第48話:入口と終止符
昼下がりの教室。
水色のシャツに短パン姿のまひろは、机上の学習端末を前に指を動かしていた。
教師は緑のスーツに黒縁メガネをかけ、黒板の前で口を開いた。
「今日は“呼び出しカナルーン”と“アンズイカナルーン”を実習します」
端末画面に光が流れる。
まひろは声に出しながら、呼び出しカナルーンを入力した。
「ガッコウ」
次に操作内容。
「キョウカショ ヨミアゲ → ジュギョウ ハジメ → シュウリョウ」
最後にアンズイカナルーン。
「オワリ」
ピッと音がして、画面には「アンズイ完了」と表示された。
教師は頷き、はっきりと告げる。
「入口が“呼び出しカナルーン”、最後の“オワリ”が“アンズイカナルーン”です。始まりと終わりを正しく入力することが、市民の安心につながります」
休み時間。
壁のモニターにスーパーの学習動画が流れた。
緑の画面にカナルーン入力の例が表示される。
「スーパー → ニンジン フタツ → トマト ヒトツ → カイケイ → ケッサイ → オワリ」
明るい声のナレーションが響く。
「呼び出しカナルーンで入口を開き、アンズイカナルーンで安心の終止符!」
画面の子どもたちが笑顔で声を合わせる。
「アンズイで安心〜!」
まひろは首をかしげ、小さく呟いた。
「でも、全部見られてるんだよね……?」
暗い部屋。
緑のフーディを羽織ったゼイドが、複数のモニターを見つめていた。
そこには「ガッコウ」から「オワリ」まで、すべての入力がリアルタイムで並んでいる。
ゼイドは低く呟いた。
「呼び出しは入口、アンズイは鍵。安心という名で、すべては縛られていく……」
モニターの中では、市民が笑顔でカナルーンを唱え、アンズイで閉じる姿が続いていた。
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