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粗野な男。かつてコウカを傷つけた少年。そして嘘つきの少女。
私たちは3人の邪族と相対している。
「手筈通りには行かなかったけど、分断には成功したね『あたし』」
「そうだねぇ『僕』。余計な子まで付いてきちゃったけど」
「精霊の1体くらい、どうってことないよ。こっちには『俺』もいるしね」
少年は少女を『あたし』と呼び、少女は少年を『僕』と呼ぶ。さらに『俺』が出てきたりと頭がこんがらがりそうだ。
『俺』と呼ばれた男があの2人に呼びかけるのと、コウカが私に声を掛けるのは同時だった。
「てめぇら、いつまでぺちゃくちゃ喋ってるつもりだ。さっさとやれや」
「マスター、ハーモニクスを! 早く!」
必死なコウカの言葉に突き動かされて、私は自分とコウカの力を調和させる。
「【ハーモニック・アンサンブル】――デュオ・ハーモニクス!」
「はいはーい。【エニグマ・フィールド】」
コウカとのハーモニクスに成功した私が見たのは、私たちと彼ら3人を取り囲むように生成された半円状の魔力フィールドだった。
フィールドは紫色と黄色の魔力が入り乱れて構成されており、中から外の景色を見ることはできなくなっているようだ。
「これは――」
「魔泉との接続も完了。後はじっくりとハンティングだ」
これでは外にいるみんなの姿を確認することもできない。
私の中にいるコウカと瞬時に相談した結果、出した答えはフィールドからの脱出。彼らが仕掛けてくるよりも早く、私は地面を蹴り、【ライトニング・ステップ】を発動させてフィールドの壁へと迫った。
そしてその勢いのまま剣を振るうが――想像以上に硬すぎて傷ひとつ付かない。
「ハハハハハ、それくらいじゃこのフィールドは壊せないよ。なんて言ったって、この周囲の魔素を吸い上げて強化しているからねぇ」
「脱出するにはぁ、術者である『僕』を倒すしかありませーん。頑張ってねぇ、応援してるよぉ」
こちらを嘲笑い、さらには煽るような口調を向けられる。だが私もコウカもその程度で動じることはない。
今私たちが考えているのは如何に脱出して、みんなと合流するかということだけだ。
『【ライトニング・インパルス】なら恐らく突破できます』
だが、あの魔法を発動させるには私たち2人の力でも長い時間を要する。それをあの3人が見逃してくれるとは思えない。
どうするべきかと考えていると少年が声を掛けてきた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕はプリスマ・カーオス。こっちの『あたし』もプリスマ・カーオス。そしてそこの……君に飛び掛かっている『俺』もプリスマ・カーオスさ」
「――ッ!」
気配を感じ、振り向きざまに剣を構えるとそこに重みが加わった。
『俺』と呼ばれた粗野な男が自らの手に装着している鉤爪と霊器“ライングランツ”が交差している。
重い攻撃だ。だが――。
「はぁッ!」
「何っ!? はっ、やるじゃねぇか」
正直言って、押し返しきれないほどではない。雷魔法による強化を使わなくとも、だ。
「あれ……なんか思ってた感じと違うなぁ」
「とりあえず加勢してきなよ『僕』。あたしはあの子とおしゃべりでもしておくからさ」
コウカとのハーモニクスのおかげで強化された聴力は彼らの声を拾うことができる。
彼らを先に倒すこともできるが、今はこの『俺』と呼ばれている男を倒すべきだとコウカが訴えかけてくる。
「さっさとくたばれやァ!」
再度、接近してきた男が振るう鉤爪を回避し、反射でそのがら空きとなった胴体に剣を振った――が咄嗟に刃の向きを変え、剣の腹で男の体を打ち据える。
思っていたよりも威力が出なかったものの、彼を10メートル以上は吹き飛ばすことに成功したようだ。
『マスター?』
コウカが問い掛けてきた瞬間、今度は紫色の光が私目掛けて飛来する。これは闇魔法だ。
「苦戦しているみたいだからね。手を貸すよ、『俺』!」
「ナメやがって……ふざけんじゃねぇぞ!」
「ああ、もう……そうやってすぐ周りが見えなくなるんだから」
態勢を立て直した男がこちらに詰め寄ろうとし、少年も魔法で攻撃してくるので私は【ライトニング・ステップ】で一旦その場を離脱する。
「うわ、さっきも見たけど速いねぇ救世主サマ」
この声はあの少女だ。
こちらに魔法を放ってくる少年の後ろから彼女は私に語り掛けてくる。
「ここから脱出しようとするのもいいけどさぁ。それまで暇だからあたしの話に付き合ってよ。今度こそ真実を教えてあげる。もちろん、信じるかどうかは救世主サマ次第だけどね」
本当のことを話してくれるという言葉を聞いて、私は逃げ回りながら彼女の声に耳を傾けた。
「まずは聞いてよ、あたしが人間だった頃の話を。醜い人間たちによってあたしの人生がどれだけ弄ばれたのかをさ! それでもお優しい救世主サマがあたしたちを殺せるか見物だよねぇ! あはは!」
狂ったように笑う彼女の声。
コウカは聞かないほうがいいと言っているが、私は聞くことを選んでしまった。
「昔さ、人間たちの間である理論に基づいた研究が盛んに行われていたの。それはもうバカみたいに傲慢な人間の欲望にまみれた研究だよ。その研究の目的は1人の人間に2つの魔力属性を与えること。ねぇ、どうやると思う? 1人の人間に2つの属性を与えるにはどうすればいいと思う?」
現在、コウカとハーモニクス状態の私は調和と光の属性を使える。だが、それは調和の魔力のおかげでもある。
魔力属性は1人に1つ。前にシズクが言っていたが、魔力属性というのは魂に由来するという。
そんな中で私の調和の魔力とは本来この世界にはなかったもの。私が元々暮らしていた世界から持ち込んだもの。
だから2つの属性を扱うにも、調和の魔力を使うという選択肢は私だけにしか取れない。
「まぁいいや。属性っていうのは魂によって決まっているっていうのが通説だよね。あなたの魂は闇属性、それであなたは光属性ってね。それは昔も今もそう変わらないんだ」
やっぱりそうなんだ。でも、魂で決まっているのなら猶のこと2つの属性を持つことなどできないだろう。
「それじゃあ魂を1つの体に同居させよう! 昔の人間はこう考えたわけだ。どうやっているのかは分からないけど、まるで今のあなたたちみたいだね」
今の私たちだって特殊な条件で2属性の魔法を使えるが、決して同一の人間になっているわけではない。
それはヒバナとシズクとのトリオ・ハーモニクスでも経験している。
あの子たちがやろうと思えば、私の意思を無視して体を動かすことができるし、取ろうとする行動に少しでも齟齬が生じれば力を満足に出せなくなる。
「でもさ、魂ってどこにあるのかな? 人間に触れられる場所にあるの? わっかんないよね、色々弄られてたあたしでさえもわかんないんだし」
私たちが調和の魔力を使うことで実現させているのと同じことを人間がやろうと思えばどうすればいいんだろう。
調和の魔力もなしで魂の同居なんて本当に可能なのか。
「だからさ、人間たちも分からないなりにやってみたんだよね。集めた被験者たちから少しずつ身体中のあらゆる部位を切り抜いて、その一部一部を1人の人間に移植し、集約させるんだ」
そこまで聞いて、私は嫌でもその光景を思い浮かべた。
彼女の過去、同一の名前を持つ存在プリスマ・カーオス。
――まさか……まさか、彼女たちは。
『マスター!』
気付けば、足を止めてしまっていた私の眼前に少女の顔が迫っていた。
彼女は私の体を蹴り付けてくる。
「そういうわけでねぇ! 基盤になったのが『私』であたしも『俺』も『僕』も皆、みーんな移植された存在だってこと。何度も何度も何度も失敗して、『私』の体にはたくさんの魂のカケラが埋め込まれていった」
そんな眉唾物の話、普通なら信じられない。
でも、彼女の言葉から感じる恨みは……人間への怨嗟はとても演技で出せるものとは思えなかったのだ。
「オラオラァ! さっきまでの威勢はどうしたァ!」
「ぐぅッ!」
男の攻撃を剣で受け止めたもののジリジリと押し込まれている。
――私のせいで力負けしているんだ。
さらに闇の弾幕が迫ってきたため、私は【ライトニング・ステップ】で離脱を試みる。
だが――使えなかった。繊細な魔力制御が必要な魔法なのに、魔力が上手く扱いきれなかったのだ。……私のせいで。
どうにかその魔力を魔法防御に転用できたおかげでダメージはないが、そこに男と少女からの追撃を受ける。
『落ち着いてください、マスター!』
そしてコウカからも叱られる始末だ。
『アレの言葉を聞いていては駄目です! 今はあの子たちと合流することだけを目指しましょう!』
分かっている。分かっているけど。
「――あたし、孤児でさぁ。小さい時から働いて、でもずっと生活は苦しくて。だから孤児院も援助を引き換えとした貴族サマの要望には逆らえなかったわけだ。神官の見習いみたいなことやってて、いつか優しい女神サマがこんな生活から救ってくれるって信じていたんだけどねぇ」
私はこの人を切り捨てるべきなのか。
「あぁ、痛かったなぁ。結局、あたしは人間でも家畜以下の存在だったってわけ」
私は許されるのだろうか。
「でもね、そんなあたしにも手を差し伸べてくれる方がいた。メフィストフェレス様だよ! あの方は実験の果てに壊れた『私』とその中にいても自我なんて残っていなかったあたしたちをまとめて救ってくださった! そうしてあたしたちはプリスマ・カーオスの名前を頂いて、忠誠を誓ったんだ」
この人を切り捨てても、みんなは私を許してくれるのかな。
「人間がそんな愚かな実験に手を出さなければ、プリスマ・カーオスは生まれなかったのに! あたしたちは愚かな人間たちの被害者! でも救世主サマは世界を救うためとか言ってあたしたちをみーんな殺すんだよねぇ!」
選べない。
――私は醜い人間じゃないから……私はみんなの太陽だから……!
「醜い人間って言ったって、そんなのほんの一部だけだよ。人間すべてが醜いわけじゃない……ミネティーナ様ももっと早く気付いていればあなたたちを救ってくれたはずだよ……ッ」
何とか言い返そうとはしたものの自分でも嫌なほど声が震えているのが分かる。こんな私が今、何を考えているのかがコウカには筒抜けなんだ。
でも、ハーモニクスを解除することはできない。そうすれば私がすぐに殺されちゃうから。
それはこの状況を打破しようと考えてくれているコウカが最初に切り捨てた選択肢。
「ふーん……でも、本当にそうかなぁ。この実験って聖女とか枢機卿とかが主導していた実験なんだけど。つまり、ミネティーナが気付いてないはずがないんだよね」
今も戦いは続いている。でも大きく圧されている。
こんな相手、コウカ1人でも勝ててしまうような相手だ。今はその何倍もの力を出せるはずのハーモニクス状態なのに、私が迷っているせいで“不和”を起こしてしまっている。
「救世主サマ、騙されているんだよ。人間たちも女神もみんな噓つきだよ。人間たちはメフィスト様を邪神って呼んでいるけど、そんなのそっちの都合でしかない。あの御方は口下手だけど、本当はとても優しい方なんだ。そんな方を一方的に敵視して、討ち滅ぼそうとしているのはミネティーナの方なんだから」
「でも世界をめちゃくちゃにするじゃん! 優しいなんて嘘だよ!」
邪神は信用できない。
でも、だからといってミネティーナ様は信じられるのか。私はいったいどっちを信じればいいんだ。
「それはごめん。あたしたちがメフィスト様の意思に反して勝手にそうしちゃってる。人間が憎いから、暴走しちゃう子も多いの。でもメフィスト様は自分たちが安心して暮らせる世界が欲しいだけ。完全に復活なされば、別の世界を作ってあたしたちは飛び立つ。もう、この世界に手出しはしないよ」
このまま彼女たちを見逃すのが正解なのか? 私が信じるべきは――。
『どうしてわたしの言葉を聞いてくれないんですかっ!』
――コウカ?
『ずっと呼びかけているのに……どうしてわたしじゃなくて、そんな邪族の話ばかり聞くんですかっ!』
泣き出しそうな彼女の声。そこから感じるのは私に向けられたひたむきな想いとそこに含まれる悲しみ。
何をやっているんだ、私は。この子の言葉を無碍にして、迷って、悲しませている。
――本当に大切なことなんて分かりきっているというのに!
「何だとッ!?」
「ぎゃあ!?」
男と少女を力づくで吹き飛ばし、飛来する闇魔法もすべて回避する。
どうやらコウカとまた心を通じ合わせることができたみたいだ。
『ぐすっ、マスター……?』
ごめん、コウカ。私が間違っていたんだ。
私とコウカたちはこの世界で同じものを見てきた。そんなコウカたちと一緒にこの目で見てきたものを私は信じればいい。
かつての人間がどうであったのかは関係ない。
『はい……わたしは聖教団の人たちも、ミネティーナも嘘つきだとは思いません』
私はミネティーナ様たちを信じている。そしてコウカも彼女たちを信じているというのなら、コウカを信じる私は彼女たちをもっと信じることができる。
それに比べて、あの少女はなんだ。私は彼女のことを知らないし、何ならさっき何度も嘘をつかれている。
ちゃんと自分の心に整理を付けられたわけではないが、今やるべきことは何かを再認識した。
私とコウカは霊器“ライングランツ”に手を重ね合わせる。そして切っ先を性懲りもなく突っ込んでくる男へと向けた。
そこに横から声を投げ掛けてくるのは件の少女だ。
「駄目だよ、救世主サマ! 眷属の精霊に何か言われたんだろうけど騙されちゃ駄目! 精霊なんて女神が自分に付き従うように生んだ種族だよ、嘘つきの仲間なんだよ! グルになって救世主サマを騙そうとしているんだ!」
「コウカたちが私のことを騙そうと……?」
「そうだよ!」
――馬鹿だなぁ。
これで完全に理解した。嘘つきはどちらかを。
男の脇を通り過ぎて、少女に肉薄した私は剣を彼女の細剣へと叩きつける。
「うぎゃあ!?」
「私たちの絆を甘く見ないで! この大嘘つき!」
「もう覚悟完了!? 危なっ!? 止めて、誰か止めてぇ! ぎゃああ!」
細剣は一撃で粉砕した。だが彼女はギリギリのところで私の剣を避け続けている。
だから私は微弱な雷魔法を浴びせて怯んだところを蹴り飛ばすことにした。これで借りを1つ返せただろう。
今度は背後から奇声を上げながら迫ってきていた男の相手をする。
――だがやはり、このプリスマ・カーオスという邪族たちは弱すぎる。
これが本当に邪魔が進化した存在だというのか。
「本気で蹴られたぁ……結構、手応えあったのになぁ」
「思い付きで話すからだよ。長々と時間を掛けたと思えば、せっかくこっちに引き込めるチャンスだったのに……まったくもう『あたし』は」
「ごめんね『僕』。あとは適当にやって撤退かなぁ。『俺』もまったく相手になってないし……これは『私』からのお叱りコースだぁ」
「ハハッ、また詰めが甘いって叱られそう。でも、目的自体は達成しているんだ。面白い土産話もあるし、そんなに怒らないんじゃない?」
「土産話……ああ。そうだね、救世主サマの処理はアレに任せるかぁ」
私に聞こえているとも知らずにあの少女と少年は呑気に話している。
だから私は目の前の男の背後に回り込んで地面に叩きつけると爪先を彼らに向けて地面を蹴った。
目を見開いた2人の姿が目と鼻の先に見える。狙うのは少女――ではなく、少年のほうだ。
「随分と余裕だね! こっちはあなたにも借りがあるんだよ! あの時、よくもコウカを! ヒバナとシズクもたくさん怖がらせて!」
「げっ、それはあの時に返してもらったよ!?」
「コウカは返していても私は返してない!」
「そんな殺生な! これ、本当に撤退できるかなぁ……」
武器を破壊されたことで魔法を放つことしかできない少女のことは無視して、私は少年の手に持った剣を叩き落とす。そして無防備な胴体に向かって稲妻を纏わせた足で回し蹴りを放った。
吹き飛んだ少年は自分の張った魔力フィールドの壁に叩きつけられる。
彼は意識を失ったのか、ぐったりとしているが――私たちを閉じ込めているフィールドは依然解除されない。
「どうして……?」
「えっと、魔泉から魔素を吸い上げているおかげかなぁ。今回の場合だと『僕』自身が解除しないと維持され続けるというか……でも、これじゃああたしも逃げられないよねぇ……」
「たとえ解除されたとしても、逃がすつもりはないけどね」
「だよねぇ……あはは……」
そう言って渇いた笑い声を上げる少女。
仕方がない、この少女の意識も奪ってその後に【ライトニング・インパルス】で脱出するしかないだろう。
――だが意識を目の前の少女を倒すことに切り替えた時、少女の身に異変が起こった。いや、少女だけではなく、地面に倒れ伏せている男と少年もだ。
彼女たちの姿が地面に沈むように消えていく。影魔法で作られた黒い穴ではない、本当に溶け込むように消えていっている。
「これは……ヴィヴェカの空間魔法? あはは、助かった助かった。それじゃあね、お優しい救世主サマ」
そして、完全に姿が消える。すると術者である少年がこの場から消えたからか、フィールドも瓦解していく。
それと同時に私はコウカとのハーモニクスも解除した。
「逃げられた……」
だが、どこかホッとしている自分もいた。
――本当は分かっているのだ。さっきの瞬間だって、やろうと思えば彼女に止めを刺すことはできた。
でも咄嗟に足が動かなかったのは、私に覚悟がなかったからだ。私は彼女たちを“人”だと思ってしまっている。
だから彼女たちに向けて直接、私は剣が振れなかった。
「ごめんね。今日は足を引っ張ってばかりだね」
コウカに背を向け、私はそう口にした。
ハーモニクスを解除したおかげで安堵している私の気持ちに気付かれることはないだろう。
そう思っていたのに、不意に私を温かさが包み込んだ。
「いいんです、無理に覚悟を決める必要なんてないんですよ。マスターが背負おうとしていた分はわたしが背負います。だから、次に彼らと戦う時はわたしに任せてください……わたしが斬ります」
「……ごめん」
「謝る必要なんてありませんよ。家族ってこうやって支え合って生きていくものなんでしょう? だから、こういう時はありがとうと言って任せてくれるだけでいいんです。それだけでどこまでも頑張れてしまいますから」
「うん……ありがとう、コウカ」
きっと、この子には感付かれてしまったのだろう。でもそれでもこの子は今のままでいいと言ってくれた。自分が全て代わりにやるからと。
このままでいいとは思わないが、今はこの優しさに甘えていたかった。
コウカはフィールドが消え去るまで、ずっと私を抱きしめてくれていた。
そうして、やがてそれが完全に消え去った時――外からノドカが私の胸目掛けて飛び込んでくる。
「お姉さま~! コウカお姉さま~! 大変です~!」
そこで彼女の口から飛び出したのは襲われているテサマラの街を守るためにダンゴが先行し、他の3人もそれを追いかけていったという話だった。