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―迂闊だった。
僕としたことが、この程度で折れてしまってはいけないというのに、 こんなになるだなんて
想像もできなかった。
どうしてこの程度でこんなにも醜く人や自分に甘える『自分』に負けてしまうのだろうか。
他人の感情や今の状態、痛み、それだけで終わらず最悪な事に自分の感情や今の状態さえもわからないそんな冷酷な人間が幼馴染1人の事故でこんなにも心が空っぽになって一気に崩れるだなんて誰が想像しただろうか。
否、誰も想像しないだろう。なぜなら普段の僕は『完璧で聖人な優等生』なのだから、誰もが皆僕が『完璧で聖人な優等生』だと信じて疑わない、そういえば僕はそう思われる事に重みを感じていたな。
……よく考えれば今のが『例』じゃないか、僕は自分が『完璧で聖人な優等生』なのだと考えられ、頼られ、期待され、そして信頼される事に対して何よりも嫌悪感そして劣等感を抱えていた、そうだ、そうだったな。
僕 は『完璧で聖人な優等生』に見える様に、近くにたまたま存在した『見本』を真似し演じていたにすぎないからだ、僕など『完璧で聖人な優等生』などではない、本当はただたまたま近くにいた『本当』の『完璧で聖人な優等生』であった『見本』に憧れ醜く真似をしそのまま成長しただけの『傀儡』なのだから。
だから劣等感を感じていた。……こんな話はどうでも良い。
僕はノートや携帯のメモなどに自分の気持ちや状態のことを書く事になると何故かおしゃべりになり本題からズレてしまう癖がある。
本当にバカバカしいな。
…そんな事を考えながらいつも通り殺風景でそれは暗い部屋で、さきほど完成した曲の絵を描いていたら外から声が聞こえてきた。
「優、起きてる?あのね、この時間は人が少ないから、その………買い出しに行ってきてくれるとありがたいんだけど…いい?」
買い出し…?なんで急に……、…………あぁ、なるほどこうやって少しずつ外出させて家から出すつもりか。まあそれもいいか、アパートでも探してそこで住めばいい。そうしたら迷惑もかからないよな
「……うん、いいよ。いつもありがとうね。母さん」
適当に微笑んで話を長くされない様にささっと動いた。
「!……うん」
涙ぐんだ声で返事をされた。泣かないでよ母さん。どうせ近いうち死ぬ様な親不孝者のために泣かないでよ。そう思いつつ財布とエコバッグを持って玄関に向かった。できるだけ明るく聞こえる声で
「じゃあ行ってくるよ」
そう言って玄関を開けた、久しぶりの外だ。引きこもってると夕方でもこんなに眩しく感じるのかと風にあたりながら考えていると
「あ」
と言う声が聞こえた、女性の声だ。声の聞こえた方を見ると家の門の前に胡桃色の綺麗な髪を肩甲骨の少し下ほどまで伸ばしたそこそこ可愛い少女がいた。同い年くらいで僕が通ってる学校のと同じ制服を着ている。
「……えっと、どこか行くの?」
少女が何を話したらいいのか迷っているようだが、話しかけてきた。……面倒くさい。確かこの人は同じクラスの白石芽依だったか、プリントを届に来てくれたのか
「えーっと…、確か白石さんだよね。もしかしていつもプリント届けに来てくれてたの貴女だったの?」
思わず質問をしてしまった、話したくも笑いたくもないくせに無理矢理口角が上がっていた。僕の癖だ、我ながら気持ちの悪い癖だと思う。
「え、えぇそうよ。」
意外だ、初めて予想が当たった。全く嬉しくはないが嬉しいな
「やっぱり!いつもありがとうね、助かってるよ」
両手の指を胸の前で合わせて笑う。
もう話すのをやめたい、どこかに行ってくれ
「…ふん、感謝される事じゃないわ。帰るついでだもの。全く苦じゃないのよ。」
あー、素直じゃないタイプの人か。話してるうちに
察してよ
とか言ってきそうで関わりたくないな、早く会話を切り上げたい
「あはは、そうだったんだ。でもやっぱりありがとう。…あ、そういえばさっきの質問に答えられてなかったね、えっと、僕は今からコンビニに行くんだ。買いに行かなきゃいけないものがあってさ」
わかりやすい様に買い物のカバンを持つ手を少し上げて見せた
「へぇ、そうだったのね。……ねぇ」
少し声色が変化した。
なんで学校に来ないの、とか言われたら嫌だな。なんて言うか考えないと
「な、何?」
白石さんが少し近づいてきた。反射的に僕は少し後ずさる。それをみた白石さんが2歩下がった。そして少し首を傾げ、自分の事を指差しながら
「芽依も付いて行っていいかしら」
…は?聞き間違えではないだろうか、今この人は僕について行ってもいいかと聞いたか?同級生とはいえほぼ他人だぞ。しかもこちらは不登校、何を言っているんだこの人は
「…は?付いて…、え?」
思わず心の声が外に漏れてしまったことに気が付きサッと口元を隠した。そして彼女は無表情のまま続けた。
「だって最近は物騒だもの、貴方1人で行かせられないわ。……本当は芽依が寂しいだけだけれど」
……確かに、最近は何かと物騒な事件が多かったな。巻き込まれることは無いだろうけど、完全に無いとは言い切れないからな、万が一僕が巻き込まれたとして、まだ発表できてない曲がまだ残ってる。それは僕の曲を聴いてくれてる人達にとても申し訳がない。だからまぁ、保険だな、
「あ、うん。まあそうだね、じゃあお願いするよ。ありがとう」
笑顔を浮かべる。
……最後に何が言った様な気がしたがまあいい、一応着いてきてもらおう。
「別に貴方のためじゃないもの、気にしなくていいわ」
そう言って彼女は僕の家の門の外側へと足を踏み出した。それに続いて僕も3段位しかない階段を降りて白石さんの後を追った、運動せずに引きこもりっぱなしの僕は少し歩いただけでも10m走を走った後の様に体が重くなっていた。
「ねぇ、そういえば学校からもらったプリントってどうしてるの?やっぱり捨ててるの?」
「ううん、一応貰ったプリントはもらった日に終わらせて後日に溜まった分をまとめて学校に送ってるよ。少しでも成績とか単位取らないとまずいからね。ここが通信制と全日制がその日の気分で選べる学校で助かってるよ。おかげで単位は落としてないし」
これは本心だ、僕が退学にでもなったらせっかく母が一生懸命働いて貯めた大切なお金をドブに捨てる様なものだ。ほぼ女手一つで僕を育ててくれた母にそんな事はできない。
「へぇ、賢いじゃない。てっきりプリントはゴミ箱に捨てて出さずに好きなことばかりして怠けてるのかと」
……酷いな、この人ズバズバ言ってくる…、なんとなく孤立してそうだ
「勉強以外には何をしているの?」
「…うーん、作曲とかかな。曲って言っても歌詞がついてないBGMみたいなやつだけどね。」
「曲?へぇ、投稿はしたりしてるの?」
……静かに歩きたいんだけどな…
「えっと、うん。投稿してるよ」
適当に笑顔を浮かべて言葉を返した。本気で話しかけないでほしい。頭が痛くなってきそうだ。目を見れないのも地味にキツい
「ちなみに名前は聞いちゃダメかしら」
コンビニに着いた。中に入っても話は続いた。頭に入れていたリストが白石さんの話でぶっ飛びそうだ。
「うーん、全然いいんだけど…、字が特殊だし調べたところで偽物がたくさんいるから携帯が無いと教えられないかも」
白石さんが一瞬だけその垂れた綺麗な紅梅色のジト目を少し見開いて驚いた顔をした
「偽物…、それだけ人気って事よね、本当に誰なのよ」
白石さんも買うものがあった様で一旦離れられた。こんなに心臓がバクバクしているのは何ヶ月ぶりだろうか。そう思いつつカゴの中に牛乳や卵、インスタントのものなど頼まれたものと僕自身が必要なものをカゴに入れていき、レジに並んだ。人はそこそこいるが5分くらいは待ちそうだ。4分ほど待っていると案の定僕の番が回ってきた。すると店員が僕の顔を見る限り顔色を変えすぐに顔を隠してマスクとサングラスをしはじめた。…… とても感じが悪かった。会計が終わり外に出ると白石さんが待っていた
「遅かったわね」
腰に手を当てながら言った。空を見ると先ほどまでまだ夕方だったのにもう夜の様になっていた。早く帰らねば母を心配させてしまう
「ごめんね、前の人が大量に買ってて」
そう言って少し早歩きで歩いた。
「もう夜だわ。まだ5時なのにね」
「ね、春は日が落ちるのが早いよね。夏は6時、7時でもまだ明るいのに」
そう言って彼女は歩きながらも空を少し見つめていた、
「夜道は危ないから急がないとね。」
僕がそう言うと白石さんも早歩きで歩きはじめた
「そうね、道がでこぼこしてるから転んだ浅葱くんを踏んだら嫌だものね」
やっぱりズバズバ言ってきた。
「あはは、」
僕は思わず苦笑いを浮かべた。僕の家からコンビニまでは歩いて15分程度のところにある。早歩きで歩いていればあっという間に着く距離だ。そう思いつつ歩いていると僕の家が見えてきた。僕は足を止めて白石さんに話しかけた。
「送っていこうか?」
流石に女性1人で夜道は危ないと思った。すると白石さんは振り返って言った
「必要ないわ。だって私の家は貴方の家の真後ろだもの」
少し驚いた。てっきりまだ少し歩くのかと思っていた。でも真後ろなら安心だな。
「そっか。じゃあ送ってかなくてもいっか。今日はありがとうね、じゃあおやすみなさい」
門の内側に入って白石さんに向かって愛想笑いで手を振った。
「えぇ。じゃあ」
そう言って白石さんは僕の家の真横にある階段から降りて行った。
……その瞬間僕はそれまで浮かべていた笑顔を削ぎ落とした。ポストの中に入っていたプリントが入っている袋を出して家の中に入った。冷蔵庫の中に入れるものは入れ、自分のものだけ持って自室に戻る。全く、散々な一日だった。そう思いつつ椅子に座り机に向かった。パソコンを起動し作曲ソフトを開く。
ピアノの音を調整しながら、もう白石さんとは会う事はないだろうと思っていた。
コメント
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ああ、これ…すごく好きな空気感だ。主人公の「無理に笑顔を作ってる感」がひしひし伝わってきて、読んでいて胸がぎゅっとなったよ。特に「話したくも笑いたくもないくせに無理矢理口角が上がっていた」って一文、あの自己欺瞞みたいな感覚がリアルすぎて苦しくなった。白石さんの「芽依も付いて行っていいかしら」は、あのタイミングで急に距離を詰めてくる感じが、なんだか確信犯っぽくて気になる。彼女、絶対ただのクラスメイトじゃないよね…?続き、すごく気になる。
#心理ホラー
田嶋。
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🎮紫音🎮 👾
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