テラーノベル
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千歳と佳苗が帰った後、リビングに静かな空気が流れていた。
つい先ほどまでの騒がしかった部屋は、今ではどこか穏やかな余韻だけを残していた。
そんな中銚子は、ソファへゆっくり腰を下ろすと、小さく息をつき、静かに口を開き自らの過去を語り始める。
「私はね?」
全員の視線が自然と銚子へ集まる。
「学生の頃から多くの霊気を有していた事で
霊が視える子供だったのよ、今の信愛みたいにね」
銚子は遠い昔を思い出すように微笑みながら続ける。
「でもそれは周りには受け入れてもらえなくてね」
笑顔は少しずつ苦笑へと変わる。
「いじめを受けてたの」
部屋の空気が一気に重くなる。
茜は思わず耳を押さえ、小さく呟いた。
(なんか・・耳が痛い)
誰もその言葉を笑わなかった。
銚子は穏やかな声のまま話を続ける。
「でも母、つまり信愛のおばあちゃんね」
懐かしそうな表情を浮かべる。
「母からは常に
『その力は神から与えられた力だから
その力を私利私欲の為に使うんじゃなくて
世のため人のために使いなさい』
って、そう教わってたの」
忍は感心したように頷く。
「立派な考え方ですね」
「ええ・・・」
しかし、その笑みはどこか儚かった。
「私は視たくて霊を視てるわけじゃないのに
なんで私ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないの?
って自分の霊感を恨んだ日もあったから
母の言葉は私に勇気を与えてくれたの」
その言葉には、亡き母への深い感謝が滲んでいた。
さくらが静かに手を挙げる。
「そのおばあちゃんは、有名な霊媒師だったんですよね?」
銚子は首を横に振る。
「そんなに物凄く有名って訳じゃなかったけど
知る人ぞ知るって霊媒師だったわ」
そして少し照れくさそうに笑う。
「その母の存在がキッカケだったの
未解決事件調査隊へ出演したのもね」
全員が静かに頷く。
「それから私は高校を卒業してから
すぐに番組へ出演したわ」
当時を思い返すように天井を見上げる。
「私の力を人の為に使えるんなら本望だって思ったから」
しかし、すぐに苦笑を浮かべた。
「まぁ、最初の頃は『ぽっと出の小娘に
何が出来るんだ!』って意見もあったけどね」
銚子は一拍置いて続ける。
「でも千里眼の力が本物って分かったから
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
周りの目は変わっていったわ」
茜は興味津々な様子で身を乗り出した。
「千里眼って詳しくはどんな力なんですか?」
銚子は少し考えてから答える。
「分かり易く言うなら
『サイコメトリー』に近いって感じかしら」
「なるほど」
焔垂は納得したように頷く。
一方、さくらは首を傾げた。
「サイコ・・・なに?」
その反応に焔垂が苦笑する。
「サイコメトリー」
そう言って説明を始めた。
「物や人物に触れる事で、そこに刻まれた
過去の出来事とか、記憶の断片みたいな
残留思念を読み取る特殊能力の事だよ」
朝陽は「あっ」と声を上げる。
「昔漫画で読んだ事あります」
銚子は穏やかな口調のまま説明を続けた。
「サイコメトリーと違う点は未来視が出来ることね」
さくらは目を丸くする。
「未来視?」
銚子は頷いた。
「サイコメトリーは、今、八乙女くんが
言った様に残留思念を読み取る力なんだけど
千里眼はさらにその残留思念から、高確率な
未来を予期して映像として視る事ができるの」
さくらは腕を組みながら納得したように呟く。
「上位互換って感じか」
茜もイメージを膨らませる。
「生きてる人間の魂に刻まれた記憶を見てるみたいな?」
銚子は微笑んだ。
「そう、まさにそんな感じね」
銚子は微笑んだが、そこで表情が少しだけ曇った。
「でもこの力を使うと、反動で物凄い
倦怠感と吐き気に襲われるの」
その言葉に部屋の空気が少し張り詰める。
「脳が情報量の多さに処理落ち
寸前のサインを出してるみたいな感じね」
焔垂は神妙な面持ちで呟いた。
「副作用があるんですね」
「ええ・・・」
銚子は静かに目を伏せる。
「酷い時は意識が朦朧とする事もあったわ」
焔垂は短く息を吐く。
「そっか・・・」
少し考え込んだ後、口を開いた。
「サイコメトリーは残留思念を視たり
読んだりするだけだけど、千里眼はそれから
更に時間軸を拡張して視るから、脳への
負荷が桁違いって感じなんですね」
朝陽が手を挙げる。
「パソコンの熱暴走みたいな感じですか?」
銚子は思わず微笑んだ。
「その通り」
その一言に、朝陽は嬉しそうに頷く。
銚子はふっと遠くを見るような目になった。
「だから番組が終わると、いつもキツくてね」
少し間を置き、懐かしむように続ける。
「そんな時、いつも私を気にかけてくれてたのが──」
その声はどこか優しかった。
「夫だったの・・・」
その瞬間、信愛が勢いよく顔を上げる。
「え? お、お父さん!?」
突然父の話題が出たことに、信愛は目を大きく見開いた。
さくらも不思議そうに首を傾げる。
「なんでお父さんが?」
すると、それまで静かに聞いていた多摩雄が照れくさそうに頭を掻いた。
「実は俺はな──」
少し昔を思い出すように笑う。
「当時、未解決事件調査隊で
ADやってたんだよ」
「本当ですか!?」
忍が思わず身を乗り出す。
多摩雄は照れ笑いを浮かべながら頷いた。
「ええ・・・」
銚子も優しく微笑む。
「夫とはそこで出会ったのよ」
信愛は驚きを隠せない様子だった。
「知らなかった」
茜は安堵したように笑う。
「お父さんの名前が出てきたからビックリ
しちゃったけど、それが出会いだったんだ」
忍はしみじみと目を細める。
「あの頃の銚子は、本当に辛そうでな・・・」
その言葉には、当時を知る者だけが持つ重みが込められていた。
コメント
1件
銚子さんの過去が静かに語られる回、すごく沁みました……。「見たくて見えてるわけじゃないのに」って言葉、重いですね。でもお母様の「人のために使いなさい」という教えが彼女の支えになっていたんだなあと。千里眼の副作用の描写も具体的で、ただのスーパーパワーじゃないリアルさがあって好きです。そして多摩雄さんがADだったという意外な繋がり! あの頃の銚子さんを知る忍さんの口調にも重みがあって、じんわり来ました。お二人の馴れ初め、もっと知りたくなりました🌷