パスタやピザ、サラダにデザートまで、口にする料理も全て美味しかった。
綾井店長に突然誘われた時は少し強引だと思ったけれど、本当に優しくて、おまけにすごくイケメンで……
一緒にいて、どんどん店長のペースに引き込まれていった。
「そろそろ出ようか」
「はい」
食事の後少しして、私達は店を出た。
車に乗り込み、少し走ったところで店長が言った。
「今日は一緒に食事ができて良かった。また……琴音ちゃんと話がしたいな。君のこと、もっと色々知りたいから」
また……
そんなこと言われたら……
「わ、私のことなんて知っても、別に何も面白くないですよ」
本当にそう思う。
特に何か興味を持ってもらえるようなことは何も無い。
「面白いことを探したいわけじゃない。僕は、女性としての君を知りたいんだよ」
じょ、じょ、女性として!? と、思わず声になりそうなくらい驚き、バッと目を見開いた。
「へ、変なこと言わないでください」
激しい動揺を隠しながら、私は冷静に言った。
「変なことじゃないよ。僕はいたって真面目に言ってるんだから」
前を向いて運転している店長の横顔。
見ていないフリをしながら横目でチラッと覗くと、鼻からあごにかけてのラインがとても綺麗だった。
正直、綾井店長が重ねてくる言葉の意味はわからない。だけれど、自然に胸が高鳴り、どんどんドキドキが加速していった。
「琴音ちゃん」
「えっ、あっ、はい」
ただならぬ空気の中、甘い声で改めて名前を呼ばれ、激しく気持ちが揺れ動いた。
私、何を……言われるの?
まさか、心臓の音が聞こえてる?
聞こえるはずの無い音を心配するなんて、私の緊張は最高潮に達してしまったのかも知れない。
「ごめん、もう黙っていられない」
「……店長?」
「初めてなんだ……こんな気持ちは」
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