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「祐誠さん、また結婚記念日が巡ってきたね」
「ああ。まさか正孝まで同じ日に式を挙げるなんて……」
「本当に、昨日は良い式だったね」
私達は、3人を見送ってから近くの散歩道をゆっくりと歩いた。
たまに時間ができたらこうして2人で歩く。
「雫。俺、正孝に社長を譲ろうと思う」
祐誠さんは突然言った。
「決めたんだね。そっか……」
「ああ。父さんも年だし、俺が正孝を支えていく。社長を退いてもまだまだゆっくりはできないけど……」
「そうだね。祐誠さん、これからも正孝を守ってね」
「ああ、必ず。でも、あいつなら大丈夫。俺より根性がある。それに、奥さんをもらって、ますます強くなるだろう。俺がそうだったように。君が側にいてくれたから、俺はここまで頑張れた」
「そんな……」
私の支えは微々たるもの……
「本当だ。雫がいなければとっくに折れてた。だから正孝も……もう大丈夫。社長を十分任せられる」
「祐誠さん、本当に……今までお仕事頑張ってくれてありがとう。走り抜いてきたあなたを……私はいつも尊敬してた。私、ずっとあなたに守られてたよ。これからも、ずっと守ってほしい。一緒にいたいよ」
「当たり前だ。どんなことがあっても守るって約束しただろ。たとえ俺が死んだとしても、それでも守る。絶対に雫を守り抜く」
その言葉に胸がキュンとする。
「ダメだよ! 死んだら守れないよ。そんなこと言わないで……嫌だよ」
私は、祐誠さんの腕にしがみついた。
この人がいなくなるなんて……
絶対に……考えたくない。
「昔は仕事しか見えなくて、俺はこんな幸せな人生を送れるなんて想像もしてなかった。何もかも雫のおかげだ。これからもずっと一緒。俺は出会った時から雫だけを見てきた。ただ1人、君だけを……」
祐誠さん……
あなたは、今までこんな私を一途に愛してくれた。
でもね、私だって同じだよ。
ずっとあなただけを想ってたんだから。
私達は家に戻り、一息ついた。
「祐誠さん、これ食べましょ」
「いいね。クロワッサンとイチゴジャム」
「良いイチゴが手に入ったの。甘酸っぱくて美味しいから」
私は焼きたてのクロワッサンにイチゴジャムを付けて食べる祐誠さんの顔を見てた。
1口頬張る。
「うん、美味しい。雫のクロワッサンとイチゴジャムは最高だな」
嬉しい……
毎回この言葉が聞きたくて、クロワッサンを焼いてしまう。
今はパンが大好きになった祐誠さん。
本当に美味しそうに食べてくれることが幸せ過ぎる。
「正孝、今日はうちで食べていくでしょ?」
「うん、お願い。ありがとう」
「お義母さん、私、お手伝いします」
「真美さん、ありがとう。メニューは何にしようかなぁ」
正孝のお嫁さんと、こんな風にキッチンに立てるなんて夢みたい。
何だか娘ができたみたいでワクワクする。