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テラーノベル(Teller Novel)
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 お披露目会の流れについて整理をしようと思う。

 まずはソブール公爵へ挨拶をする。次に式が始まり次第国王様にお言葉をいただきパーティが始まる。

 そして上の爵位の人から順に陛下へ挨拶をして終了する。

 国王様の挨拶が終われば各自自由、人脈形成の時間となる。

 親から「ここの家の人と仲良くしなさい」と指示をする人や新しいつながりを求め、自由にさせる人もいる。

 僕は後者だろう。

 だから、父上からはソブール公爵の挨拶が終わればお披露目会開始まで自由にして良いと言われた。

「いいかいアレン、お披露目会では立場はそこまで重要視されない。位の下の子息が上の者に声をかけても失礼にはならないからね。そういう慣わしなんだ。だから、立場を気にせずに気になった人がいたらまずは声をかけてみなさい。これからアレンはお茶会やパーティに参加することが多くなるからね」

 ただ、友達はしっかり作りなさいと念押しされたが。

 もう父上、僕は精神年齢三十路に近いんですよ。

 任せてください。

 ああ、早くソブール公爵様の挨拶終わらせて友達作りに行こう。

 そんな軽い気持ちで順番待ちをしていた。

 ユベール伯爵家は上級貴族。

 出番はそう遅くなく、前から数えたほうが早い。

 挨拶の時間としても一言親同士が挨拶し、それに倣い子供もするだけ。

 時間にして長くても数分。

 なにも緊張することはない。

 だが、それば僕の考えであって他の子供はそうではない。

 耳をすませば、前後にいる子供から鼓動が聞こえてくる。

 出番が近づくほど早くなる。

『ドクン…ドクン…ドクン』

『ドクン……ドクン……ドクン』

『ドクドクドクドク』

「……あれ?」

 なんか一人だけ鼓動が早すぎる人いるんだけど、気のせいかな。

 僕は人に近づけば鼓動を聞くことができるが、複数人いる時は誰がどの音なのかまではわからない。

 現在僕の挨拶の順番は次。

 勘違いじゃなければ今の鼓動は前から聞こえたはず。

 もう一度、目の前の子供に耳を澄まして聞いてみよう。

『ドクン…ドクン…ドクン』

 うん、この人じゃなさそうだ。

 なら、誰の音なんだろう?

 もしかして聞き間違えーー。

「ほら、アレン順番が回ってきたわよ」

「……はい」

 考え事をしていたせいで、ぼーっとしてしまっていたらしい。母上に背中を軽く叩かれようやく気がついた。

 ついに出番が来たらしい。

 多分聞き間違いかもしれない。あんな鼓動が早い人普通はいない。

 僕はそう結論付けて、思考を切り替えソブール公爵一家への挨拶に集中する。

 父上と母上の後についていくようにソブール公爵一家の前に移動した。

 移動中、どのような容姿をしているのか気になり確認をする。

 やはり、ソブール公爵家の家族は容姿が整い過ぎていた。

 父親は40代でウェーブの入った赤髪で少し目がつり目の強面。母親は癖のない青髪を腰まで伸ばし、優しい表情をしている。二人はこちらに気がつくなり、歓迎の意味が込められているのか、口角を上げて少し微笑んでくれた。

 そして、父親の右手側にアレイシアと思(おぼ)しき子供がいた。

 青髪で少しウェーブの入った綺麗な長髪、つり目が特徴。将来絶世の美女になるだろう真顔の少女。

 両親とは違い表情が固い。

 少し怒っているような印象すら見える。

 これが「感情のない人形」と呼ばれたアレイシアの子供の頃の姿か。

「これはキアン殿」

「お久しぶりでございます、ラクシル様」

「ここ数年は領地の統治に力を入れていたのだったな。進捗のほどは」

「はい。お陰様で」

 ラクシル様から話を軽い世間話から入り、父上は受け答えをする。

 そして、軽い会話を済ませた後、自己紹介に移る。

「まぁ、世間話はこの辺にして、お互いの子供の紹介としようか。……アレイシア」

「はい」

 アレイシアは父親に挨拶を促される

 僕は父上たちの会話を聞いていて、視線もそちらに向けていたため、アレイシアへと意識を向ける。

 アレイシアはラクシル様から指示が出た後、返答、カーテシーをして話始める。

 その作法はとても洗礼されていて、とても綺麗であった。

 そして意識をアレイシアに意識を集中させる。

『ドクドクドクドク』 

 するとまた先ほどの鼓動が聞こえる。

 一体どこから……。

「お初にお目にかかります。ラクシル=ソブール公爵、長女。アレイシア=ソブールと申します。よろしく「え……」……」

 僕はアレイシアが話している最中、驚きのあまり声を上げてしまった。

 この時点で分かったことは2つ

 一つは異常な速さの鼓動の正体。

 それは目の前にいる少女、アレイシアのものであったこと。

 そして2つ目。

 自分がしでかしてことの大きさ。

 人が挨拶中に阻害してしまった。

 気がついてからではもう手遅れだった。

実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と呼ばれた悪役令嬢は重度のあがり症だった〜

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