「望月さ~ん、今日ランチ何にしますー?」
翌日、会社のランチタイム。
三輪ちゃんが彼氏のことで話を聞いてほしいからと一緒することになり食堂へ。
「そうだな~。今日もやっぱり日替わりランチかな~」
「ですよね~。毎回魅力的なメニューでやっぱ選んじゃいますよね~」
「ね~」
結局、いつもお得で栄養あって魅力的なメニューの日替わりランチに決めてテーブルにつく。
「望月さん、毎回彼氏の話聞いてもらっちゃってすいません」
「いやいや、逆に私三輪ちゃんと彼氏くんの話楽しくて聞くの好きなんだよね~」
「え~めちゃありがたいです~。っていうか望月さんいつも的確なアドバイスしてもらえるんで、ホントずっと付き合ってる彼氏さんと上手くいかれてるんだな~って羨ましいです」
んっ?
あっ、そういえば三輪ちゃんには彼氏ずっといるって思われてたんだっけ。
今更、彼氏新しく変わりましたとか言えないしな。
まぁ、まだ樹とは付き合ったばっかだし、そこはまぁ今回も適当に話合わせとくか。
そして三輪ちゃんがまたいつものように彼氏の愚痴を話し始めてたら。
「お疲れ様です」
「あっ!お疲れ様です」
そこで声をかけられた相手に三輪ちゃんが挨拶。
その相手を見ると・・・。
あ、樹。
「隣空いてます?」
えっ、隣?
樹、私いるのわかってて聞いてるよね。
いや、確かに食堂ちょっと混んできたからここは道順的にも座りやすい場所だから別に不自然ではないけども。
でも特に断る理由もないし。
樹わざわざこんな隣に来なくてもさ~。
なんとなく今の周りに隠してる関係で他の人たちの前で会うのはなんか緊張するワケで。
「あっ、空いてます!どうぞ!」
三輪ちゃんがすかさず返事して隣へ促す。
まぁ樹の隣りにはプロジェクトで一緒の樹と同じ部署の高杉くんもいるし、こっちは特に気にしなければいいだけなんだけど。
「お疲れ様です。望月さん向かい大丈夫ですか?」
すると、わざわざ返事をしそこねた私に向かってダイレクトに挨拶をしてくる。
「あっ、お疲れ様です。はい。どうぞ」
そして樹は、三輪ちゃんの隣に並んで座って、私の向かい側になるように座る。
「望月さん。隣失礼しま~す」
そして、私の隣には樹と同じ部署の高杉くんが挨拶しながら座る。
「どうぞ~」
「そっちの2部はプロジェクトのアイデア進んでます?」
新しいプロジェクトで三輪ちゃんとも顔合わせして面識が出来てる樹は、隣から気軽に話しかけてくる。
「色々アイデア出してはいるんですが、検討中のモノも多くて~。でもこっちは望月さんいてくれるんで、もう困ったときは全部アドバイスしてもらって助けてもらってます~」
それに三輪ちゃんも気軽に返答。
「へ~。さすが。じゃあオレも困ったときアドバイスお願いします、望月さん」
だからこの状況とこの距離でピンポイントで絡むのやめて。
また楽しんでるじゃん、この感じにこの表情。
「いやいや。早瀬くんこそ若手エースだし同じリーダーとして頼りにしてます」
さすがに私も言葉的には本音だけど、少し皮肉っぽく作り笑いで返す。
なのに。
「じゃあ、憧れの望月さんにもっと頼りにしてもらえるよう頑張らないと」
更にその上をいく樹。
「やっぱり素敵~」
すると急に三輪ちゃんが呟く。
「ん?三輪ちゃんどした?何が?」
「え~やっぱりリーダー同士お似合い!」
ちょっ、何を言い出すんだ三輪ちゃん!
「だって~ホント二人共うちの会社でもずば抜けた容姿端麗の男性社員と女性社員の代表じゃないですか~。もう二人一緒なだけで絵になるっていうか~」
「あっ、それわかる!オレもこいつの外見も中身も完璧なイケメンぶり腹立つくらいなんだよね~。それに加えて社内の高嶺の花の望月さんと並んでる姿はさすがにちょっと似合いすぎてて、オレでも見てて腹立つの通り越して見惚れることあるもん」
「ですよね~!」
三輪ちゃんが暴走し始めた会話に、なぜか同じように乗っかる高杉くん。
なんかすっごい気まずい雰囲気になってきた。
「まぁ高嶺の花の望月さんと釣り合うのはオレくらいだしな~」
すると、一番調子に乗る樹。
「こういう嫌味なこといってもホントにそうだからムカつくんだよな~こいつ(笑)」
高杉くんももう乗っからなくていいよ~!
もうこういう褒められる感じのは全く慣れない。
「私そんなすごくないから」
思わずいたたまれなくなって自分で否定。
「もう望月さんそういうとこがやっぱ素敵なんですよね~」
ダメだ。三輪ちゃんこういう感じになるとひたすら褒める子だった。
もうここはこの話は広げずおとなしくしておこう。
「でも~望月さんずっとお付き合いされてる彼氏さんとずっとラブラブみたいですし実現しなくてホント残念です~」
!!!!!!!
ちょっと待って三輪ちゃん。
今それ言っちゃうんだ!?
マズい。非常にマズい。
横に樹がいるというのに、この流れなんか嫌な予感がする。
「へ~~~。望月さんってラブラブなずっと付き合ってた彼氏いたんですねー?」
やばい。
この樹の言い方完全に嫌味が入ってる・・・。
「え~、えっと、それは~・・」
思わず即答出来ずにどう誤魔化そうかと、樹の方を気になって見てみると。
あっ。ダメだ。
この樹の目。絶対怒ってる目だ・・・。
すごく何か言いたそうな目してる・・・。
絶対、樹勘違いしてるよね・・・。
だって、それ樹と付き合う前だし、否定するのめんどくさくてそのままにしてただけだしさ~!
まさか三輪ちゃんがこんなタイミングでブッこんでくるなんて思わないじゃ~ん!
三輪ちゃんに悪気はないのもわかってる。
訂正してこなかった私が悪いんだし。
でも、三輪ちゃんこのタイミングでだけは言ってほしくなかった~!
「え~、やっぱ望月さん彼氏さんいるんですね~!だよな~!こんな綺麗な人絶対周りの男放っておかないもんなー!」
いえ、高杉くん。
実際はホントについ最近まで世の男どもにずっと放っておかれてたんです。
っていうか、それ以上もう話広げないでください・・・。
「ホントこんな人独り占め出来る彼氏が羨ましいよなーーー」
あっ、樹、完全に棒読み・・・そして嫌味全開・・・。
あー、これはちゃんと弁解しなきゃだな・・・。
で、その後はというと。
私は三輪ちゃんの会話はまったく耳に入って来ず、適当に相槌を打って返事。
そして樹は、急に無口になって高杉くんに何度も珍しくて心配されるほど。
うーん、なんとなくこれは不機嫌になってるってことだよね・・・。
樹に黙ってそういう存在いるなんて言われたら、やっぱり気に食わないよね・・・。
実際そういう相手もいないことも説明しなきゃだし、結果嘘ついてることになってることもちゃんと謝らないと・・・。
さっさと食べ終わってとりあえず一秒でも早く今はこの場所から逃げ出したい・・・。
すると、携帯にメッセージが届く。
『話ある。今日夜行っていい?』
きたー!早速、樹からメッセージ。
このタイミングってことは、そういうことだよね・・・。
恐る恐るこっそり向かい側の樹を見てみると・・・。
様子を伺っている私だけにわかるように視線をこっちに向けている。
そしていつもの悪魔の微笑みに見えて、今回は完全に目が笑ってないバージョン。
また私はその視線が痛すぎて誰にも気づかれないように自然に目を逸らす。
『わかってるよね?オレが何言いたいか』
あっ、ちょっとこの距離で直接会話せずこのメッセージだけで言われるのもなかなか心臓に悪い。
『承知しております・・・』
とりあえずこのままの感じの雰囲気が続くのはキツイ。
『ご飯食べるよね・・・? 何がいい?』
私はあえて今はまだこのことは触れずにその後にも続けて何気ない言葉でメッセージを送る。
『食う。なんでもいい』
そしてこの樹からのあっけない返事。
『わかった。適当になんか作るね』
『とりあえず今日ちゃんと夜話聞かせて』
あーこれ完全にご飯どっちでもよくて話メインな感じよね。
『了解です』
そしてメッセージを送り合ったあと、一応また樹の方を確認。
すると、一時も目を離さずずっと黙ったまま私を見つめる樹。
・・・視線が・・痛い・・・。
でも視線が合って気まずそうに私がした瞬間。
「じゃあ高杉行こうか」
「あぁ、そうだな。もうこんな時間か」
私から視線を外して樹が高杉くんに声をかける。
その瞬間、今度は少しチクッとする胸の痛み。
「じゃあ、望月さん、”また”」
席を立って直接声をかける樹。
目が笑ってない不自然な表情と、”また”という言葉を強調しながら。
「あ、はい。また・・・」
その言葉に変わらず嘘の笑顔を張り付ける樹。
さすが元営業マン。
嘘の笑顔慣れてらっしゃる・・・。
「三輪さんもまた」
「はい!また!」
ほら。三輪ちゃんには普通の笑顔。
きっと他の人には同じ笑顔に見えても、最近樹のいろんな表情を見てる私は、その違いがわかってしまう。
でもここまでの仲になるまではどんなことでも余裕で、特にこんなことも気にするようなタイプだと思わなかったから、なんか意外。
ちょっと樹のことわかるようになったのは嬉しいけど・・・。
でもこんな微妙なことは知らない方が楽だったような気がする・・・。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!