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#シェイプシフター
柊遊馬
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#戦国時代
眠狂四郎
284
#戦国時代
眠狂四郎
196
#軍師
眠狂四郎
153
朝日が平原を照らす中、ワロアは馬上から八万を超える将兵を見渡した。
「兵たちよ!」
その声は戦場へ響き渡る。
「奴らは遠い異国から来た寄せ集めに過ぎぬ!
ここは我らの祖国、我らの大地だ!」
兵たちが槍を掲げる。
「トレビの敗北も、トラシムの屈辱も、今日ここで終わらせる!
グランは敗北を恐れぬ。倒れても立ち上がり、最後に勝つ国だ!」
ワロアは剣を高く掲げた。
「父祖の名誉を守れ! 妻子の未来を守れ!
今日、勝利をもってグランの誇りを取り戻すのだ!」
「グラン万歳!」
幾万もの雄叫びが大地を震わせた。
その歓声の向こうで、静かに彼らを見つめる一人の男がいた。
バルカは微笑み、小さく呟く。
「……来るか。」
「すごい大軍だ……あんな遠くまで兵がいる。」
「ん?」
「ビスコ、どうした?」
将兵たちの不安は、その表情にはっきりと現れていた。
バルカは笑みを浮かべる。
「ビスコよ、お前は大事なことを忘れている。」
「十万といえども、あの中に猛将ビスコはおらん。」
「連戦連勝のビスコがおらぬ軍が、この俺たちに勝てると思うか。」
一瞬の静寂のあと、兵たちの間から大きな笑い声が湧き起こった。
その冗談は瞬く間に全軍へ広がる。
バルカは、このグラン本国で無敗を誇る男だった。
「将軍が笑っている。」
「今回も勝てる。」
その確信は笑いとともに兵たちへ伝わり、不安は次第に消えていった。
グラン軍は両翼へ騎兵を配置した。
右翼には副将アエミル率いるグラン騎兵二千。
左翼には総司令ワロア自らが率いる同盟都市騎兵四千。
そして圧巻は中央である。
六万もの重装歩兵が幾重にも隊列を重ね、大地を埋め尽くしていた。
この主力を任されたのは、ミルキウスとセルビーの両将。
その前方には軽装歩兵一万が展開し、さらに後方陣営には守備兵一万が控える。
敵中央を力で粉砕し、一気に勝負を決する。
それこそが、グラン軍の描いた作戦だった。
対するバルカ軍は、中央前線へガラリア兵、
その後方へスパルーニャ兵を配置した。
合わせて二万二千。
グラン軍中央の六万に比べれば、その厚みはあまりにも薄い。
しかも、その戦列は敵へ向かって緩やかな三日月形に張り出していた。
左翼は総大将バルカ。
右翼には弟マゴ。
中央後方にはビスコが控える。
さらに三日月陣の両端には、アウリカ精鋭の重装歩兵を五千ずつ配置した。
彼らが身に着ける鎧と盾は、
これまで幾度もの勝利でグラン兵から奪い取った戦利品である。
最前列には軽装歩兵八千。
左翼にはハスドル率いる重装騎兵六千。
右翼にはハンノ率いるヌミダス騎兵四千。
これが、バルカ軍の全戦力だった。
その兵力は、グラン軍を大きく下回る。
だが、その布陣だけは、誰一人として意図を読み取ることができなかった。
それは、世界最強の重装歩兵と、
世界最強の機動騎兵が雌雄を決する戦いでもあった。
決戦の火ぶたは切って落とされた
投槍が空を覆い、両軍の軽装歩兵による激しい投擲戦が繰り広げられた。
やがて互いに役目を終えた軽装歩兵は左右へ退き、
戦場は重装歩兵へ明け渡される。
両軍の歩兵は雄叫びとともに正面から激突した。
それと時を同じくして、両翼では騎兵同士の激戦が始まる。
最初に戦況が動いたのは、バルカ軍左翼だった。
ハスドル率いる六千の重装騎兵が、
アエミル率いるグラン騎兵二千へ猛然と襲いかかった。
「なに……!?」
アエミルは目の前の光景に目を疑った。
グラン軍、最初の誤算。
右翼を流れるオフト川が天然の障壁になる――。
誰もがそう信じ込んでいた。
だが、ハスドル率いる重装騎兵は、何のためらいもなく川を渡る。
水しぶきを上げながら隊列を崩さず進み、右側から川を渡り次々と襲いかかった。
グラン軍は、これまでの戦争で熟練騎兵の多くを失っていた。
経験に劣る騎兵では、その猛攻を受け止められない。
隊列はたちまち崩れ、壊滅状態へ追い込まれていく。
だが、ハスドルに勝利の余韻を味わう気はなかった。
「追うな!」
「反転しろ!」
その号令とともに六千騎は向きを変え、戦場中央の背後へ駆け始める。
左翼寄りに本陣を構えていたバルカは、その様子を眺めながら口元を緩めた。
「……あれ。」
「ちょっと早すぎるな。」
中央では、圧倒的なグラン重装歩兵が前進を続けていた。
最前列のガラリア兵は次々と討たれ、その屍が大地を埋めていく。
グラン兵は、その死体さえ踏み越えながら、まるで行軍するかのように押し進んだ。
三日月形に張り出していたバルカ軍中央は、
圧力に耐えきれず、じりじりと後退する。
しかし、その隊列は崩れない。
一歩、また一歩と退きながらも、なお戦列を保ち続けていた。
それでも戦場を見渡す誰の目にも、
この圧倒的な重装歩兵を押し返すことは不可能に思えた。
三日月陣は押し潰されるように後退を続けていた。
それでもグラン重装歩兵の前進は止まらない。
中央では、バルカ、マゴ、ビスコの三将が馬を駆り、
崩れかける戦列を必死に支えていた。
「踏みとどまれ!」
「まだ退ける!」
兵たちを鼓舞し続け、かろうじて隊列の崩壊を防いでいた。
「なかなか勝たせてくれないねえ。」
右翼では、ヌミダス騎兵を率いるハンノが前方を見据えていた。
相手は敵総司令ワロア自ら率いる同盟都市騎兵。
さすがに精強で、歴戦のヌミダス騎兵を相手に一歩も退かない。
互いに突撃と離脱を繰り返し、戦況は膠着していた。
その時だった。
敵騎兵の後方で、土煙が高く舞い上がる。
「……やっと来たか。」
ハンノは小さく笑う。
「遅いじゃないか。」
その口調には、焦りは一切なかった。
すべては、予定どおりだった。
コメント
1件
おおお…第58話、一気に引き込まれたよ!!😭🔥 ワロアの演説で士気が上がるグラン軍と、その圧倒的兵力に対して「笑い」で不安をかき消すバルカ将軍の采配、めっちゃ対照的で痺れた…! 三日月陣で押し込まれながらも冷静に中央を後退させる戦術、ハスドルの川越え奇襲、全部「予定通り」って言い切るバルカの余裕ヤバい…! 「ちょっと早すぎるな」のセリフがもうカッコよすぎて何度も反芻したよ…!後編が待ちきれない!!🔥