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アイツだけがモテるなんて許せない

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アイツだけがモテるなんて許せない

20 - 【第十九話】風呂場はそういう場所じゃ無い①(桜庭充・談)

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2024年06月12日

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店の外に出ると雨が降っていた。学校を出た時や、カフェに行った時は晴れていたのに。天気予報でも一日晴れだと言っていたのに…… こうも見事にハズレる事もあるんだな。

傘が無くって、カフェからは濡れて帰る羽目になった。コンビニでビニール傘を買う事も出来たのだが、そんな気分にもなれず、結局はそのままだ。『濡れ鼠』という表現がピッタリな姿になりながら家の前まで行くと、私服姿の清一が俺の住むアパートの玄関前に立っていた。


「充!」


こちらが清一の姿を捉えたのと同時に、向こうも俺が帰った事に気が付いたみたいだ。

「傘は買わなかったのか?酷い濡れ方じゃないか!お風呂は沸かしてあるから、ウチに来い」

清一が俺の手首を掴んで強引に自分の家の方へ引っ張って行く。

「は?待てって!んな時間じゃ、親に言っておかないと」

「もう言ってある。帰ったらウチ泊まるって」

「と、泊まる?いや、まぁ…… 明日は土曜日だし、問題は無いかもだけど」

傘も無いまま揃って清一の家へ向かう。清一は手に傘を持ってはいたが、開く時間も惜しいのか、立ち止まる事無く奴の家の玄関を目指した。




ポケットから鍵を取り出し、解錠して室内に入る。勝手知ったる家の中、腕を引かれたまま風呂場に向かうと、清一が俺の服に手を伸ばしてきた。

「早く脱げ。その制服はもう、クリーニングに出さないとだな。シャツとかは洗っておくから心配するな」

学ランのボタンを清一が外し、どんどん脱がせていく。

「自分で脱げるって!」

「煩い!黙ってろ!」

大声で言われて気持ちが萎縮した。ただでさえ体が冷えて心許ないっていうのに、トドメを刺された気分だ。

「…… 悪い。充の手が震えてるから、早く風呂に入れたいんだ」

清一の指摘で、自分の手が震えていた事に気が付いた。寒い寒いとは思っていたが、ここまで体が冷えていたとは無自覚だった。

「…… 流石に下着は自分で脱ぐからな?」

「別に俺がやってもいいのに」

「いや待て、ガキじゃないんだから勘弁してくれ」

制服一式を脱がされ、靴下まで清一の手にかかった。下着一枚になった所でやっと手が止まり、脱いだ服を清一が拾い始める。言い分を聞き入れてくれた事にホッとし、下着は自分で脱ぐと、「洗濯機に入れておいてくれないか?すぐに洗うから」と言われ、即座に従った。

「ゆっくり浸かるんだぞ、かなり体が冷えてるから」

「あぁ、わかったよ。ありがとな」

清一に礼を言い、風呂場へ入って行く。シャワーを浴びて軽く汚れを落としてさっさと熱い湯船に浸かると、じんわりと温かさが体の奥に染み込んできた。

「…… ふぅ」

息をゆっくり吐き出し、頭を浴槽の縁に預ける。


「さーて、どこから清一に話せばいいのやら…… 」


湯気で満ちた風呂場の中に、俺のぼやきは消えていった。

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