『ハァ、ハァッ……』
誰もいない路地裏
まだ心臓がドキドキしてて腕も痛い
思わず地面にしゃがみ込む
『なんでこれに……』
左手首につけたブレスレットを見つめる
『う”っ……ぇ、』
体中気持ち悪い
頭が痛い
寒気と暑気が同時くる
『私、こんなんじゃないんだけどな』
違う
私は元からこんなヤツだったのを隠していたのかも
『どーしよっかな』
こんなこと分かっていても
頭がぼーっとして考えられない
何もしたくない
私はカバンの中からぬいぐるみを出す
『ごめんねカバンの中詰め込んで』
この子を胸に抱きながらスマホを探す
あれ
『ない、どこに……』
もし、家だったのなら
『どうしよ……』
今なら家に戻っても2人ともいないよね
きっといないはず
分かってる
わかってるよ
「やはりここにいたか」
『え、』
ふと上から声が降ってきた
上を向くと
二宮さんに望、来馬さんがいた
二宮「道端に落ちていたぞ」
『私のスマホ!』
二宮さんは私が手を伸ばすとその手にスマホを渡してくれた
『ありがとうございます!』
加古「ちょうど良かったわ、堤が来なくなって1人いないのよ〜私の家くるわよね?」
『……チャーハン作るの?』
加古「まぁそんなところかしら」
そういやつつみんって望のチャーハンでお亡くなりなってるよね
二宮「無理にコイツに付き合う義理はないぞ」
加古「あら、どういうことかしら?」
二宮「行きたがってないと言っているんだ」
加古「それはサナが言うことよ?」
『いく』
二宮「……は?」
『ヒマだし行くー……だめ?』
来馬「サナちゃん来てくれるの?うれしぃなぁ」
『遊ぶ!めっちゃ遊ぶ!』
少しだけ
楽しいとか
思っちゃった
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『おっじゃましまーす!』
望の家に入るといつものいい香りがする
『おーやっぱ綺麗!』
二宮「太刀川隊が汚すぎるだけだ」
『……あー急に耳が悪くなっちゃったー』
来馬「まぁまぁ」
加古「早く座ってちょうだい」
『うぃー』
通されたリビングは白とベージュで統一されてる
2つあるソファのうち窓に近いソファに座る
隣には来馬さん、もう1つのソファにはにのみゃーが座った
来馬「サナちゃん、今日は何時まで大丈夫なの?」
『今日はね〜何時でも大丈夫ー!オールする!』
二宮「補導されるぞ」
『だいじょーぶだって〜私六穎館の生徒だし?補導されてもボーダーって言えばなんとかなったし』
二宮「………やったことあるんだな」
『そんときはマジだったし』
加古「まぁ二宮くんのしょうもない説教はどうでもよくて 」
『んぐっ……ふ』
二宮「しょうもないだと?」
望が紅茶を運んできた
いつも出してくれるりんごと紅茶の香りが漂う
加古「さて本題に入りましょ」
『モグモグ……ゴクン………本題?』
頬張っているりんごを飲み込んで聞くとこう答えた
加古「たまには相談会でもいいじゃない?その腕」
『!?……え、とこれは』
望は跡がついた左手首を指した
『……ちょっと、あって大したことじゃないけど』
左の手首を右手で持つ
加古「あなたがなにかあったとき、だいたい左手を触っているわ」
『んっふふっ!よくみてんね!』
思わず笑みが溢れる
『ひっー………ふぅ……』
二宮「お前、いつも急に笑い出す癖あるな」
『んーんーありがとありがと』
二宮「褒めてない」
『………このブレスレット、お母さん随分と気に入ったみたい』
加古「私たちがあげたやつね。……二宮くんも」
『デザインいいし付けてたんだよ。……そしたら腕掴まれちゃってね。けどなんでなんだろ』
来馬「……?待って、サナちゃんそれちょっと見せてくれない?」
『?どうぞ』
来馬さんが私のブレスレットに手を触れる
来馬「これ……すごいブランド物じゃない?本物の宝石がたくさん使われてるもので……」
『そうなの?望、にのみゃー?』
加古「えぇ、せっかくだし良いものあげたくて……」
『全員がお金出し合ったって言ってたけどさ……』
二宮「値段なんて関係ないだろ」
来馬「二宮くん、プレゼントに関してはすごくかっこいいこと言ってるけど、それでサナちゃんのお母さんも反応したんじゃないかな?」
『……なるほど?確かに転売したらすごい額いきそーお母さんならやりそー 』
加古「今お母様は家かしら?」
『ん?いや今日はミキ……妹とディナー行ってるからいないよ?』
加古「……あら、残念」
二宮「頭おかしいんじゃないかその母親」
『………けど私からしたらそれが普通だっしさー?いまいち分かんないや』
二宮「…………そうか」
部屋に沈黙が流れる
ピロリピロリンピロリ
私が紅茶を一飲みしたところで沈黙は破られた
『電話、ミキから』
カップをテーブルに置いて電話に出る
『もしもし、ミキ?』
母〈ちょっと!アンタ美妃になに吹き込んだの!?〉
電話からしたのは母の声だった
『なんのこと?』
母〈アンタが出てってからミキが変なこと言い出すのよ!〉
『…ぅ”うん、例えばなんて言ってたの?』
またこの感じ
頭が痛くて、冷や汗が流れているのがわかる
母〈”私もお姉ちゃんみたいに自由になりたい”とか”お姉ちゃんをもう殴らないで”とか!急に言い出したのよ!〉
『……え、?』
ミキがそんなことを言うなんて思ってもいなかった
心のどこかで思ってはいるかもとは感じていた
けど、”もう殴らないで”か
やっぱいつも見られてたんだろうな
『私は特に何も言ってないよ』
母〈じゃあなんで急に言い出したのよ!アンタがなんか言ったのに決まってる!アンタに汚染されたんだ!〉
『そんなこと言われても私にも分からないし』
母〈やっぱあのときに捨てとけば良かった………っ、〉
『………』
“あのとき”とはきっと……