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それからしばらくして、美咲の店を出て二人でマンションへ歩いて帰り始める。


「わかった?」

「えっ?何が?」


歩きながら隣で声をかけられて、なんのことかわからなくて聞き返す。


「だから。ちゃんとオレたち付き合ってるから」

「あ、あぁ・・うん・・」

「なんか自信無さげだね」


自分の好きな気持ちに気付いたのはいいけど、やっぱりこの人の気持ちが気になる。

なぜかここまで言ってもらっても不安が拭えないのは、やっぱりずっとこの人に想ってる人がいるっていうのが大きい。

過去の恋愛になっている私の今の状況と、ずっと昔から想い続けている現在進行形の彼の状況と、同じ場所にいても微妙に状況が違う。


私は、その人をこの先超えられるのだろうか。

その人を忘れさせることは出来るのだろうか。


「何が不安?」


そして敏感なこんな些細な雰囲気も、この人はこうやって感じ取ってくれる。

だけど、きっと、そんなにすぐ忘れるワケないし、彼自身もそこは比べようがなくて答えが出ないはず。

それを変えたくて今の関係を始めたのだから。

信じて今の自分を見てもらうしかない、か。


「何も心配することないよ。最初に言ったでしょ。オレを知ってくれたらわかるって」


だから今は彼をそんな言葉で困らせるのはやめよう。

年上の私がちゃんと大人にならなきゃ。


「うん。少しずつ樹のことわかっていってるから大丈夫。まさかここまでちゃんと考えてくれてるとは思わなかったけど」

「だからオレはいつでも本気だって言ってるでしょ。今はもう遊びで付き合えるほどオレ案外そんな器用じゃないから」


今までの噂はどこまでがホントか嘘かわからなくて。

彼にまとわりついている噂も、もしかしたら周りが作ってるだけのイメージだけなのかもしれない。


「透子は遊びじゃないから安心して」


そして気になるその言葉をこうやって伝えてくれる。


「遊びだったら許さない」


私を好きにさせた責任はちゃんと取ってもらわないと困る。

私のこの言葉の意味をちゃんとわかっておいて。


「会社で高嶺の花を射止めたこと自体オレすごいのに遊びだなんて言ったら、オレ周りからボコボコにされるわ」

「・・・ん?誰が」

「ん?何が?」


今まったくよくわからないこと言われたような・・・。


「だから高嶺の花って何?誰の話?」

「え?何言ってんの?透子に決まってんじゃん」

「・・・えっ??」


知らない知らない。

そんなの私聞いたことないんですけど。


「え?透子自分で気付いてなかったの?」

「ちっとも」

「オレ入社した時から透子すでに高嶺の花で有名だったよ。透子はずっと社内のマドンナ的存在。いや、ていうか恐れ多くてそれ以上に皆思ってるんじゃない? だから手の出せない高嶺の花」


初耳。

え。いつからそんなことになってんの?


「そんなの全然知らない・・・」

「まぁ透子今は女性が多い部署だし、男どもは周りにいないから特別そういう話も耳に入って来なかったのかもね。まぁでもオレの周りは男ども多いから、常にその話は有名な話だよ」


部署が違うと、同じ会社なのにこうも状況が違うのか。

まぁ涼さんとも秘密の恋愛だったから周りにはバレてなかったし、実際そこからは恋愛からは遠ざかってたからそういう話特に興味なくて耳にも入ってなかったのかもだけど。


「でも今透子の周りに男がいないのはオレにとってはよかったけど」

「今、樹一緒にしてんじゃん」

「オレ以外ってこと。だからそんな高嶺の花の透子にオレ以外チョロチョロされたら困る」

「また大袈裟。特になんともないよ?」


樹が思ってるほど、私特に何も影響ないんだけどな。


「ちょっ、透子自分の人気わかってる!? マジでホント狙ってる男多いから気を付けて」

「何で樹が必死になってんの!? そんなの今までなかったら大丈夫だよ」


ホントに今までこの人以外特にそんなアプローチもされなかったから今までこうやって一人だったことを、この人は気付いてるんだろうか。


「は~。案外透子って天然?」

「いや、言われたことも自分で思ったこともないけど・・・」

「ならかなり鈍感なんだね。社の男どもが透子をどんな目で見てるのか想像しただけで、オレはもう嫌で透子を籠に入れて閉じ込めときたいくらいなんだけど」

「ちょっ、何それ!もう全部大袈裟すぎる!(笑)」


あまりにも大袈裟なことばっかり言われて思わず笑って吹き出してしまう。


「いやいや。透子マジ危機感も自己意識もなさすぎるから。もうちょっと危機感持ってくんない?」

「え~だってそんな実感全然ないからそんなこと言われてもわかんない」


樹、私をどれだけ過大評価してるんだか。


「透子どれだけ狙われてるかわかってないんだもんな~。透子をエロい目で見ていいのはオレだけなのに」

「ちょっ!どさくさに紛れて何言ってんの!?」


またこの人はこんな風に急にビックリすること言って来る。


「えっ、嘘じゃないし。いつでもオレ透子エロい目で見てるの気付いてなかった?」


なんでこの人はサラッと心臓跳ねさせることを言えるのか。


「知らないよ」


とにかく私はこのドキドキを抑えることが先だわ。


「まぁそれは冗談だけど・・いや、冗談でもないけど・・いや、そんなことより、とにかく透子はそれだけの存在なんだから、オレが遊びなワケないってこと」


う~ん。説得力あるようなないような・・・。


「だから本音言うと、社内全員に透子と付き合ったこと大声で自慢したいくらい」


・・・この言葉は今の私にはこれでもかってくらい響く。

涼さんは会社で絶対に二人の関係は秘密にしてた。

だけど樹はそれとは真逆のことを言ってくれる。

何気ないこの人の言葉が一つ一つ私がカギを閉めていた心のドアを開けて行ってくれる。

ずっとトラウマだったドアをこうやって一つずつ開けてくれる。

涼さんが叶えてくれなかったことを樹はきっと叶えてくれる。


「そしたら透子を狙う男もそういう目で見なくなるし、オレとしては安心。だけど透子に迷惑かかるのも嫌だからそれはしないけどね」


でもこうやって私の気持ちを優先してくれる。


「透子きっと社内でそういうの噂されたら仕事やりにくいだろうし。オレは透子守る自信はもちろんあるけど、透子は多分そういうことじゃないだろうから」

「あ~もう。なんでそんな私のことわかってくれるかな~」


そう。だからと言って自慢してほしいワケでもない。

昔の私と今の私では立場が違う。

昔はきっと涼さんとの関係がわかったところで影響ないくらいだったけど。

今は樹との関係が噂されたらきっと仕事はやりにくくなる。

今の仕事はプライドもって責任持ってやっている。

それを無駄なことで邪魔されたくない。

それを樹はちゃんとわかってくれてる。


「当たり前じゃん。透子どれだけ見てきたと思ってるの。オレ透子がカッコよく仕事してる姿憧れだから」

「そう、なんだ」


そっか。

樹が入社した時はすでに私はこの会社にいたワケで、その時からもしかしたら樹は何かしらのカタチで知ってくれてたのかな。

私はその時から樹の目にはどんな風に映っていたんだろう。


「樹と付き合うってなったら、私も女子社員に何言われるかわかんないな~」

「あ~、オレ社内でも人気でモテてるから、誰かのモノになったって知ったら嘆く女子も多いだろうね~」

「何その自信(笑)」

「透子の耳にもそんな話入ってきてたんだ?」


嬉しそうに尋ねられるけど。


「あぁ、うん最近知っただけだけど」


ごめん。プロジェクト関わるまでは樹の存在も知らなかったし噂も知らなかった・・・。


「なーんだ。でも今は透子も知ってるんでしょ?」

「うん。あっ、樹の同じ部署のあの最初に対応してくれた女の子も、どう見ても気があるように見えたけど」

「あぁ~アイツはあからさまだからね。オレ、いかにもって感じでアピールしてくる女子はタイプじゃないから」

「へ~。誰でもいいってタイプじゃないんだ」

「それオレ前出会った時も言ったけど、誰でもいいってワケじゃないから」

「そういえばそんなこと言ってたね・・」

「だからまぁ透子がオレとのこと自慢したくなったらいつでも言って♪社内に二人の関係言いふらすから(笑)」

「何それ(笑) 絶対やだ(笑)」


重く感じることをこの人はこうやって軽く明るくしてくれる。

そしてさり気なく気遣ってくれる。

きっとこういうところが人気あるんだろうな。

私ホント今までの樹のこと全然知らないや。

だからこそこれからこの人のこと、もっとちゃんといろんなこと知っていきたい。


「まぁ今はこうやって付き合えてるワケだし、会社でも部署は違うけど、プロジェクトも同じだし。それに毎週会議室で秘密の時間にイチャつけるから、オレは今の所それで我慢しとく」

「イチャつける・・って別に秘密の時間でもないし」

「え~オレはこれからあの時間に、あそこであんなことやこんなことも出来るって楽しみにしてるのに~」

「ちょっとイヤらしい言い方しないでくれる?」

「え~だってイヤらしい想像してるから別によくない?」

「なら余計にダメ!」

「まぁその透子の真面目さもこれからオレが崩していってあげるから大丈夫♪会社でもオレが欲しくてたまらなくしてあげる♪」

「ちょっ、変な言い方しないでよ」

「そういう言い方してるんだから、透子にはちゃんとわかってもらっておかないと」

「何それ知らないよもう」


出会った時はあんなに余裕で樹のことあしらってたのに、今では意識しすぎてこのありさま。

好きになってしまうとこんなに立場弱くなるんだな。


なんて、そんな風に話してると気付いたらもうマンションの前。


「じゃあ、今日はありがと」


お互いのドアの前について家に入る前に、隣の部屋に入ろうとする樹に声を掛ける。


「ん?何が?」

「助けてくれて」

「あぁ。それね。オレがしたくてしたことだから。てか逆にオレは透子にハッキリ二人の関係わかってもらえてよかった」


うん。きっとそうやって自分のことのように考えてくれる人なんだよね。


「このまま透子はわかってなかったらずっとモヤモヤしてたんじゃない?」

「うん。多分そうだと思う・・・」

「だろうね。そのモヤモヤ無くす為ならいくらでも証明してあげるから、ちゃんと言って」

「わかった」

「まぁオレ的にはもっと深くまで関係進めたいから、今すぐそのモヤモヤ無くす為に朝まで一緒に過ごしてもいいんだけど?」


あっ、また悪い顔。


「遠慮しときます」

「そう言うと思った(笑) まぁ今日は要望どおり遠慮しといてあげる。まぁいつか特別な時、楽しみにしといて」

「特別な時?何それ」

「まぁその時が来たらわかるよ。じゃあ、おやすみ」

「うん・・。おやすみ」


そう返事して樹と別れて部屋へ入る。


なんか樹と出会ってからいろんなことが色々起きて知らない自分が見えてくる。


今日、樹のことを好きだと気付いた私は。

これからどうなっていくんだろう。

素直じゃない私に樹がどこまで愛想突かさず付き合ってくれるかはわからないけど。

でも、今回のこの恋愛はお互いちゃんと本気の恋愛にしたい。




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