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さて、仕上げだ。
「そんな訳で未亜さんが美洋さんと仲がいいのは、別のお父さんとの契約とかそういう理由じゃない。更に言うと僕も彩香さんも亜里砂さんも、狐の里の事情なんて全く関係ない。
それ以外の直接美洋さんを知らない狐系の人は、家の名前の方が有名なのは仕方ないんじゃないかな。僕らはまだ中学生だし、スポーツ選手や芸能人のような有名人という訳ではないしさ。
『何をやっても、私は竹川家の長女として見られてしまう』についての反論は、以上。少なくとも、美洋さんは、充分魅力的な存在だよ。さて、反論あるかな」
我ながらよく喋った。
普段の一月分くらいは、喋ったような気がする。
でも問題はこれからだ。
これで、美洋さんが納得してくれるか。
そう思ったところで、亜里砂さんがにやりと笑う。
「もしそれでも不安なら。何なら悠が何を思って何を考えているのか、多少の深層思考まで含めて魔法で見せてやってもいいのだ。悠が今言っていた台詞全体に、嘘は無いのは保証するのだ。でもそれでも不安なら、魔法で確認させてもいいのだ」
うわっ、亜里砂さん、なんという反則技を。
でも。
「何なら僕はかまわないけれど、どうする」
もしそこまで信じられないなら、別に構わない。
どうせ亜里砂さんには常日頃全ての思考を見られているし、そのついでだ。
「いいえ、その必要はありません。充分です」
美洋さんの声が、ちょっとかすれた。
しまった。言い過ぎたかな。
ちょっと後悔。
「悠は、後悔する必要は無いのだ。全部ちゃんと通じているのだ」
亜里砂さん、ここで美洋さんの表層思考を読んで、そう答えないでくれ。
ちょっと安心すると共に、別の不安をしてしまうわけで。
どうしようかなと僕が悩む中。
未亜さんが時計をちらっと見て、冷静な口調で口を開く。
「さて皆様。大変に名残惜しいのですが、現在の時間は午後7時50分過ぎなのです。8時には取り敢えず外出札を戻しておかないと、寮務の先生に事情聴取を食らうのです。
そんな訳で、余韻とか返答とかは一切無視して。全員寮へ向けて、走るのです!」
うわっ、まずい。もう、そんな時間だったのか。
そんな訳で僕も彩香さんも美洋さんも、取り敢えず全員で走り出す。
ここから寮までは、走れば5分少々。
つまり余裕はあまりない。
なんだかなと思いつつ、僕達は走る。
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