アタシは非常に困っている
あまりにもれいがクラスに馴染めていない気がする
難しいとは思ったけどここまで難しいもんなんだ
まさか話しかけることすら出来ないなんて
いや、これに関してはれいが悪い訳じゃないんだけどなぁ
だけどれいが今まで人と話さなかった結果なのか
うーんうーんと唸っているとそろそろ起きる時間になったらしい
れいがのそのそと動き出す
「おはようれい!」
スマホからそう声をかけても毛布の中で動くだけで起き上がろうとしない
「れーいー?学校のお時間だよー!」
そう言ってもれいは起き上がらない
「れい?」
おかしいと思ってれいの顔を見てみると頬は赤くなり苦しそうに呼吸をしていた
「れい!!」
やばい、
やばいやばいやばいやばい
知識がないアタシでも分かるこの状況はやばい
病院に連絡?
アタシはスマホを操れるわけじゃないし病院に電話をかけられたとしても話しかけることすらできない
誰かに気づいてもらう?
確か今れいの両親は仕事に行ってる
れいがピンチなのを知ってるのはアタシだけ
あー!もう!体が欲しい
リアルでも自由に動ける体が欲しい!
そしたら今すぐ助けられるのに
そんなこと願っても叶うわけが無い
なにか、なにかないの
誰か…
誰かいないの?!
「誰か!!」
どれだけ大声で叫んでも誰も来ない
この家はしんと静まり返ったままだ
「お願い、お願いお願いお願い」
アタシは無力だ
アタシは1人じゃ何もできない
だけど、れいの友達としてれいを助けたい
こんなアタシを頼ってくれたあの子を!
だから…
「誰か気づいて!」
お願い…
「鏡から出して!!」
「いいよ」
突然外の時間が止まったような気がした
いいよ?
誰だ
誰が今言った?
アタシの後ろ…?
都市伝説とされてる存在なのに怯えてしまう
怖い
誰かが鏡の中にいる?
あたし以外の誰かが…
恐怖感に襲われる
けど、
ここで振り返らなきゃれいが救えない!
恐る恐る後ろを振り向く
「こんにちは」
ヒラヒラと手を振るそれは真っ黒なモヤで覆われていて姿が見えなかった
「誰?!いや!誰でもいい!」
「アタシをここから出して!」
縋り付くように叫ぶ
「いいけどぉ」
それは悩むようなポーズをする
「出してもいいけど君死ぬよ?」
死ぬかぁ
死ぬねぇ…
本当に笑っちゃうなぁ
「アタシは元々存在していないよ。死ぬとかそんな概念ない!」
それの胸ぐらを掴む
「出せ!!」
ニヤッと不気味な笑みが見えたと思ったら鏡からはじき出される
「は」
地に足がついてる
スマホにアタシが写ってる
「れみ…?」
私の名前を呼ぶれいは目の焦点が合っていなかった
「れい!」
電話かけなきゃ!
確か119番だったよね
慣れない手取りでスマホを操る
額を触ってみると少し熱いのがアタシでもわかった
とりあえず冷やすもの…
学校にも連絡?
いや、だけどアタシをどう説明したらいいんだろ…
冷静に落ち着いてみるも少し戸惑ってしまう
しばらくすると救急車が来てれいが運ばれる
アタシはついて行かなかった
いや、行けなかったんだ
怖かった
もしかしたられいが死んでしまうんじゃないかと思うと怖かったんだ
彼女の死に目なんて見たくなかった
洗面台に向かってみる
鏡にはアタシが写ってる
酷い顔だなぁ
れいの顔なんだからこんな鬱みたいな顔しないでよ
お願いだからさぁ…
強ばった表情は戻らない
「どう?現実世界は」
あれが急に鏡の中から話しかけてきた
「楽しんでるぅ?」
ふざけたこと言いやがって
思わず鏡を殴りたくなってくる
「楽しんでるように見える?」
「ん〜?」
なんて言いながら笑ってやがる
ふざけやがって
怒りが込み上げてくるがグッと押えてそれに聞く
「アタシはいつまでここにいられるの?」
「明日ぐらいじゃないかなぁ。それ以上長くいた人見た事ないや」
「明日かぁ…」
明日終わったらまたアタシは鏡の中
だけどれいが無事ならそれでいいかな
「そうそう。君は明日消えるんだよ」
「え」
「代償。君の願いを叶えたからさ」
願いを叶えたらそれ相応の代価が必要だよね
なんて楽しそうに笑う
「明日、消える?」
「鏡の中からもこの世界からも」
「けどそれは君が望んでやった事だから何も言えないよねぇ?」
アタシは…
「文句はないよ!逆にありがとう」
「アタシの願いを叶えてくれて」
違うこれは強がりだ
勢いで死ななんてないって言っちゃったけど
やっぱり
消えるのは怖いなぁ…
「そうだよねぇ。じゃあ明日迎えに行くから待っててね」
投げキッスをしたかと思ったらどこかに消えてしまった
また家は静まり返ってしまった
「嫌だ」
そう言ってしまったらダメだとわかっている
嫌だ嫌だ嫌だ
れいと話したい
れいとまだ生きていたい
アタシはまだこの世界を楽しみたい
嫌だよ
死にたくないよ
消えたくないよ
「嫌だよ…」
涙が溢れる
れいを助けられただけで良かったじゃないか
そう思ってもどうしても死という言葉が頭から離れない
怖いよ
今までの物全てを失うみたいで耐えられないよ
れいが幸せになる未来を見たかったよ
まだ隣で笑っていたかった
アタシはまだ1ヶ月ちょっとしか生きてないんだ
もっともっといきたいよ
「死にたくないよぉ…」
助けて、れい
誰もいない家でアタシの泣き声だけが響く
どうしても抑えられなくて、溢れ出す
こんな感情知りたくなかった
こんなことになりたくなかった…
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!