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1 - 元 同級生

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2025年04月19日

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君が笑う。私も笑う。

嗚呼、神様。なんて愚かな人間なのでしょうか。

いっそ知らなかったら楽なのに。

私達は同級生でした。


私は幼稚な子供でした。

自分に意義を見いだせないかつての私は、自分ではない私になりました。

面白いことを言いました。奇行に走りました。笑ってほしいのです。

何で笑ってほしかったのでしょうか。私には分かりません。幼き自分は知っているでしょうか。

私には理由が欲しかった。君だった。

教えてもらったけれど忘れた学校名。確信が持てない苗字。漢字を知らない名前。

お互いに曖昧でした。

出会ったのはいつだったでしょうか。

中2だか中3だか。いや、もっと前だったかもしれません。君は私の隣でした。

英会話塾は親に勧められて通い始めた私に情熱などありません。そもそも日常に活かす気持ちなど沸かなかったのです。

そんな自分に理由が出来ました。

そう、君です。

私の行動に反応して笑ってくれた君が自分が頑張る理由でした。

たくさん話して、頑張って。学校は違えど数少ない友達は春風のような優しさでした。

そして新年を迎えた前でしょうか。君に聞きました。

「制服買いに行った?」

何気なく聞いたこの言葉。私はもう採寸をしていて、君に聞きにいったのです 。

「まだ。これからやる」

確かこうだったでしょうか。内容を覚えていても一字一句覚えるのは難しいですね。

きっと違う学校に進学しても交流は何だかんだ続くものだと思い込んでいました。


新年迎え、登校する朝に私はニュースを見ていました。ニュースの左上の時計を見ながら、やや遅刻気味が増えた学校に急いでいたのです。

教室に着けば、かつて同じ英会話塾に通っていた少女が私に近づきました。

「───死んだって」

自分の声が出ませんでした。

気が気でない学校生活は私に鬱屈と苛立ちを与えてきました。

そして帰路を、受け入れられない事実を抱えながら帰るのです。

登校間際の朝のニュース。同年代の子が自分の住む市の踏切で母親と一緒に死にました。

哀れに思いつつも登校した私には、その言葉が酷く非現実的に思えたのです。


恐ろしさか面倒くささか。自分が動画配信サービスでニュースを見たのは深夜だった。

苗字が曖昧だ。名前は知っている。私は無残にひしゃげた車と電車に嫌気がした。

自分の感情など知らずに次々と流れる声。

死んだという事実。そして、告げられる名前。

「………」

年齢も曖昧な苗字も名前も全て一致していた。

何で、どうして君が。

「……あぁ…」

涙が溢れる。私の友達は間違いなく死んだ。


受け入れられないまま、時だけが過ぎていく。

何度、英会話塾に行っても君が現れることはなかった。除名された名前を見て心が虚ろになった。

そして知る。君は制服を買いに行ったのだと。

何気ないあの日を思い出す。君の時は永遠に止まって進むことはない。

死んだらそこまでなんだ。


またまた年月が過ぎ、現実を受け入れる。

君に花束を手向けたいけれど、自分にはそれほどの力なんて無かった。

人が死んだとて、無情な現実は変わらない。

平和な日常がこの時ばかりは憎らしかったけれど、多分今日も誰かが死んでいる。

同じ時間に英会話塾に行っていた友達は皆どっか行って、もう私だけ。

君ならどうしたのだろうか。

君は私が覚えている限り死なないけれど。私にとっての君しか生きていないんだ。

同級生の君ともっと居たかった。

でも無理だ。私の時だけ進むのだから。

元同級生の君が、今も忘れられない。

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