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突然だが、俺は今ほど【死ぬかもしれない……】と思ったことはない。

それは、毎朝必ず送られてくるダンボール箱の中に入っている幼女『ミノリ』に「一日に三回、血を吸わせろ!」という理不尽な要求をされたからである。

人は体内の血液の約三分の一が失われると死んでしまうらしい……。

だから、一日に三回も吸血鬼に血を吸われたら、おそらく……いや、確実に死に至る。

そのため、俺はミノリを説得している。


「ミノリ! 頼むから俺の話を聞いてくれ!!」


俺は今までで一番と言っていいほど、必死に説得している。

善良な一般市民に向かって「一日に三回、血を吸わせろ!」なんてことを堂々と言い放った常識知らずに殺されるわけにはいかないからだ。

俺がそんなことを考えていると、ミノリは俺にこう言った。


「ナオト、一つ訊くわ。あたしがここにいるのはなぜだと思う?」


俺は自分の考えをまとめるのを中断すると、ミノリが言った言葉の意味を考え始めた。

確か、ミノリがここにいるのは、俺のパートナー兼俺の未来のお嫁さんだから……だよな? それ以上の理由なんて……。

そこまで考えをまとめた直後、俺はあることに気づいた。

それは……今ここに、ミノリがいる必要はないということだ。


「確かに、お前が今ここにいるのはおかしいな」


「そうよ。あたしは今ここにいなくても……いや、むしろ、いない方がいい。だって、今のあたしは……」


その直後、俺とミノリは、同時にこう言った。


『どう見ても結婚できる年齢に達していない……。だから、今ここにいる必要はない』


どう考えてもミノリが結婚するにはまだ若すぎる。少なくともあと七〜八年は経たないと俺のお嫁さんにはなれない。

なら、どうして彼女が今ここにいるのか……。

それはおそらく、ここに来なければならない事情があったからであろう。

しかし、それを知ったところで俺の気持ちは変わらない。


「だがな、ミノリ。それは、俺の血を吸っていい理由にはならないと思うぞ?」


俺は普段あまり怒らないが、こいつと話していると無性に腹が立ってくる。

そんな怒りを抱いていると、ミノリはこんなことを言った。


「はぁ? あんた、そんなことも理解できないの? まったく、それくらい察しなさいよ。童貞……」


これには、さすがの俺もカチンときた。


「じゃあ、俺が理解できるように説明しろよ! できるだけ簡潔にな! よし! 二十文字以内だ! それ以上は認めん!」


俺は今までで一番大きな声で言ってやった。これで少しはおとなしくなるだろうと思った。

だが、俺の予想は大きく外れた。それは、ミノリの方を見た時、頬を赤く染めながら何か言っていたからだ。


「…………わよ」


よく聞こえなかったので。


「何かを人に伝える時は人に伝わる声で言えよ!」


俺はミノリにそう言った。すると。


「……わ、分かったわよ! やってやろうじゃないの! あとで泣いて謝っても許してあげないんだから!」


ミノリは俺のそれよりも大きな声で言った。俺は一瞬、驚きつつも。


「ほう……なら、その理由とやらを言ってもらおうじゃないか。もちろん二十文字以内でな!」


そう言い返してやった。何を言われようと俺はこいつが俺に言ったことを許すことはできない。

それに該当する人たちの家に訪問して謝罪の言葉を言わせてやりたいくらいだ。

さて、こいつはなんと言うのかな。

まあ、なんと言われようと俺は決して動じないがな。

しかし、この時の俺は考えもしなかった。まさかあんな言葉を聞くことになるなんて……。



ミノリは、頬を赤く染めた状態で涙目になっていたが、こちらをじーっと見ている。

さて、ミノリはどんなことを言うのかな。


「おい、ミノリ。そろそろその理由とやらを言ってくれないか? じゃないと、俺は今すぐお前をここから追い出すぞ?」


よし、これで少しはおとなしくなるだろう。

その時の俺はそう考えていた……。しかし、ミノリから発せられた言葉は俺の予想していたものとは明らかに違ったものだった。


「じゃあ……言う……わよ」


「おう、俺を納得させられる理由を言ってみろ」


「……あ……あたしは」


「あたしは?」


「あたしは、あんたのことが……」


「お前は、俺のことが?」


「あたしは、あんたのことが、一日に三回も血を吸いたいくらい好き……なのよ……」


「……………………」


「……それが……あんたの血を吸いたい……理由……よ」


俺は一瞬、自分の耳を疑った。ちょ……ちょっと待て! ミノリが言ったことが理解できない! というか理解したくない!

え、えーっと、つまり、ミノリは俺を食べたいぐらい好き……ってことなのか?

もっと単純な理由を言うと思っていた俺は、心の中で激しく動揺していた。

普通こういうのって「あんたを死ぬまでこき使いたいからよ!」とか「あんたをあたしだけの奴隷にしたいからよ!」とかじゃないのか!?

なのに、こいつは俺の血を一日に三回も吸いたいくらい好きだからだと言いやがった! 何なんだよ! こいつは! 可愛すぎるだろ!

しばらく心の中で叫んでいた俺は、潔く負けを認めることにした。

ミノリは俺の予想を遥かに上回る理由を言った。

それに、自分の素直な気持ちを二十文字以内ではなかったが、俺に伝えてくれた。

完敗だ……。お前の勝ちだ、ミノリ。


「なあ、ミノリ」


「な、なに?」


「少しだけでいいから、俺の話を聞いてくれないか?」


俺がミノリに今してやれることは一つしかない。


「ま、まあ、話ぐらいならね」


ミノリはそう言いながら、こちらを見た。俺がこいつにしてやれること、それは……。


「すいませんでしたあああああああああああああ!」


謝罪&土下座である。


「………………!!」


ミノリは驚きのあまり俺から少し離れた。嫌われてもいい……だけど、俺はこいつに……いや、ミノリ様に謝罪をしなければならない……!!


「貴方様の清らかな心を傷つけるような行為をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした! この罪は死をもって償います! ですから、せめて貴方様の手でこの大罪人をあの世に送って下さい! よろしくお願いします!!」


俺は今までの人生の中で、これほど謝罪の言葉を言ったことがない。

これが俺の一生の中で、最初で最後の土下座だと思う。俺はそう思うくらい、精一杯の謝罪をした。

だからもう、何を要求されようと構わない! と俺は心の中で何かに覚醒めてしまうかもしれないようなことを呟いた。

その時、さっきまで俺から離れて、謝罪の言葉を聞いていたミノリがゆっくりと、こちらに向かってきた。

ミノリは俺の目の前に立つと、こう言った。


「……そんなに謝る必要なんてないし、あんたが死ぬ必要もないわ。だからその……あんたはあたしと結婚して、幸せになりなさい……。はい! もうこの件はこれでおしまい!!」


こんなどうしようもないダメ人間に幸せになれと言ってくれたミノリ。

俺はこの時、感謝しても感謝しきれない程の気持ちでいっぱいになっていた。

その証拠に俺はいつの間にか涙を流していた。

だが、そんな俺をミノリは慰めてくれた。お袋のようにそっと抱きしめ、頭も撫でてくれた。

____しばらく経って俺が落ち着いた頃、俺は重要なことを思い出した。

バイトがあることに……。だが、同時に俺はもう一つ重要な事を思い出した。

今日は俺の代わりに新人がシフトに入ることになっていたということに……。

俺は正直、ほっとした。もしバイトがある日だったら、完全に遅刻だったからだ。

その時、俺とミノリの腹が同時に鳴った。

そういえば、昨日はなんだかんだあってまともな食事をしていなかったっけ。俺たちはクスクスと笑い合うと。


「お茶漬けでも食べるか」


「ええ、そうね。そうしましょう」


いつもより遅い朝食を食べることにした。こうして俺とミノリの口論は幕を閉じた。

今、思い出してみると俺もミノリの気持ちを分かってやれていなかった。

しかし、今ではミノリとの大切な思い出になっている。え? ミノリが今も俺の血を吸いたいと思っているのかって?

まあ、それは本人に訊いたら分かることだが、正直もうこりごりだ。

訊ける覚悟ができたら、訊くことにしよう……。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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