会場に入ると、一番最初に目に入ったのは天井に吊るされたシャンデリア。
金と銀を基調とした色とりどりの宝石が付いている。とても綺麗だ。
壁や床も汚れひとつない、全てに手が行き届いている。
周囲には使用人の方が待機していて、給仕をしている。
また、会場の端には豪華なご馳走が並べられていた。
「アレン、なにをそんなに……あ、料理!…食いしん坊さんなんだから」
「すいません」
「大丈夫よ。……でも、食事は後でね」
「はい」
少し周りを見すぎて、母上に指摘されてしまった。
許して欲しい。人間はじめて見ることには目を奪われてしまう。それは歳は関係ないと思う。
この会場は日本ではまず見れない光景だ。僕の屋敷にもシャンデリアはあるが大きさも質も違う。
それで驚いてしまったんだ。
しかし、指摘されてしまったからには同じことをするわけにはいかない。
僕は興味がそそられるものが多い中、見るのは最低限に我慢して父上たちついていく。
会場にはもうすでに招待された人たちが集まっていた。
子供は見た感じ30人前後、大人も合わせると100人ほどか。
『『『すーはーすーはー』』』
『『『ドクン…ドクン…ドクン』』』
それにしてもみんな緊張している。近くに通りかかった子供から鼓動と深呼吸が聞こえた。
会場は少しガヤガヤしていたが、あの子なんて顔が少し真っ青だ。
そんなに緊張しなくてもいいのに、やはりこういうのは自然体が一番だ。
無理もないか、10歳児だからな。精神年齢30歳くらいの僕だから緊張しないだけだ。
「流石は僕の息子だ。緊張していないんだね」
「もちろん緊張はしてますよ。ただ、平然を装っているだけですよ」
父上から見たら緊張してないかもしれないけど、僕だって緊張する。初めてのことには緊張するのは仕方ないことだろう。
「余裕があるだけでもすごいさ」
「そうよ。お料理のことばかり気にしている人は緊張なんかしてないのよ」
父上と母上の言う通りかもしれない。それに謙遜しすぎるとあまり良い印象を与えられないとも聞くし。
「正直言うとそこまで緊張はしてませんね」
そう返した。
それに一つ気になることがある。
お披露目会開始まで時間が空いている。
「父上、開始まで時間がありますが、なにをするのですか?」
「うーん。アレンには少し難しいかもしれないけど聞きたいかい?」
「お願いします」
「そうだね。挨拶周りかな」
「挨拶……ですか」
「そう。まずは式が始まる前に上流貴族の方々に挨拶を済ませておく必要があるんだよ」
「なら、もっと早く来なきゃダメだったんじゃ……」
まだ式まで時間があるとはいえ、会場にいる人たち全員挨拶を回るには無理だろう。
「大丈夫よ。お披露目会と言ってもこれは貴族の子息子女が10歳まで健やかに成長したことへとお祝い行事だからね。普通のパーティとは少し違うのよ」
「ユリアンの言う通り、パーティの練習みたいなものだと思ってもらえばいいよ」
「わかりました」
母上、父上の説明で気になっていたことがわかった。
なるほど。今回は流れを確認するためのものか。どうりで緊張していた子供達に対して大人は何もしてないわけだ。
初めてのパーティで細かいところを指摘したら余計に緊張してしまう。
お披露目会とはあくまでパーティの練習。
徐々に社交界に慣れるための第一段階というところか。
「でも、練習といっても挨拶回りをしないというわけじゃないんだ。毎年の習わしでお披露目会に参加する貴族で一番爵位の高い方に挨拶するのが決まりなんだ。まだ、いらしてないけど、もうすぐ来るはずかな」
いろいろ考え事をしていると父上から追加の説明がきた。
そういえばこの会場にはアレイシアもいるわけで。くらいの1番高い家の人……まさか。
「……ちなみに今年は誰なのでしょう」
「今年は担当は……ソブール公爵閣下だよ」
はい、悪役令嬢と会話すること確定しました。
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