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#普通
野々さくら
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ありあ
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夜の古海商店街交差点。
そこには静寂だけが流れていた。
街灯の白い光がアスファルトを照らし、焔垂は腕を組みながら周囲を見回す。
「うー・・・ん」
事故のあった場所をくまなく見渡しても、新しい手掛かりは見つからない。
「何も手掛かり無しか・・・」
肩を落とし顔を顰める
「やっぱ単なる事故だったのかな?」
そう呟いた焔垂は、ふと時間が気になった。
「てか今何時だ?」
制服のポケットからスマホを取り出し、画面を確認する。
「18時か・・・」
思ったより遅い時間だった。
「あんま遅くなると母さんも心配するよな・・・」
今日はここまでにして帰ろう。
そう決めかけた、その時だった。
遠くから必死な声が夜道に響く。
「八乙女くん!」
焔垂が振り向く。
暗い住宅街の向こうから、息を切らせた信愛が全力で走ってくる姿が見えた。
「あれ?白縫さん?」
ようやく焔垂の前までたどり着いた信愛は、肩で大きく息をしながら膝に手をつく。
「はぁ、はぁ、はぁ」
荒い呼吸の合間に、安堵したような笑みがこぼれた。
「よかった・・無事みたいだね」
その一言に、焔垂は首をかしげる。
「無事?なんだよ無事って?」
事情が分からず戸惑う焔垂に、信愛は慌てて首を振った。
「と、とりあえず詳しくは後から話すから」
真剣な眼差しで交差点を見回す。
「一刻も早くここから離れよう?」
焔垂はますます理解できないという表情になる。
「離れるって・・・」
少し笑いながら辺りを指差した。
「だってここには霊なんて居ないんだろ?
別にそんな慌てるほどの事じゃ──」
しかし信愛はその言葉を遮るように、小さく呟いた。
「それが居るみたいなの。」
焔垂の表情が固まる。
「え?」
信愛は青ざめた顔のまま続けた。
「しかも、とんでもない悪霊が居るの!」
「え!?」
焔垂は乾いた笑みを浮かべる。
「あ、悪霊って・・いや、だって」
「いいから!早く!」
信愛は焦りを隠そうともせず叫ぶ。
「危ないから!」
そう言って焔垂の手首を掴み、その場から引き離そうと力を込めた。
その瞬間だった。
「う・・うぅ・・・」
焔垂の身体が突然震え、片手で胸を強く押さえる。
「え?八乙女くん?」
信愛の顔から血の気が引く。
「どうしたの?」
しかし焔垂からの返事はない。
苦しそうに呼吸を繰り返す焔垂へ、信愛は恐る恐る近づいた。
「八乙女君?」
やがて焔垂の肩がゆっくり震え、小さな声が漏れる。
「・・しの・・・ないで」
次の瞬間、その声音は先ほどまでとは別人のように冷たく変わった。
「わたしの邪魔しないで!」
信愛は思わず息を呑む。
「え!?」
焔垂は鋭い視線を向けたまま吐き捨てる。
「夕方からちょろちょろ動き回りやがって!
一体何なの?アンタら!」
その口調も表情も、いつもの焔垂ではなかった。
信愛は唇を噛み締める。
(もしかして・・・)
胸の奥で最悪の予感が現実へと変わっていく。
(八乙女くんに取り憑いてる?)
全身が震える。
(どうしよう・・・)
頭の中で何度も想定していた、最悪の展開。
それでも逃げるわけにはいかなかった。
(でも・・・私が祓わなきゃ)
信愛はゆっくりと焔垂へ歩み寄る。
恐怖を押し殺し、真っ直ぐその瞳を見つめながら、信愛は霊の説得を試みる。
「お、お願い・・その人の体から出て行って」
夜風が二人の間を吹き抜ける。
「私たちは貴方に危害を加えるつもりはないの」
震える声だった。
それでも、その言葉には霊を敵としてではなく、一人の存在として向き合おうとする信愛の覚悟が込められていた。
「だから・・お願い・・・」
信愛は一歩、また一歩と、ゆっくり焔垂へ近づいていった。
(佳苗とだって意思疎通出来たんだから
この霊とだって・・・)
しかし、信愛の考えは脆くも崩れ去ってしまう。
コメント
1件
うわ、この展開…!😨 焔垂くん、まさかの乗っ取りパターンか…。信愛ちゃんが必死に「体から出て行って」って言うシーン、すごく切なかった。震える声でも向き合おうとする覚悟が伝わってきて、読んでるこっちまで息が詰まりそうになったよ。でも佳苗さんとの経験があるからこそ、信愛ちゃんは怖くても逃げないんだろうな…。次、どうなっちゃうの?早く続きが読みたい!🖤