TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

彼を見つめると、痛いほどに心臓が跳ねる。

サラサラの黒く短いストレートヘア。ハウスメーカーの社員として、真面目そうに見えるように少しだけ伸ばされた前髪。これまた真面目そうに見えるように掛けられた、細いメタリックシルバーのフレームの伊達眼鏡。



この男――新藤博人(しんどうひろと)は、全部カムフラージュの、偽の男。



一見、誠実で真面目そうな容姿だから、こんなに意地悪で酷い男だと、誰も気づかない。私も、気が付かなかった。


「急がないと、さっき俺に挨拶して出てった旦那が帰って来るやろ。今日は、俺ともうシたくないか? それともヤッてる時に鉢合わせしたいか? だったら、ゆっくり時間かけてしてもいいけど。旦那に見られたら、めっちゃ興奮するかもな?」


時折混じる関西弁のイントネーションに言葉尻。端正な彼の顔とは相反するようなものだと思うけれど、どういう訳か聞き馴染んでしまった。それは恐らく、自分が関西出身の人間だからというつまらない理由ではなく、目の前の彼の体内に染み付いた、この人の生き様のようだったから。


そして先程から意地悪な笑みを浮かべている。笑う時、少しだけ鼻に皺が寄る彼のこの笑い方、めっちゃ好き。



でも、それだけじゃない。

時折覗かせる全てを射殺すような鋭い目線も、無情な所も、細く長い指も、綺麗な鎖骨も、意外に筋肉質で逞しい二の腕をしているその身体も、全部。



全部、好き。



そんな笑顔の彼に、ぎゅっと強く胸を掴まれた。

それだけで私の内部が熱を帯び、わき目もふらずに彼を愛したい、愛して欲しいと願い、歌ってしまう。




「律」



甘く低い私の好きな声で名前を呼ばれた。

光貴は私の事を、結婚する前から恥ずかしがって「おい」、とか「なあ」としか呼んでくれなくなった。私の名前はもう一生呼ばれる事は無いだろうから、『律』と名前を呼ばれるだけで、とても嬉しくなる。

光貴とはもう、随分長い間肌を重ねてない。あんなことがあったから、夫婦揃ってそこへ踏み込めないでいる。



傷を埋めるには抱き合うしか無いのに、私は――それを拒絶した。



だから今、私はこんな事になっているんだと思う。本当だったらこのマイホームで、家族で幸せに暮らしていくはずだった。

でも、私が光貴を拒絶するきっかけを作ってしまった。彼自身にもいくつか原因はあったと思う。ただ、原因があるからとはいえ、他の男と逢瀬する言い訳にはならない。光貴を裏切ってる私が一番最低だ。



「新藤さん――」



赤いソファーへ乱暴に腰を落とした彼が、私を強引に抱き寄せた。


「呼び方。どう教えた? 今は何の時間? ハウスメーカーの新藤とシたいのか? 律が好きな男は誰や、答えろ」


「あ――……博人(はくと)さ……ん……」


この人の名前を呟くだけで、欲にまみれた花が開いていく。

何時でも私は罪の歌を口ずさみ、堕ちていく。あなたに奪われる――


「博人って教えたよな? 呼べよ、ホラ」


「っ……博人」


「よくできた、律。ご褒美や、受け取れ」


激しく口づけされた。彼の口内から溢れる蜜を舌と共に押し付けられる。喉を鳴らしてそれを飲んだ。



博人――名前を呼ぶだけで、高揚して、胸が切なくなって、身体が熱くなる。


DESIRE -堕ちていく あなたに奪われる- ~この愛は、罪~【完結】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚