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「……あー、もう! 考えても埒が明かねぇ!」
煌は乱れた前髪をぐしゃぐしゃに掻き回すと、勢いよく椅子から立ち上がった。
朱雀の残像に囚われて悶々としているのなんて、まっぴらごめんだ。これ以上この部屋にいたら、自分の心臓がもたない。
それに、燕花は「大人しくしてろ」と言ったが、静遠が鳳来堂と繋がっていて、昨夜の目撃談を揉み消そうとしているのだとしたら、一刻を争う。燕花がいくら優秀でも、神官長相手に隠密調査をするとなれば時間がかかるはずだ。
(あいつが完璧なポーカーフェイスで、涼しい顔して嘘をつき通せると思ったら大間違いだ。ボロを出させてやる)
拳で解決できないなら、直接その胡散臭い化けの皮を剥ぎに行けばいい。
煌は懐の竹籠――路地裏で拾った、あの「鳳来堂」の焼き印がある籠の端切れをしっかりと手で確かめると、部屋の扉を力任せに押し開けた。
目指すは西の回廊の突き当たり。静遠の執務室を兼ねた離れだ。
ひんやりとした宮殿の廊下を、煌は早足で突き進む。すれ違う下級の神官たちが、異界の巫女(仮)のただならぬ殺気にビクリと肩を震わせて道を譲るが、今の煌にはそれを気にする余裕はなかった。
(……救われようなんて思ってねぇ、か)
朱雀の側にいろ、と燕花は言った。あいつを救えるのはお前だけだと。
おこがましいにも程がある。神様を人間が救うなんて、そんな大層な殊勝さは持ち合わせていない。
けれど、昨夜のあの甘苦しい沈香の香りと、自分をまっすぐに見つめていた黄金の瞳の熱が、どうしても頭から離れない。
(俺はただ、あの『クソジジイ』から無事に帰るための印を毟り取るだけだ。その邪魔をする奴は、神官長だろうがなんだろうが、ぶちのめす)
そう自分に言い聞かせながら、煌は西の離れへと続く重厚な扉の前に辿り着いた。
一呼吸置き、ノックもせずにその扉を押し開ける。
「おい、胃薬おじさん。ちょっと面貸せよ」
尊大な態度で踏み込んだ煌の目に飛び込んできたのは、机に山積みにされた書類を前に、まさに「薬舗の目録」のような巻物を凝視していた、静遠のひどく険しい横顔だった。
「――おや、これはこれは、異界の巫女じゃないか。こんなところに来てどうしたんだ? 朱雀様の腰巾着のお前とは違って、私は忙しいんだが」
ピリピリとした刺々しい空気。だが、その態度があまりにも用意周到で、まるで煌がここへ来るのを前もって分かっていたかのような返答に、煌の奥歯が鳴る。
(……チッ、ハナから煙に巻くつもりかよ)
煌は引き返さず、ドカドカと机の前まで大股で歩み寄ると、両手を机に突いて静遠を見下ろした。
「なぁ、オッサン。昨夜、宮殿に賊が侵入したんだって? いつもならいの一番にキレ散らかして駆けつける筈のアンタが、昨夜は影も形もなかったなぁ。一体どこの何処で、何をしてたんだよ?」
静遠は眼鏡のブリッジを中指でくいと押し上げ、鼻で笑った。
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コメント
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おおっと、煌ちゃんがついに静遠さんと直接対決か…!🔥 ノックもせずにずかずか入って「胃薬おじさん」呼ばわりする度胸、かっこよすぎて笑ったw しかも竹籠の端切れを証拠に持ってきてるところとか、頭キレる系ヒロインじゃん!? 朱雀とのあの甘苦しいシーンの余韻がまだ心臓に残ってるのに、このピリついた空気でまた別の緊張感が走って、やばい…次が気になりすぎる😭📖💕