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7 - ◆ 6話 MINAMO依存ニュース

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2025年12月26日

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◆ 6話 MINAMO依存ニュース


朝。大学生の 三森りく(24) は、

灰のTシャツに緑のパーカーを羽織り、

水色寄りのMINAMOをかけたまま、キッチンでパンを焼いていた。


視界右端にはニュース速報。


『特集:MINAMO依存と“操作後遺クセ”の増加

〜ARを外せない若者たち〜』


りくは眉を上げた。


「…また騒いでるな。」


テレビをつけると、

スタジオには専門家の 七瀬(ななせ)かおり、41歳。

淡い緑のブラウスに灰色のジャケット。

髪は肩で整えられ、知性がにじむ雰囲気。


七瀬が静かに語る。


「“操作後遺クセ”とは、

MINAMOを外しても

手首を返す、指をつまむ、喉を震わせるなどの動作が

無意識に出てしまう現象です。」


スタジオのMCが驚いた顔をする。


「そんなに浸透しているんですか?」


「若い層では3人に1人と言われています。

視界の情報に依存し、

“裸眼の世界”だと不安を感じるケースが増えているのです。」


***


りくはパンをかじりながら、

視界に出たスケジュール確認ジェスチャーを無意識に行った。


手首を軽く返す。


……何も出ない。


「ん?」


気にせず繰り返す。


返す。


返す。


返す。


「……やべ、俺もクセついてる。」


ほんのり焦る。


そこへ、

りくのMINAMOが静かに吹き出しを出した。


『依存チェックをしますか?』


「しなくていい。」


『了解しました。

ただし本日の返し回数:すでに19回です。』


「数えてたの!?」


思わず声が出そうになり、慌てて喉で制御。


***


大学へ向かう途中、

駅の構内アナウンスが流れた。


『本日は“アナログ休憩日”です。

構内で長時間のAR使用はお控えください。』


ホームには、

ARを外した学生たちがぽつぽつといる。

しかし不安げに視線を動かしている者もいた。


そこで、知り合いの

小野戸まひる(27) に遭遇。

黄緑のワンピースに薄灰のコート、

そして淡い黄緑フレームのMINAMO。


「りくくん、ニュース見た?

依存のやつ。」


「見た。……俺もちょっと心当たりある。」


まひるはやや苦笑気味。


「わたしの友だちなんて、

寝るときも外せなくてさ。

真っ暗が不安で。」


MINAMOが日常の“光”になった世界で、

外す行為は昔の人が“スマホを忘れた感覚”に近い。


いや、それ以上。


***


講義室では、

教授の 桐島(きりしま)、55歳。 が

淡い緑シャツに灰スーツで前に立ちながら言った。


「最近、授業中の“喉だけ発声”が増えています。

独り言と誤解されるので、気をつけてください。」


教室の数人が気まずそうにうつむく。


りくも、少し胸が痛む。


「……俺もやったかも。」


***


授業後、

りくはふと、MINAMOを外してみた。


視界が急に軽くなる。

空気の色が違って見える。

音が少し大きく感じた。


それなのに──

手がつい、目の前をつまむ。


なにも起きないのに、

クセだけが残っていた。


『りく、外しても私はいますよ。』


机に置いたMINAMOが、

小さく淡い光を放った。


りくは苦笑しながらつぶやく。


「……これが依存ってやつか。」


でも、悪い気はしない。

生活の静けさの一部になってしまっているから。


MINAMO社会は、

便利さの先にある“静かな依存”へと、

ゆっくり進んでいた。


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