テーブルに置いてた私の手を、テーブルを挟んだ向かい側から握って来る。
「ちょっ!」
振り払おうとしてもガッチリと上から固く握り締められてて。
「透子にはオレに本気になってもらわないと。どんな時でもオレは手を抜かない」
「だとしても、それは仕事じゃない時でさ~」
さすがに真っ向から見つめられたまま真剣にそんな言葉を言われると、ドキドキしながらも一人動揺。
「オレには仕事もプライベートも関係ない。いつでもどこでも透子と真剣に向き合ってる」
「それは、そうなんだけど・・・」
確かに否定出来ない。
この人はきっといつでも真剣なのだと思う。
「プライベートだけとか時間足りなすぎる。オレは透子と一緒の時間はどんな時でもドキドキさせたい」
「何それ・・。こんな時までまだからかうの?」
まっすぐぶつけてくる言葉に視線に正直まだ慣れなくて誤魔化す。
「これがからかってるように見える?」
ギュッと握っている手を強く握り返して少し彼の方に引っ張られる。
わかってるよ・・・。
冗談じゃないことくらい。
その眼差しもこの握ってくる力の強さも、からかっているようには思えないから。
「だから、そっちも二人の時はちゃんと名前で呼んで?」
へっ?なんでそうなる。
「最近名前呼ぶのサボってるでしょ。二人の時もずっと早瀬くんだし」
あっ、バレてた。
何も言ってこないからそれで通せるかと思ったのに。
「だって・・・なんかまだ恥ずかしいんだもん・・・」
あー!年甲斐もなく何言ってんだ私は!
年上なのに何を小娘みたいなこと!
もうまたからかうならからかえばいいさ!
「ふっ」
ほら。やっぱ笑ってる。
「何それ可愛すぎるんですけど」
・・・え?
からかうどころかまさかの言葉。
「何、言ってんの・・・」
ヤバイ。恥ずかしさで逃げ出したい。
この手を今すぐ放してください。
恥ずかしすぎます。
「もう、この手放して」
恥ずかしさで逃げたくて必死に握られている手を振り払おうとする。
「ダーメ。逃がさない」
あっ、何この甘々攻撃。
少し関係性変わっちゃうとここまでストレートに攻撃してくるのか。
しまった。
逆に両手でホールドされてしまった。
まただ。
前にも見たことある獲物を捕らえるような目。