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木口なん
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黒猫 / @酔狂
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西暦……は分からない。
平和な時代から、どれくらい経ったのか。
そもそも、人類はどこに行ってしまったのか。
これらの疑問の答えを知る人は、多分この世界のどこにもいないと思う。
誰もが、この正体不明の脅威に怯えているのだろう。
………私たち以外に人がいれば、だが。
今のこの状況を、はっきり言って私は説明できない。恐らく、私の相方にだって不可能のはずだ。
まず、人類はどうやって滅んだんだろう。
以前出会った死にかけのおじいさんは、空が光ったとか言っていた。
一方の相方は、巨大な爪が地面を掴んだとか、SFめいた事を言う。
……うん。やっぱりだ。みんな分かってない。何も。
…っていうか、そもそも人類は滅んでるんだろうか。
今私が見ているこの光景が、私の思い浮かべる幻想だとか、夢幻なんだったら、人類は滅んでないってことになる。
それとも、人類はどこかで生き残っていたりするのかな。
…本当に滅んでいる可能性が捨てきれないのが物悲しいね。
そう。正解は、分からない。だ。
滅んでいるのか、いないのか。これは夢なのか、否か。
なに一つ、私たちには分からない。
一つだけ分かることがあるとするなら、私たちがまだ生きてるってことだけだ。
「……マメだな。この世界で、紙を手に入れるだけでも一苦労だってのに、それに文字を書いて、本にするだなんて」
「…ただの本じゃないよ。日記」
「だからマメだって言っただろ?」
「…」
私は相方から目を離して、壊れかけたタンスの中に紙を押し込んだ。
半壊したタンスが、はち切れそうになっている。
「げ、もう壊れそうなのかよ。それ探すのにどれだけかかったと思ってるんだよ…」
「…あなたは手伝っただけ。最終的に見つけたのは私。…だから、私の」
「あーはいはい。それじゃあ、フライパンは俺の物でいいんだな?」
……なぬ。フライパンだって…?
それは…すごく困る。
「…だめ。それは共用。約束した」
「いつだよ。…って、そっか。お前日記書いてるんだもんな。こんな勝負仕掛けても負けるだけだったわ」
「…ふふん。私の日記を侮辱したこと、後悔するがいい」
「何がふふんだ」
彼は言いながら、私の頭に手を置いて立ち上がった。
…ぐりぐりしやがった。痛い…。
「…痛いんだけど…」
「そうかい。そりゃ重畳。俺の心境を味わうといいさ」
笑ってそう言うと、彼は玄関の方に歩いて行った。
私も、羽織っていた毛布をベランダに干してから彼に追従する。
すると彼は、私の頭を見下ろしながら言いやがった。
「…お前。何回見てもやっぱ身長差すごいよな」
「…なんだと。まだ成長期だ。こんにゃろ」
腹を両手で殴ってやっても、彼はびくともしなかった。やっぱり私も、筋トレした方がいいのでは…?
「で、今日は水となんだっけ?」
「…んと、使えるもの探し」
「……ん? あそこは、もう大体探索し終えただろ。活動範囲を広げるんじゃなかったのか?」
彼が玄関に寄っかかりながらそう言った。そのドア、建付け悪いから普通に立った方がいいよ。
「…ん。でも行く。そろそろ銃が欲しい」
「あるわけないだろ…ここら辺は元々住宅地なんだから…」
「…でも刀はあった」
そう言い残して、ベッドの下から刀を持ってくると、彼は呆れたような顔になった。
「それは…多分あれだろ。戦時中の兵隊の遺品とか。大体、俺もお前も、刀なんて使えないだろ?」
「…でも銃…」
「そもそも、俺たちはそんなパラレルな世界に生きてねーよ。ゾンビもいないし、よくわからない病原体がどうのこうのとか、なってないだろ」
「…ふふっ、多分ね」
「……そうだよ。多分な」
彼が言い終えると、ずごっ、という音がして、ドアがまるっとなくなった。
いや、よく見ると、相方ごと背後に倒れただけみたいだ。
…やべ、さっき考えてたこと、言った方がよかった…。
「……まずはこれの修理からだな…」
「…うん」
~~~~~~~~
「…ってことで、やってきました。池ー」
「……この池が元々下水だったって話する?」
「…考えたくない。やめて」
私は、彼の腕を軽くつねった。
さっきの話の通り、私たちは池に来ている。
…まあほんとの事を言うなら、広大な水たまり(下水)なんだけど…。
「じゃ、さっさと汲んで、使えるもん探しますかね」
「…なんか、水減ってない?」
「そうか? …ああ。最近、雨降ってないからか」
「…なるほ」
雨が降ってくれないと、私たちとしてはすごく困る。
ごはんが見つからないときは、水だけ飲んで無理矢理お腹いっぱいにするからだ。
…まあ、それ以外にも普通に、水がないと人間生きていけないからね。
「…その燃料タンクも、もうぼろぼろだね」
「ああ…。ガソリンスタンドの爆発跡から引っ張り出してきたからな。そろそろ新しいやつが欲しい。新品ならなおのこと良し」
「…高望み」
「うっせーな。こんな状況なんだ。夢はでっかくあるべきだろ」
彼は、池の中までずぶずぶ入っていくと、タンクを水に入れた。
うえ。ばっちい…。…なんて、言ってられないよね。
確かにすっごく臭いけど、我慢するしかない。我慢、大事。
彼がタンクをいっぱいにしている間、私は池の周りをぐるっと見回した。
今日欲しいのは、薪にできる木。あとは、なんかいい感じに使えそうな物だ。
薪集めは、とっても簡単。そこら中にある朽木から、乾いた枝を折ってバックパックに詰めるだけだから。
問題は使えるものなんだけど、実は当てがあった。
前にここに来た時、池の向こうに廃材でできた丘があった。その反対側に、飛行機の翼の残骸っぽいものが見えたのだ。
前は、薪を拾いすぎて持てなかったけど、今日は大丈夫。脇に抱えれば、持って帰れるだろう。
そんなこんなで丘を登ると、池の反対側に、私の体の半分くらいの鉄板が落ちていた。
全体的に白くて、青のラインが走っている。そして、はしっこの方に、Jと書いてある。多分、飛行機の翼か何か…のはず。
「…ぴっぴー。人手プリーズ」
池の方向に向かって叫ぶと、満タンの燃料タンクを抱えた彼が丘から顔を出した。
彼は丘の上に燃料タンクを置くと、丘を滑り降りて私の所まで駆け寄って来た。
「なんだよそれ…。飛行機?」
「…多分」
「で、持って帰るのは良いが、その鉄板の実用性は?」
「…うちわ」
「でかすぎだよ。重いし、もっとマシな言い訳をしてくれよ」
「…でも、いる」
「…そうかい。お前の勘には何回も救われてるし、それに免じて持って行ってやるよ。その代わり、タンクはお前が持て」
「…がってんしょうちのすけざえもん」
会話を終えると、彼は飛行機の羽を担ぎ上げて、丘を登り始めた。私もそれに追従する。
丘の頂上でタンクを持ち上げて、滑り台から滑るみたいにして丘を降りた。
2人してよたよた歩きしながら、拠点まで歩いて行って、壊れかけた階段を昇る。
さっき外れたばっかりのドアを開けて中に入ると、見慣れたぼろい部屋が姿を覗かせた。
そんなこんな、この世界で今日も生きています。
二人で。
コメント
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読了!終末世界なのに二人の掛け合いが軽快でシリアスになりすぎない感じがいいな。「夢はでっかくあるべき」って台詞、逆境の中でも前向きで好きだ。飛行機の翼をうちわにしようとする発想も、この世界の不便さと工夫が伝わってくる。まだ何が起きたか謎だらけだけど、続きが気になる!