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そうだ。
私は“寂しそう”って思ったんだ。
距離を取られるのは悲しかったけど、同じくらい山梨さんが見せる表情が気になっていた。
「山梨さんにとってアヤさんがいいのは、『楽だから』って言ってましたよね。それは素でいられるからじゃないですか? 私にも素でOKです! どんな山梨さんも絶対受け入れます! 安心してくださいっ」
ずっと気を張ってたら疲れちゃうよ。
私にはそのままでいいって―――『そう思ってる人がいるよ』って、わかってほしい。
時間がかかっても、心の片隅でもいいから届いてほしい。
わずかだけど、山梨さんの目が見開いた。
そんなこと言われるなんて思っていなかったって顔だ。
それでいて、私のことをじっと見るから―――心を確かめるようにじっと見るから、心臓がバクバクしてくる。
き、緊張してきた。
でもほんとだもん。
不安と緊張で無意識に手に力を込めた時、山梨さんは伏し目がちに笑った。
「サキちゃんは楽観的すぎや。そんな簡単なもんちゃうで」
「!」
「でも―――……」
言葉を切り、山梨さんは顔を上げてもう一度私を見つめた。
(わっ)
ドキマギする私を見て、山梨さんがふいに目を細める。
口元があがって―――なにか面白いものを見つけた時のような、いたずらな顔が現れた。
「まぁ、そこまで言うなら……覚悟はあるってことやな?」
「!」
そ、その顔!
笑顔だけど笑顔すぎるよ、YESしかないって圧を感じるっ。
(正直、)
覚悟とかよくわかってない。
―――だけど。
「はい!!!」
だけど近づきたいもん。
距離を置かれたくないし、知りたいし、知ってほしい。
そして、いつか―――私を好きになってほしい。
なにより優先したい、大きな原動力なんだ。
だから……なんでもどんとこい!!
こくこくと、大きく二回頷く私を見て、山梨さんは「はっ」と、声に出して笑った。
「ほんま、そういうとこええな。巻き込まれてみたいって思ってまうもん」
「!!」
それって―――近くにいても拒否はされないってことじゃない??
うん、雰囲気的に、とりあえず距離は置かれなさそうっ。
「ありがとうございますっ!!」
やったやった!
それだけで大収穫!!
めちゃめちゃ嬉しい、今めっちゃ身体熱い!
心の中でわーわー盛り上がっていると、山梨さんがスマホを出していじり始めた。
(んん?)
当然、山梨さんの視線は、私ではなくスマホへ。
え……、今私たち、結構いい感じで話をしてませんでしたか??
急な温度差に、マボロシのカラスが現れてカーカー鳴いている。
(な、なんか)
なんとも言えない切なさが広がった時、山梨さんがずいっとスマホ画面を見せた。
「?」
(これは)
SNSのアカウント?
「コレ、俺」
「えっ」
「サキちゃんのは?」
「!!」
えっ、えっ!?
咄嗟に0.1秒で自分のアカウントを表示!
やばいやばい、これは―――……!!
山梨さんがスマホを操作し、私たちのスマホに連絡先が追加された。
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「まずは『オトモダチ』やな」
含んだ声で山梨さんが言う。
そこには楽しそうな響きもあって、心の中で『わあぁぁぁぁっ』と歓声があがった。
うわぁぁ、山梨さんの連絡先っ!!
画面が光って見えるっ、ずっと眺めていられるっ。
嬉しすぎて無性にジャンプしたいっっ!
(今はオトモダチでもいい、ぜんぜんいいよ!!)
前に連絡先の交換を断られ時、『もう少し仲良くなったら』って言われた。
……前進だっ!
前進できたぁぁぁ―――っ!!
感極まってほんとに叫びそうになった時、ポツ、となにかが当たった。
ポツ、ポツ、と、空から降ってきたのは、雨。
「あぁ、降ってきたかぁ。そろそろ行こうか」
空を見た後、山梨さんがベンチから腰をあげた。
(あっ……、雨―――……!)
確実にいい感じだったのに、場の空気変えられちゃった―――!
今から仲が深まる感じだったのに!
(神様のイジワル―――! って、そういえば私、折り畳み傘持ってるんだった)
結構降ってきそうだし、山梨さんが濡れちゃったら嫌だよ。
「私、傘持ってますっ」
山梨さんの上に傘を広げようと背伸びしたら、座っていた時より距離が近づいた。
(わ、なんか近いっ)
ていうかドキドキするっ。
やっぱり山梨さんかっこいいっ。
無意識に見惚れかけていると、山梨さんがこちらを向いた。
「!」
まずい、またジロジロ見てる(目に焼き付けてる)って思われちゃう!?
せっかく距離が縮まったんだもん、変なやつって思われたくないっ。
乙女心から目を逸らしたのと、傘の持ち手に山梨さんが触れたのは同時だった。
「!!」
えっ……!?
気のせいかと思って自分の手を見れば、山梨さんの手が自分の手に重なって……いる……!?
「!!!」
えええっ、待って待って、なにこれなにこれ、手、手がっっ!!
信じられず目をパチパチしていると、目の前に山梨さんの顔が近づいて――――。
「!!!!」
(なになになにっ、どういう――――)
頭が追い付かない私の唇に、なにかが触れる。
「!!!!!!」
ふわっと、知らない香りがした。
知らない香り。
知らない感触。
頭は働かないのに、心音は体をつきやぶるんじゃないかってくらい激しい。
目の前にはどアップすぎる山梨さん。
(#$%&@¥###$%$!?)
だめだ、情報過多―――っっ。
カチンコチンにフリーズした私から、山梨さんがすこし体を引いた。
くしゃっとした目
おかしくてたまらないという顔。
「はははっ」
山梨さんが声を立てて笑い出す。
「ほんま、サキちゃんええ反応するなぁ。こっちがビックリするくらい」
(#$%&@¥###$%$!?!?!?)
声を聞いた瞬間、頭の中がドカーンと大爆発した。
どっと噴き出る汗。
瞬きは尋常じゃないレベル。
腰が抜けてしりもちをついた拍子に、傘が手から抜け落ちた。
「ちょっ、大丈夫か」
山梨さんがしゃがみこみ、笑いながら私に手を差し出した。
それを見て――――初めて会った時がフラッシュバックする。
手を差し出され、山梨さんがキラキラして見えたこと。
体に電気が走り抜けた感覚だってよみがえる。