「本当に?話してくれるのか!?」
「うん」
目を輝かせるドイツを横目に、イオは無機質な返事をした。イオは至って真面目だった。
「話し終わるまで、静かに聞いてくれたら嬉しいけど」
「勿論だ。覚悟は出来ている。内容が内容なら、一緒に罪も何も背負ってやる。聞かせてくれ」
イオは少しほっとした。その言葉が決して嘘ではないことを祈った。すぅ、と静かに深呼吸をする。
「じゃ、始めるね」
バチカンが殺されそうになった話。お前も知ってると思うけど、発端はあの事件だった。イオが偶然あの場所に居合わせたものだから、バチカンは何とか助かった。助かったけど、イオの心は未だ動揺していたんだ。まあ、当然の事だよね。バチカンはイオが小さい頃からずっとそばに居た存在だし、イオの心臓とでも言っていい程大切な存在だから。もしイオがあそこに居合わせていなかったら、もしあそこでバチカンが___とかずっとずっと考えてて、精神にだいぶ来ていたんだ。
勿論過去に大変なことも、精神に来ることも沢山あった。イタリア共和国が出来たあの日から今に至るまで現状いろいろな事象を踏んできたわけだし。でも、彼の死はそれ以上に、イオの身体とは比較しがたい大きな出来事なんだよねきっと。
バチカンは生きている、イオが助けた。何回理解しても、何回反芻しても黒ずんだ不安というかなんというかが心の中でずっと渦巻いていてどうにかなりそうだった。
そんなとき彼は現れた。…イオが震える身体をなんとか動かしてベッドに赴いたその時だ。本当に信じられないことかもしれないけどイオだってそんなこと判ってるからどうか信じてね。
イオの目の前に”カミサマ”が現れたんだ。本当に。自称とかじゃなくて、雰囲気というか、直感的に分かったんだ。人間でも国でもない。何もかも超越した何かだとわかった。これでも何十年生きてるんだから、勘はある程度当たる自信があるし。
じゃあ、なぜカミサマともあろうお方がイオの前に現れたのか?というと、カミサマはこう言ったんだ。
バチカンを助けたお礼がしたい、と。
一瞬何を言っているのかわからなかった。なんといっても、お礼をいただくほどのことはしていないからだ。バチカンを助けたのだって、…死にかけの身内がいたら助けない理由なんてないだろうが。我々の義務だろうが。でも神様はイオに礼をしたいらしいんだ。まあそこまで言われたなら、感謝に応じない理由もないわけだし…?
カミサマがそう言っているのだ。イオは願い事をかなえてもらえることになった。何か願い事があったら、神様にお願いしたりするだろ?そんな感じで。イオはそういわれたから、少し考えた後こう言ったんだ。
「とある国が、イオのことを好きになるようにしてほしい」
って。
…この際だからばらすけど、イオには好きな国が居るんだ。笑わないでくれ。でもイオは自分の愛情を否定するつもりはないし、また、愛に嘘はつけないものだ。なんとか納得して話を聞いてくれ。
そうしたらカミサマも了承してくれたのだが、カミサマがなにやら考え事をしだしたんだ。何を考えているのかと問うと、すぐに答えは返ってきた。
国の感情というのは安易に動かしてはいけないものである。国という存在の感情とやらなんやらは実際の政治などに直接結びつくものなので、急になんの理由も無く感情を動かせば国民たちが混乱するのは目に見えている。例えると、ロシアが急にアメリカを好きになるみたいなものだ。イタリアには深く感謝しているのでどうかその願いをかなえてやりたいのだが、そうなると逆にイタリア達も苦労してしまうのではないかと。浮世の人間たちが混乱するのはカミサマにとっても国たちにとってもいいものではないし。
そこでカミサマはそれを何とか叶える方法を思いついたらしい。カミサマは言った。
「でもこの方法だと、だいぶお前の手を煩わせないといけない」
イオは言った。
「▮▮▮」がイオのことを好きになるならなんでもいい!」
イオは大分精神に来ていたものもあってそんなことを口走った。なんとかその国と結ばれるのが悲願だったんだ。イオの願いだったんだ。
そうするとカミサマはうむ、と頷いて了承してくれた。
「寝ればわかるであろう。どうか、お前が彼と結ばれることを願っている。改めて感謝する」
といって、カミサマは消えた。イオは不思議に思いながらも、ささやかな期待を胸に秘めながらどきどき心拍数をあげつつ布団い潜り込んだ。イオの悲願が、もしかしたら叶ってしまうのか!…なんて、思ってたね。
布団があったまったころに、すぅと目を閉じると案外簡単にイオは眠りについた。そこで早速、イオは夢を見たんだ。
夢の中でイオはいつものシャツを着ていなかった。仕事用のスーツを着ていたわけでもないし、軍服を着ていたわけでもない。
イオはその夢の中でとても大事なことに気が付いた。明らかに時代が違うんだ。スマホは勿論カメラもない。
イオが居たのは西暦476年とか、480年くらい。
ちょうど、西ローマ帝国が滅んでしまったときのところまで、イオは巻き戻ってしまっていた。






