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もちもち
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葵唯
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「別れたほうがいい」
その言葉を聞いた瞬間。
心音は何も言えなくなった。
医師からも。
周囲の人からも。
同じことを言われた。
「離れれば、進行が止まる可能性があるかもしれない」
「今ならまだ――」
「らぴすのためにも、心音のためにも……」
でも。
「……嫌だ」
心音は小さく呟いた。
「俺は、らぴすと離れたくない」
その夜。
二人で話をした。
「心音」
「うん」
「俺、考えたんやけど」
「何?」
「別れない」
「……」
「たとえ心音が何も見えんようになっても」
Lapisは心音の手を握った。
「俺がずっと隣におる」
「……怖くないの?」
「怖いよ」
意外な答えだった。
「めちゃくちゃ怖い」
Lapisの声が少し震える。
「心音の目から色が消えていくのを見るのも」
「……」
「いつか俺の顔すら見えんようになるかもしれへんって考えるのも」
「らぴす……」
「怖い」
それでも。
Lapisは手を離さなかった。
「でも、心音を一人にするほうが嫌や」
心音の目から涙が落ちた。
「……俺も」
「うん」
「俺も、らぴすといたい」
二人は約束した。
最後まで一緒にいる。
たとえ光を失っても。
たとえ世界から色が消えても。
それでも、隣にいる。
――けれど。
二人はまだ気づいていなかった。
その「離れたくない」という気持ちこそが、病気を進行させていることに。
そして数日後。
心音の視界は、ほとんどモノクロになった。
Lapisの顔も。
街の景色も。
空の色も。
ほとんど分からない。
医師から告げられた。
「……明日が、最後になる可能性があります」
その夜。
二人は静かに手を繋いでいた。
「明日、どこ行きたい?」
Lapisが聞く。
心音は少し考えてから答えた。
「……最初に会った場所」
「……分かった」
二人にとって大切な場所。
最後になるかもしれない場所。
そこで二人は、
最後のデートをすることにした。
コメント
5件
目が見えなくなっても一緒にいる選択を取るのめちゃいいなぁ