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『あーダルかったわ』
上にはしばらくは軌道上 またこの新型を見ることもあるじゃん
なーんて言ったら迅さんと相談して考えるだって
そんなこんなで上から無事解放された私
けど暇だなぁ
『ランク戦もなぁ…………あ、今日は家に帰る日か!』
いつもボーダーの本部で寝泊まりしているが、今日は家に荷物を取りに行く兼家族で過ごす日
まぁ、帰っても家族で過ごすなんて建前だけど
家はいても面白いことないし日に日に本部に私の荷物が増えていることに、流石の私でも申し訳ないとは感じている
『隊室からカバン取って帰ろっとー』
そうして隊室へと足を運んだ
*********************
家に帰ってきたのは夕方の6時過ぎ
『……ただいまー』
いつ来ても慣れない匂いに包まれる
『おかーさ……』
リビングの扉を開けようとしただけ
なぜか体が固まって聞いてしまった
母「大会で優勝なんてホント美妃すごいわー!」
楽しげに妹に話かける母
妹「んーまぁ一応助っ人だし」
母「ほらたくさんシュート決めてたでしょ!」
妹「あーね」
母「ホンっト、アレとは大違いだわ!偉いわね」
アレとはきっと私のことなんだろう
好きで産んだ子じゃないから
妹「………そういえばおねーちゃん帰ってくる日だね」
一呼吸相手から話し始める
母「あぁ、結局帰ってくるのかしらね」
自分から話を出したのに、私が話の中心となると先ほどとは打って変わった雰囲気の母
妹「帰ってこなかったのは三ヶ月前の時だけだよ?そろそろ帰ってくる時間じゃない?」
母「どーだかあんな気持ち悪いヤツ見たくもない」
分かっているから
深呼吸をして扉を開ける
『たっだいまー!』
母「……話聞いてた」
『え?なんの話ー?あ!もしかしてミキが大会で優勝したって話?』
母「えぇ!そうなの!ミキったら助っ人なのに大活躍なの!」
妹の話をすると自分のことかのようにまた幸せそうに語り始める。
『中等部のバスケ部がさ試合見てたらしいんだけどミキのことバリ褒めてて!』
母「あら!そうなの!?」
『そーそー!中等部のバスケ部って結構強いからガチだと思うよ!』
母「よかったわね!次も期待してるわ!」
妹「あー、うん」
先ほどからスマホをずっと触っている。
そんな妹を変だとも思っていない母。
母「あらもうこんな時間!美妃、予約してたディナー行く時間よ!」
妹「ふぁーい」
いまいちはっきりしない声で妹が返事をしてリビングを出ていく
『……ディナー予約してたんだー楽しんできてね!』
母「……えぇ、美妃の優勝記念にね。そういえば早く取りにきた荷物準備しなさい」
『………分かった』
こうなることなんとなく知ってたけど
久しぶりに入る埃が舞った自分の部屋
といっても部屋というには狭い
今この部屋にあるのはクローゼット、机、大きいビーズクッションとその他もろもろ
元々この家具しかなかったし、ほとんどの荷物は本部に移したし?
ここに残ってるのはまぁ必要かも?ってやつ
『お、あった〜!』
机の奥からテストの過去問を取り出す
栞たちに過去問がないかと言われていたから
『他は〜………あ、』
目に止まったのはオオカミのぬいぐるみ
誰がくれたかもいつからあるかも覚えていない
『一緒に行こうか』
なにも覚えていない
けどこの子はお気に入り
始めに持っていこうとしたけどミキが嫌だと言って置いて言ってそのままだった
ま、小学生だったししゃーなし?
『これでいっか〜』
埃だらけの部屋をすぐ出た
『……あ、』
部屋を出た瞬間、扉が開く音がした
カタカタと昔作ったネームプレートが揺れて
扉の隙間から韓国系の部屋が見える
妹「あ、おね……ちゃん」
『その服似合ってるね』
妹の黒の薔薇のレースがメインのドレスを上から下まで見て言う
妹「おねぇちゃんは行かないの……?」
妹は母といた時の話し方とは随分変わり、年幼く見える
“行かないの”とは私が制服姿で部屋から出てきたからだろう
『え?だってミキの優勝記念でしょ?』
妹「……でも、お母さんおねぇちゃんが帰ってくる日ねって」
『へぇーそうなんだ』
母は私が帰ってくる日に出掛ければ私はいないと同然だからそうしたのだろう
『楽しんできな?私もう行くから』
そう言って歩き出そうときた時
ミキに制服の袖を掴まれた
ミキ「………もう期待されたくない。羨ましい」
『そう、私も。2人ともないものねだりだね』
ミキ「お姉ちゃんは私のこと嫌い?」
『………嫌いもなにも、ミキもお母さんもお父さんのこともなぁーんも知らないからよくわかんない〜』
ミキ「じゃあ家にお金入れてるのは……なんで」
『別に、なんとなくかな?』
言えるわけない
こんなドロドロとした汚い本音を
『もーいい?まだ話したいことあるならLINEして』
妹はまだ何かあるようだっけけど、そんなの無視して階段を降りた
『おかーさん、私行くね』
母「………少し待って」
『……え?』
この目、この話し方
お母さんは昔からこうやって私を呼び止めた
その時は大体___
『お、お母さん?』
母「随分といいブレスレットね」
『えと、これは……』
母は私の左手首を掴んで言った
母「一体どこで買ったの?」
『……ボーダーのみんなに、誕生日プレゼントでもらったやつです。…あ、の』
ドサッと音がして手に持っていたカバンが自然に落ちた
だんだんと変な汗が流れてくる感覚がする
母「そうなの、いい仲間を持ったじゃない」
『う、うん』
ギチギチと私の腕を掴む力が強くなる
痛い
痛い、痛い
やだやめてお願い
お母さんは昔からこうやって私を呼び止める時は
大体、気に入らないことがあって私に暴力を振るう時だ
母「いいなお前は。なぁ!なんでお前だけいい思いしてんだよ!! 」
こう耳の奥まで響くこの声は
もう聞くことはないと思っていたのに
なんで
怖い
ただ怖い
喉が締め付けられたように
声が出なくて
視界が滲んで歪んで
ミキ「お母さん……?」
ミキの声がして今まで夢を見ていたかのよう
スッと現実に戻った
私はすぐに手を引っ込めた
お母さんは私から手を離してミキに駆け寄った
ミキ「お母さん、い、今」
母「ち、違うのよ美妃?少し話をしてただけで……そうよね?」
『……ぅん、あー私、もう行くね……!』
床に落ちたカバンを急いで持ち、
逃げるように家を出た
カバンを持った手は暗くても分かるほど跡がついてた