テラーノベル
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信愛は一度息を整え、静かに口を開いた。
「そして、わらべ歌です」
勇が首を傾げる。
「わらべ歌がどうかしたのか?」
信愛は朝陽へ視線を向けた。
「朝陽くん?」
「はい?」
「確かさっき歌詞をメモってたよね?」
朝陽は胸ポケットからスマホを取り出した。
「はい、ありますけど」
「歌詞を読み上げてくれないかな?」
突然の指名に少し戸惑いながらも、朝陽は頷く。
「は、はい・・・」
メモ帳アプリを開き、画面を見つめながら読み始めた。
「えーっと──
オジロクオバサガ嬰リ泣ク
重イ鎖ガコノ地ニ響ク
子供ヲ縛ル鎖ガ響ク
ジャラジャラ ガシャガシャ鎖ヲ鳴ラシ
オジロクオバサガ 来ルヨ来ルヨ
オジロクオバサガ怒リ泣ク
弟妹腑煮エクリ返ル
村民憎ンデ煮エクリ帰返ル
フツフツグツグツ 怒リヲ込メテ
オジロクオバサガ 来ルヨ来ルヨ」
読み終えた朝陽はスマホを下ろした。
「これがわらべ歌の歌詞です」
信愛は小さく微笑む。
「ありがとう」
しかし秋穂は不思議そうな顔を浮かべた。
「この歌詞がどうしたって言うの?」
信愛は静かに問い返す。
「これは弔いの歌で間違いないですか?」
勇はゆっくりと頷いた。
「ああ・・おじろくおばさは
村民の事を恨んでいるはずだからな」
村人の一人も続ける。
「せめてもの罪滅ぼしさ」
その言葉を聞いた信愛は、ゆっくりと首を横に振った。
「ですが、この歌詞からは、おじろくおばさを
弔いたいって気持ちが、全く感じられません」
室内にどよめきが走る。
「な、なに?」
村人が目を見開く。
信愛は皆を見渡しながら続けた。
「この歌詞を聞いて率直に抱いた感想は
おじろくおばさがみんなを凄く恨んでいて
いずれ呪いに来る!そんな感想でした」
勇は何も言わず、ただ黙って信愛を見つめていた。
信愛はさらに言葉を重ねる。
「それに、おじろくおばさは──」
少し間を置き、静かに問いかける。
「本当に恨んでいたんでしょうか?」
その言葉に、美羽が驚いたように顔を上げた。
「え?どういう事?」
信愛は穏やかに美羽へ向き直る。
「美羽さん?美羽さんは、さくらの
叔父さんと結婚してこの村に来たんですよね?」
「ええ・・・そうよ」
信愛は静かに語り始めた。
「仮にこの村には『女は外に出てはいけない
独自の風習があるんだ』と言われていたとしたら
美羽さんだったら、どうしてたと思いますか?」
美羽は腕を組み、少し考え込む。
「どうしてたか?
うーん・・・そうね〜・・・」
しばらく考えた末、静かに答えた。
「疑問に思いながらも、受け入れるかもしれないわね
断って村八分なんて事になったら恐ろしいから」
信愛は静かに頷く。
「そうです・・・受け入れちゃうんです」
そして、真っ直ぐ皆を見据えた。
「それがしきたりだ!ルールだ!と言われてしまったら
受け入れざるを得なくなっちゃうんです」
信愛は静かに皆を見渡しながら、言葉を続けた。
「それを産まれてからずっと教え込まれていたら」
秋穂ははっとしたように息を呑む。
「た、確かに・・・」
少し考え込むように俯き、ぽつりと呟いた。
「おじろくおばさは、奴隷として
生きる事が当たり前と教えられるから
自分の置かれている状況そのものに
疑問を抱いてなかった可能性もあるわね」
信愛は静かに頷いた。
「まるで毒親に育てられた子供みたいに」
その一言に、美羽も深く頷く。
「確かに・・・通じるものがあるわね」
信愛は真っ直ぐ前を見据え、静かに言い切った。
「ある種の洗脳です」
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
1件
いやー、今回もすごかった…。わらべ歌の歌詞をただの不気味な道具で終わらせず、「本当に恨んでいたのか?」って問い直す視点、めっちゃ好きです。毒親みたいな洗脳構造って表現にハッとしました。重いけど、信愛の冷静な分析が光ってた。続きが気になりすぎる…!