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バス停でスマホの画面を見た瞬間、完全に沈黙した。
「マジでぇ…ゼロ!?」
充電が切れた。しかも、充電器は家に置きっぱなし。今日の予定も連絡も全部オワタ。
でも、ここで落ち込んでても仕方ない。ウチはギャルだ。行動あるのみ!
ふと目を上げると、スーツ姿の男性が一人立っていた。
ぼさぼさ髪、目の下にはひどいクマのおじさん。まさにブラック会社戦士って感じ。
「うわぁ…これはほっとけない系の疲れ顔だわ。」
思い切って、バス停に近づく。
「…あのぉ、今、何時ですか?」
思わず声をかけた。普段なら恥ずかしくて絶対ムリだけど、スマホが死んでると強気になる不思議。
男性は少し目を細めて、ウチをチラリ。
「…午後六時五十分です。」
おお、ちゃんと答えてくれた。地味に好印象。
「ありがと~!マジ助かるわ~!」
ウチは満面の笑みで返す。
声は大きめ、テンション高め。おじさん、少し驚いた顔をする。
「てか、そのクマ、やばくない?完全に徹夜モードじゃん!」
勝手に話を振る私に、おじさんは小さくうなずくだけ。
「仕事も大事だけど、無理しすぎちゃダメだよ~!」
一方的にしゃべり続けるギャル。
おじさんは無言だけど、耳はちゃんとこっちに向いてる気がする。
バスが来る。
「あ、バス来た!」
すると、おじさんも黙って同じバスに乗り込む。
「え、同じじゃん。うけるw」
おじさんは何も言わない。ただうなずく。
バスが揺れるたびに、疲れたクマ顔が少し心配になる。
「ちゃんと休みなよ…」
独り言みたいに呟いたけど、伝わってる気がした。
スマホの充電が切れた日から始まった、この小さな日常。
また会えるかな。
ーーそんな気持ちで、ウチは窓の外を見た。