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第15話「選ばれる覚悟」
沈黙の区画から戻った翌日。
セツナは再び、本部作戦会議室に呼び出された。
そこには全幹部が揃っていた。
ただし、今回は「決議の場」ではない。
“託す”ための会議だった。
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トントンがセツナの前に、黒い封筒を置いた。
「中身は、近く公表される“軍内の歪み”に関する報告資料。
それをお前に、先に読んでおいてほしい」
セツナが開くと、そこには“記録外部隊”の存在が書かれていた。
【影部隊「オルド」】
• 任務:国家が公式に認められない処理の遂行
• 管理者:現在不明
• 活動記録:存在せず
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「お前が監査官になる前、
俺たちは“国家の秩序”を守るために、それを黙認してきた」
グルッペンの声は低い。
それは、総統としてではなく、“1人の判断者”の声だった。
「だが今は違う。
俺たちの誰も、もう“黙認できない”」
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シャオロンが前に出る。
「だから……お前に、その組織の“監査権限”を託す」
「え……?」
「正面からは潰せない。だが、内側からなら、変えられる。
お前にはもう、“それをする資格”がある」
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ゾムが腕を組んで言う。
「覚悟、あるか?
お前が中に潜ったら、誰も簡単に助けに行けねぇ」
セツナは黙って立ち上がり、深く頭を下げた。
「僕は、“選ばれたくてここまで来た”わけじゃありません。
でも、“見過ごしたくない”と思った。
だから、行かせてください」
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ロボロが、そっと笑う。
「……名前で呼ばれるってのは、こういうことかもな。
“誰かの代わりに選ばれる責任”だ」
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封筒の中には、最後にこう記されていた。
【任務名:記録改訂作戦・コード“レクイエム”】
【責任者:黒瀬セツナ】