テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
60
1,493
30
「レナ、入りますよ」
ドアを開けたのは、お手伝いさんのアーウィンだった。
片手に、ジュースの入ったグラスを乗せたトレーを持っている。
その後ろから、ケーキを捧げ持ったリズが入ってきた。
「おー待たせー!」
「わあ、蝋燭だ!」
ケーキの上にはいくつもの蝋燭が立っていて、火が灯っている。
「蝋燭を忘れるわけにはいかないわよー。ちゃんと十四ね」
ゆらゆらと火が揺れて、ケーキはベッドサイドのテーブルへと運ばれた。
炎の数を数えようとしたけれど、ふとさっきマシューが何かを言いかけていたのを思い出す。
「マシュー、ごめんね。さっき、何だった?」
「や、別に!なんでもない!」
ズボンのポケットから慌てたように手を出すと、ぶんぶんと首を横に振った。
「なんの話?」
蝋燭の位置を最終調整していたリズが顔を上げる。
「何でもねーって!!」
「何よう、内緒話?」
拗ねたように言う彼女を見て、マシューをフォローした。
「キャンプの話、してくれたの」
「あ、夏の!聞いた?」
「うん、楽しそう」
「そうよー。レナもメンバーに入ってるんだから、夏までに元気にならなきゃダメよ!」
「……うん!」
嬉しくなって勢いよく頷きながら、チラッとアーウィンを見る。
彼は口の端を上げて微笑んでみせると、何も言わずに部屋を出ていった。
あの「にこっ」はいいですよかな?
ダメに決まってるでしょ、かな?
……ううん、大丈夫!
アーウィンが文句言えないくらい、元気になればいいんだもの。
「よしっ。それじゃ、マシュー!カーテン閉めて!」
明るくマシューに指令を飛ばす。
「ええ?」
「いーから、ほらっ。閉めたら、こっち来て座る!」
私たちは顔を寄せ合ってケーキを囲んだ。
薄暗くなった部屋の中、蝋燭の炎が互いの顔を照らす。
「何だか秘密の儀式みたいね?」
嬉しくなってリズに聞いた。
「ロマンチックでしょー?」
「……むしろ黒魔術っぽいと思うんだけど」
「ロマンチックなの!ほら、二人とも手握って」
言われた通り、三人で輪になって手を握る。
「本当に秘密の儀式みたいね!」
「オレにゃ、ますます悪魔を呼び出そうとしてるようにしか……」
「ごちゃごちゃ言わない」
マシューを嗜めると、彼女は目を閉じた。
私の手を握る手にきゅっと力がこもる。
「……レナ、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「十四歳がレナにとって素晴らしい年になりますように。レナが早く元気になりますように……」
少し考えてから付け足した。
「あと、マシューの成績がもう少しマシになりますように!」
「ほっとけ」
私は思わずくすくす笑う。
「ね。アタシたち、友達だからね。これからもずっと、友達でいようね。約束だよ?」
「うん!約束!」
「…………」
彼はそっぽを向いていたけど、急にいてっと叫んでリズを睨む。
彼なりのYESだ。
私と彼女は顔を見合わせると、声を出さずに笑い合った。
「よし。じゃ、三人の友情とレナの誕生日をお祝いして……レナ、蝋燭消して!」
「うん!」
胸いっぱいに空気を吸い込んで、ふうっと息を吹きかける。
十四の炎は大きく揺らめいて消えた。
コメント
1件
おおー、第3話、めっちゃ良かったわ!誕生日パーティー、しっかり温かい雰囲気で描かれてて胸がぎゅってなった。リズの明るさとマシューの不器用な優しさのバランスが絶妙だし、「三人の友情」って言葉がすごく響いた。病室であの温かさは泣けるわ…。アーウィンの「にこっ」も気になるけど、そこはあえてスルーな感じなのもいいわね🔥