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えれめんたる
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人生は、公平じゃない。
誰かの隣で笑い声が聞こえる一方で、私の世界は常に薄暗い。
ミスをしたわけじゃないのに怒鳴られ
満員電車で押し潰され、やっとの思いで手に入れたはずの幸せは、誰かの影に隠れて消えていく。
「また、私だけが損をするの?」
帰宅途中、スマホの画面に流れてきた広告が、妙に目に焼き付いた。
『幸運を肩代わりする人形、モニター募集』
胡散臭い。そう思いながらも、今の私には縋るものが必要だった。
数日後、郵便受けに放り込まれていたのは、古びた布に包まれた、手のひらサイズの人形だった。
黒ずんだ肌、剥げかかった赤い唇。
気味が悪い。
なのに、人形の大きな目が、じっと私を見つめているような気がして捨てられなかった。
「……信じてないけど、少しはマシになるよね」
私はそれを鞄の奥に押し込んだ。
翌朝
いつものようにどんよりとした気分で通勤ラッシュに揉まれていると
ふと、隣に立っていた酔っ払いの男がバランスを崩した。
私の背中が押される。
そのまま転倒して、ホームから線路へ……。
そう思った瞬間、背筋が凍るような冷気が鞄から突き抜けた。
私の体は、まるで誰かに強く引き戻されたかのように、反対側へとよろめいた。
ガシャン、という轟音。
悲鳴。
「おい! 大丈夫か!」
私のすぐ横で、さっきまで私の隣にいた酔っ払いの男が、ホームの柵に激突してうずくまっている。
私は無傷だった。ただ、鞄の中で
人形が異常に熱を帯びていることだけが違っていた。
男の苦悶の声を聞きながら、私はなぜか、震えが止まらなかった。
……恐怖じゃない。
これは、私の不幸を、誰かが吸い取ってくれたのか?
私は鞄の中の人形を、そっと撫でた。
その瞬間、唇がほんの少しだけ、笑ったように見えた。