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#恋愛
ばたっちゅ
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meyu0530
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「本当に申し訳なかった……」
「社長、もう大丈夫ですから。顔を上げてください……」
緋真の手術のあと、しばらくして両親と共に椹沢家に出向いた。病院にも行ったけれど、両親の気持ちはそれでは収まらなかった。もちろん俺自身も。
緋真の両親はとても辛かっただろうが、職業上の立場からなのか、子供のせいだとわかっているからなのか、俺の両親を決して責めることはしなかった。今考えれば、治療費だって相当な額を払っていた。それでも、お金を払えば済む話でも、謝って済む話でもなかった。だから俺にできることは、“責任をとる”ことだと思ったのだ。
「……あの」
重々しい空気の中、勇気を出して謝罪以外の言葉を切り出す。
その場にいる大人たちの視線を集めたあとで、その場で深く頭を下げた。
「おれが責任をとります」
「え……?」
「おれがすごい医者になって、絶対に火傷の痕を治します。それでも治らなかったら……緋真ちゃんと結婚させてください」
七歳にして、一世一代の覚悟を決めた。もう、それしかないと思ったのだ。
俺は本気だったのだ。それなのに――
返ってきた言葉はこらえきれないといった笑い声で、一気にその場が和んでしまった。
「伊織くん、顔上げて」
緋真の父の、優しい声色につられて顔を上げる。するとやはり緋真の両親は穏やかな笑みを浮かべていて、どうして笑われているのか理解ができなかった。
「ありがとう。緋真のためにそこまで言ってくれて。でも、責任をとるなんて言わなくていい」
「そんな……おれ、本気で……」
「わかってるよ。正直緋真のことはすごく残念だけど、伊織くんだけが悪いわけじゃない。だからそこまで負い目に感じる必要はないよ」
緋真の両親も、心苦しい気持ちでいっぱいだったはずだ。最愛の娘が、ひどい傷を負ってしまったのだから。しかしながら今回の事故は、リスク管理がまだできない子供が招いたもの。二人が会場から抜け出したことに気が付けなかった自分たちにも否があるのだと、わかりやすくかみ砕きながら説明してくれた。
緋真がこれから何十年もコンプレックスを抱えて生きていくということは、俺も罪の意識を背負って生きていくことを意味する。緋真の両親としては、俺にそんな重い責任を感じさせたくなかったのだ。
「お互いに、二度と同じ事故を起こさないように気を付けよう。もう誰も傷つかないように、ね?」
それでも納得がいかない俺を、緋真の父が何度も説得する。そこまで言われてしまえば何も言えず、渋々と頷いた。
「……わかりました。それなら、せめて緋真ちゃんに会わせてくれませんか? ちゃんと謝りたいんです」
事故以来、緋真とは顔を合わせていない。緋真がすぐに病院へ運ばれ、入院となったからだ。けれど、俺たちが会えない理由は、それだけじゃなかった。
「そうさせてあげたいんだけど……緋真がね、事故前後のことをあまりよく覚えてないみたいで」
「え……? 記憶喪失ってことですか?」
意味が理解できず、つい最近読んだ小説で知ったばかりの言葉を口に出す。
「そこまで大げさなものじゃないよ。今はまだ混乱してるみたいなんだ。だから、また落ち着いたら会ってやってくれないかな」
「……はい」
きっと事故のショックで混乱しているのだろう。落ち着いたら、直接謝ろう。
そう思っていたが、待てど暮らせど緋真に会える機会はやってこなかった。緋真の記憶が戻らなかったのか、それとも緋真の両親が二人を会わせたくなかったのか――今でも本当の理由はわからないが、おそらく前者だった。実際にお見合いで緋真に再会したとき、彼女は俺のことなどまったく覚えていなかったのだから。
それに、もし緋真の両親が俺を彼女に会わせたくなければ、今回の縁談だって早々に断られていたはずだ。
いつかは打ち明けなきゃいけないのだろうか……。
緋真にすべてを打ち明けたい気持ちと、話して混乱させたくない気持ちが交差する。
それにきっと緋真が真実を知ったら、この結婚に負い目を感じてしまうはず。それだけは避けたかった。
確かに最初は責任感からだった。七歳で医師を志し、熱傷を治療する診療科について調べ始めた。そして緋真の治療を担当した医師――当時現役で形成外科医として勤めていた白鷹院長の存在を知ったのだ。
自分は緋真の無事を祈ることしかできない無力な子供だった俺には、治療の現場に居合わせたわけでもないのに、白鷹院長は緋真を救ったヒーローだと思っていたのだろう。
調べていくうちに、東梨医科大学病院が形成外科に強いことを知り、研究環境も整っているとなれば迷うことはなかった。
結局、途中でどんなに勉強しても凄腕の医師になったとしても、治せない瘢痕があることを知ったのだが。
それでも決して諦めなかった。たとえ緋真自身を救えなくとも、彼女のようにハンデを負う人を減らしたい――その一心で医師になったのだ。
もし緋真がいなかったら、俺は今頃どうしてたのだろうか。
両親が決めたレールの上を、のらりくらりと歩いていたかもしれない。その人生もアリではあるのだが、何かを目標に真剣に努力をしたことは、自分の人生の中でも宝物のような時間だった。
もちろん原動力となったのは緋真の存在で。もし彼女が三十まで誰とも結婚をしていなかったら、父親に頼んで見合いをしようと心に決めていたのだ。帰国のタイミングもあり、一年早まったけれど。
ちなみに緋真の両親は驚き戸惑っていたようだが、責任感からだけではないと真剣な気持ちを伝えて縁談を受け入れてもらった。
それで……直接会ったらまさか一目惚れするなんてな。
幼いころに妖精だと思った彼女は、控えめな色香溢れる女性へと成長していた。本人はコンプレックスのせいか随分と自分に自信がなかったようだが、彼女は美しかった。薄化粧である故の透明感は、元の作りが良くなければ決して出せないものだ。
二十九歳の緋真に再会し、心惹かれたあとは一瞬だった。緋真の何事にも真っ直ぐで一生懸命な性格、周りを気にしすぎる優しさ、照れながらも気持ちを伝えてくれる素直さ――正直、事故のことがなくても、結婚したいと思うほど魅力的な女性だったのだ。ベタなことを言えば、胃袋を掴まれたことも付け加えておく。
いつかは緋真に話したほうがいいとは思っているが、無理に思い出させる必要もない。
そして願わくば、もう少しだけ時間がほしい。彼女がこの結婚を負い目に感じてしまわないように、真実を知ったとしても疑いの余地もないくらい愛を注がなければならないのだから――。
コメント
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読んだよ〜〜〜!!😭💕 伊織side、もう切なすぎるでしょ……! 七歳で「結婚させてください」って言う張本人、本気すぎて泣ける😢💔 しかも責任感から始まったのに関わらず、再会して一目惚れしちゃう流れが王道すぎて萌え転がったわ……!!「胃袋掴まれた」って所、伊織らしいツッコミ効いててニヤけた🤭💖 緋真ちゃんにすべてを話すか悩む気持ち、すごくわかるよ。負い目に感じてほしくないって思うほど愛が重くて尊い……! このバランスが絶妙で、続きが待ちきれないよ〜!! 寧子先生、素敵な物語ありがとうございます🌸✨