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〜如月風香side〜
「ごちそうさまでした。」
食器を流しに下げ、夕食後の薬を麦茶で流し込む。
「今日薬飲むの早いね。」
「この後学年委員のみんなと作業通話するんだ。長くなりそうだから、消化される前に飲んでおこうかなって。」
「また推し活ってやつ?もうやめときなよ。」
心配そうに、また呆れたように言うお母さんは、私のことを何も分かってない。
「私にもちゃんと考えがあってやってるの。あんまり口挟まないでよ。」
いつもより強い力でリビングのドアを閉め、自分の部屋へと向かった。
『風香〜!遅かったじゃん!』
元気な声で出迎えてくれる翠ちゃんに軽く謝ってから、咳払いをして声の調子をととのえる。
「それじゃ、定期テスト対策会議を始めます。」
『じゃあまずは僕から。今画面共有するから待ってね。』
我らがブレインの東雲くんが共有してくれた画面には、”二学期期末テストの課題について”と書いてあった。
『まずは、二組と三組の学級閉鎖は大きいと思うな。それにより全教科遅れたし、理科は実験も省略されちゃったし。』
『それな。今回は実技も多めなのに、全然出来なかったしよ。』
『あと、国語は文法が始まったよね。文節が苦手って子が多い印象かな。』
「確かに。っていうか、私も苦手だし……。」
『柊先生のテストの平均点低くするとか、大罪だからね!中間みたいなことにならないようにしないと!』
『出たよ、神桜の盲目オタク。俺はもし飛鷹先生のテストが低かったら、先生に問題があるって思うけどな。』
『だからって一学期の期末が悪かったとき、毎日匿名で家に手紙送ったのは、厄介オタクすぎるんじゃない?』
『でもあの後、教え方上手くなったと思わねえ?俺はコーチみたいなもんなんだよ。』
『まあまあ、二人とも落ち着いて……。』
翠ちゃんと暁くんは、推し方の相違でよく揉める。
私はその様子を見て微笑ましいなと思っているけど、東雲くんは本当に心配みたいで毎回おろおろとしている。
『うるせえな東雲。お前はどっちに付くんだよ!』
『え、ぼ、僕?僕は、えーっと、その……。』
『しのっちはこっちでしょ!厄介オタクムーブしないで、あたしみたいに慎ましく推し活してる側だもん。』
『お前が慎ましいわけねえだろ。それに、東雲は俺と同じで、中身を研究するタイプだよ。』
「こら、脱線しすぎ。話戻すよ。どうすれば学年の平均が上がるか、アイデアある人いる?」
しばらく話していると、急に強烈な不快感が体を襲ってきた。
「ごめん、ちょっと抜ける。すぐ戻るね。」
きっと誰かが返事をしてくれたのだろうが、それを聞く余裕もなくトイレに駆け込む。
苦しい、気持ち悪い。
「ぐぅ、ぐゔぉぇっ。かはっ、はぁ、はぁ。」
さっき食べた胃の中のものが、すごい勢いで逆流してくる。
口の中に手を突っ込み、もういっそ全て出してやろうと喉奥を開く。
(こんな推し活なんて誤魔化し、いつか駄目になるな。)